終章:そして未来へ
災害から数日が過ぎ、街はゆっくりと復旧の兆しを見せていた。
濁流は引き、倒壊した建物の瓦礫が散乱する中で、被災者たちは不安な表情を抱きながらも、希望を探し始めている。
蒼鷹総合病院のMORUチームも、疲れ果てながら病院に戻ってきた。
重い足取りの一人ひとりの顔に、安堵の色が混じる。
「お疲れさま。みんな、よく頑張った」
嶋崎真チーフが出迎え、静かに声をかけた。
神崎拓真は深く息をつき、メンバーを見渡す。
一人も欠けることなく、全員が無事に帰還したことが何よりも大きな勝利だった。
「俺たちは、犠牲者ゼロを誓っていた。
その約束を守れた。これ以上の誇りはない」
南雲明日香が頷く。
「今回の災害は、チームにとって試練だった。
でも、この経験があったからこそ、私たちはもっと強くなれる」
柊悠馬も笑みを見せた。
「どんなに厳しい現場でも、仲間と共に闘う。
それがMORUの力だと思う」
レイラ・サイードは窓の外を見つめていた。
「医療は、人の命を守るだけじゃなく、未来を紡ぐことだと実感したわ」
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しばしの静寂が訪れ、誰もが自分の胸の内を整理していた。
その時、病院の通信室に一通のメッセージが届く。
それは他県の救命チームからの感謝と連携の申し出だった。
神崎は微笑みを浮かべながら言った。
「MORUは一つのチームだが、全国の仲間と繋がっている。
これからも、どんな危機があっても、互いに支え合えるはずだ」
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夕陽が病院の屋上を赤く染める。
チームは一列に並び、遠くに広がる街並みを見つめた。
「犠牲は、絶対に出さない」
神崎の決意は、静かにしかし確かにメンバーの心に刻まれていく。
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その夜、神崎は病院の一室で、ひとり机に向かっていた。
過去の空白の一年間を思い返しながら、これからの道を考える。
「俺はここにいる。誰かの命を守るために」
その言葉は、決して揺らぐことのない信念となった。
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こうして、MORUの物語は一区切りを迎えた。
だが、彼らの使命は終わらない。
次の出動は、いつ訪れるかもわからない。
それでも彼らは、常に準備を続け、命と未来をつなぐために戦い続けるのだ。
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終