戻る場所
被災地の状況はようやく安定の兆しを見せ始めていた。
ボランティア団体や他の医療チームも徐々に入り、物資も少しずつ届くようになってきた。
だが、MORUチームの疲労は極限に達していた。
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一部のメンバーには、すでに日本に戻るよう指示が出されていた。
「体調不良や疲労の蓄積は、判断力を鈍らせる」と医局からの連絡。
南雲と柊も対象だった。
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南雲:「…帰ったら、私は、ちゃんと医者でいられるかな」
柊:「医者としてじゃなく、人として、今の自分を誇れるかどうかだろ?」
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神崎は静かに言う。
「帰れる場所があるってのは、誰かがそこで支えてくれてるってことだ。
だからこそ、今ここで俺たちが踏ん張らなきゃならない」
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その日の午後、レイラがMORUに報せを持ってきた。
「山間部の集落が孤立しています。重症者がいるかもしれません」
即座に準備に入るチーム。
だが、そこは土砂災害の影響で陸路が完全に封鎖されていた。
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神崎:「俺たちが行かなきゃ、誰が行くんだ」
南雲と柊も、強い覚悟で同行を申し出る。
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泥と岩をかき分けながら進んだ先にいたのは、怪我を負った妊婦と幼い子ども。
彼らの「戻る場所」を守るために、MORUは今日も命の現場に立ち続ける。
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そして遠く離れた蒼鷹総合病院では、彼らの無事を祈る仲間たちが、
MORUの空席を静かに見つめていた。