命の重さ
MORUチームは行政の指示を振り切り、医療活動の継続を決意。
だが、孤立無援の現場はますます過酷になり、医療資材も底をつきかけていた。
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神崎は一人の中年男性患者の容体が急変したことを知る。
彼は持病のある被災者で、心不全を起こしかけていた。だが、そのとき使える薬はひとつしかなかった。
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同時に、別の子ども――
重度の気管支炎を患う少女にも、その薬が必要とされていた。
薬は一人分。二人を同時に救うことはできない。
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南雲:「どちらも助けたい。でも、どうすれば……」
神崎は静かに答える。
「命に重さはない。だからこそ、今この場にいる俺たちが責任を負う」
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神崎は少女に薬を使う決断を下す。
それを聞いた男性は、かすれた声でこう言った。
「……子どもを、助けてやってくれ。それが、未来だろ」
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少女は命を取りとめ、後日、父親に手紙を書きたいと言った。
「おじさんがくれたおくすり、ありがとう。わたし、おとなになって、お医者さんになりたい」
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それを聞いた南雲は涙をこぼす。
神崎は空を見上げながらつぶやいた。
「誰かの犠牲で成り立つ医療なんて、本当は存在しちゃいけない。
でも、信じてる。あの子が大人になる未来では、そんな選択が必要なくなると――」