第二話 刻印
「……ここは……?」
エメは目を開く。耳に炎の唸り、鼻に焦げた金属の匂い。
視界には裂けた機体の残骸。さっきまで共にいた人々の影が横たわる。
前を見ると、そこには父がもういなかった
辺りに転がる人だった物は黒く焦げ判別すらつかない
声は戻らない──胸が締めつけられる。
なぜ、平和セレモニーに向かう僕らがこんな目に合っているのか、この状況で彼に答えなど出せるはずがなかった
「……誰か……」
「誰かいないのか……! ねぇ!誰か!!」
炎の弾ける音は声をかき消してしまう
返事はない。
エメは震える手でシートベルトを外し、座席から這い出した。
炎と煙の間を、ふらつきながら進む。
焼き付けざるを得ないこの惨状を目の当たりにしながら
不思議と涙は出なかった。
──その時、夜空が再び裂けた。
閃光とともに、数多の流星が尾を引いて降る。
その破片のひとつが、真っ直ぐエメへ。
避ける間もなく、光は左手へ吸い込まれた。
「……っ!」
心臓を貫く痛み。視界が白く弾け、全身が痺れる。
左手の甲が眩い緑光を放ち、皮膚の下に紋様が浮かび上がる。
その瞬間、脳裏に文字が焼き付いた。
『希望』
文字は雷鳴のように響き、すぐに霧散する。
見つめる間もなく、光の印はふっと消えた。
ただ、左手に焼けるような熱だけが残る。
その直後──
エメの背後、崩れた客席の奥から、ひとつの石が飛び出し、宙を駆け、残骸を突き破って夜空へ飛び去った。
尾を引く光は一瞬で闇に呑まれる。
「な、なに……今の……!」
炎の向こう、機体の残骸の外から聞こえた
少女の驚きの声。
続いて、少年の鋭い声が重なる。
まだ、生きている人がいる──。
今目の前で起きた一連の怪現象を心に問う前に
エメは顔を上げ、声の方へと足を向けた。




