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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

聖女だって、闇堕ちするんだもん

作者: TOMO

私の名前はセレスティナ。

皆様からは親しみを込めてセレスと呼ばれていますわ。


大きなお城があるグランガルニア…でもなく。

綺麗な大聖堂のある聖ホーリークルス…でもなく。


ここ、タダノ村の教会に務める聖女でございます。


この村になって1年が経ちますが、優しい人ばかりで

楽しく幸せな日々を過ごしていました。


え、聖女の仕事ですか?

そうですね…イメージとしてはシスターさんでしょうか。

後は、そう、ちょっとした魔法が使えます。


実は世界に一人の聖女…と言いたいところですが、

一つの職業みたいなもので、修道院で魔法を習得した者を

総じて聖女と呼ぶのです。


私はあまり秀でた能力もなく、ちょっとした治癒魔法しか

使えませんが、巨大な力と言うのも怖いので、

私にはちょうどいいかなって思ってます。


あ、大事な事を言い忘れてましたが、村の中に魔物が

入ってこない様に、結界の維持をするのが1番の仕事です


なんでも、遥か昔に偉大な魔法使いさんがいて、

結界を張るための装置を残してくれたそうなんです。

その装置に聖女が魔法力を注ぐだけで結界が張れるという優れもの。


ただ、結界の維持は結構大変なので、交代制でやっているのです。

交代制聖女…って、なんだか神聖な感じがしませんね。


「セレスー、今日は結界の維持よろしくねー!」

「おはよう、レイナ。任せてください。」


彼女はレイナ、明るくっていい子なのです。

私より1年先にこの村で聖女をやっていて、

先代と私が代わってからは2人でやっています。


では、準備ができたら向かうとしましょうか。


……

………


「お、セレスちゃん、今日もお務めかい?」

「あら、ザインさん、おはようございます。

 えぇ、これから結界装置のところへ向かうところです。」

「いつもありがとうな。あ、ほら、これ持ってきな!」

「いいのですか?ありがとうございます。」


ザインさんは道具屋をされているのですが、

売り物のポーションをくれました。

このポーション、いざとなれば飲み水にもなるので

持ってて損はありません。


また村を歩いていると、


「あー、聖女のお姉ちゃん!おはよー!」

「おはよう、カノちゃん。」

「今日は遊べるのー?」

「そうね、結界装置を見た後だったら大丈夫よ。」

「ほんとー?わたし待ってるねー!」

「ふふふ、また後でね。」


カノちゃんはこの村の数少ない子供で、

いつも明るくてかわいい子なんです。


さぁ、もう少しで村外れに到着です。


「聖女様、いつもご苦労さまです!」

「トマさんも、いつもご苦労さまです。」

「聖女様のおかげで村が平和に過ごせております。

 どうか、お気をつけて。」

「はい。トマさんもお気をつけて。」


トマさんは村の衛兵さんです。

結界のおかげで魔物が入ってくることは無いのですが、

怪しい人物は一人たりとも通さないそうです。


さて、村の外に出ました。

結界装置までは30分ほど歩く必要があります。

ピクニック気分で向かいましょうか。



……

………


村を出て15分くらい経ったでしょうか。


それは、前触れもなく、突然に…


…キィィィィン……パリーン!


これ、は?

まさか、結界が!?


なぜ、急に…?

いえ、それよりも急ぎましょう。


私は体力が無いので走るのは苦手なのですが、

一心不乱に走り出しました。

どうしよう…胸騒ぎが止まらない…

今までこんなことは無かったのに…


そして5分ほどで結界装置に到着しました。


「はぁ…はぁ…着いた。

 あっ……なんて、こと…装置が。」


結界装置そのものはいつも通りでしたが、

魔法力を溜める宝石が砕かれていたのです。


一体誰がこんなことを…?

一体何のために…?


………いけない…このままでは村に魔物が…!


私の力では結界装置は直せない…

私の力では魔物と戦う事もできない…

でも、癒やす事だけはできる。

だから、村のみんな、無事でいてください!


そうして、私は村に向けて走り出した。


……

………


「はぁ…はぁ…はぁ…」


息が上がる…でも、早く行かなきゃ…


ようやく、村の入口が見えてきました。

ですが、そこにはいつもの平和な光景はなく…

門は倒され、塀も破壊されていました。


その傍らに、人影が見えました。


あれは…トマさん…?


「トマさん!無事ですか!

 …あ………あぁ……」


トマさんは既に亡くなっていました。

村のために最後まで戦ったのでしょう。

槍は折れ、鎧を砕かれても最後まで…


「あぁ…トマさん…ごめんなさい…

 私が無力だったから…他のみんなは…?」


トマさんの死に、心は打ち砕かれそうでした。

でも、まだ生存者がいるかもしれない。

ここで膝を着いている場合じゃない。

そう言い聞かせ、再び歩き始めました。


村の通りに出たとき、小さな人影を発見しました。


「お姉…ちゃん…痛いよ…痛いよぉ…」

「あぁ…なんで、こんなことに…

 カノちゃん、待ってて。

 …神よ、この者の傷を癒やしたまえ…ヒール!」


…傷が塞がらない…


「なんで…

 ヒール!…ヒール!…ヒール!」

「お姉、ちゃん…いた…い、よ…」

「カノちゃん…?…カノちゃん!

 いや…いやよ…あ、あぁぁ……

 ごめんなさい…もっと早く戻っていたら…

 …あぁ…ごめんなさい…」


他に誰か…


視界に映るのは散らばった道具達…それと、


「あぁぁ…ザインさんまで…

 そうだ…もらったポーションで…」


パシャパシャ…


「ごめんなさい…

 亡くなっている方に、ポーションが効くはずもないのに…」


そこから先も、目に見えるのは死…死…死…


私は一体何をしているの…?

私は何のために聖女になったの…?

私は今まで何に祈りを捧げていたの…?

とうして、神は何もしてくださらないの…?


「あはははは!

 良い気味だわ!

 その絶望に染まった顔、最高だわ。」


「…レイナ?

 …どうして?」


「どうしても何も、あんたが気に食わなかったんだよ!

 前まではあたしが村の人気者だった。

 ところが、あんたが来てからはセレス、セレスと…

 不愉快極まりなかったわ。

 だからね、こんな村滅んでしまえって思ったのさ!」


「だから、結界装置を壊したの…?」

「何だい?気づいてたのか。」

「考えたくなかった。

 でも、結界装置の宝石に触れられるのはこの村の聖女だけ。

 私じゃなかったら、あなたしかいない…

 でも、最後まで信じたくなかった…」

「あはは!滑稽だねぇ。

 でも、その通り!あたしが壊したのさ!

 あたしは攻撃無効魔法が使えるからね。

 魔物共はあたしに攻撃しても意味ないと分かったのか、

 村の人間を襲いまくったのさ。

 最高の見世物だったよ!」

「もう、やめて…」

「あはははは!あんたが悪いのさ!

 あんたが来たからあたしは狂い、ザインやカノは死んだのさ!」


なぜ、こんな人が聖女なの…?

なぜ、罪もないカノちゃん達が死ななきゃいけないの…?

私が、この村に来なければ良かったの…?


あぁ、もうどうでもいいや。

もう守るものも、信じるものも何もない。

目の前にいるナニカも壊してしまおう。

そうだ、そうしよう。


「ねぇ、言いたいことはそれだけかしら?」

「あはは!キレた?ねぇ、キレちゃった?

 言いたいことはまだまだあるよ!

 あんたみたいなしょぼい治癒魔法しか使えない奴に

 恐れることは何一つない。

 あたしの攻撃無効魔法は剣も魔法も効かないからね!」

「ヒール。」

「えっ?」


「ヒール。」

「あ、あんた、何を…」


「ヒール。」

「何をしてるのって聞いてんの!」


「ヒール。」

「何か、答えなさいよ!」


「…知ってた?ヒールって、傷を治すんじゃないんだよ?

 細胞を高速活性化させて元に戻してるの。」

「それが、どうしたってのよ!」


「元に戻ってる状態で、更に活性化したらどうなると思う?」

「ふん、何を考えてるか知らないけど、

 あたしに攻撃は効かないよ!」


「ふふふ、バカなのねあなた。

 私は攻撃はしないわ。するのはただの治癒。

 ほら、始まったわよ?」

「えっ、何が…あ、あぐ!」


ブシューー!


「あ、あぁぁぁぁ!

 血が、血がぁ!」

「ふふふ…噴水みたい。

 痛そうね、ほら、ヒール。」

「や、やめ…あがぁ!!」


ブシュー!


「もう、やめ、て…

 ほ、ほら、あたし達、聖女じゃない。

 人殺しはやめた方がいいって!」

「おかしい。何を言ってるいるの?

 私達が聖女な訳ないじゃない。あ、ほら、ヒール。」


ブシューーー!

ボコボコ、ボコッ!ボン!


「あぎゃぁぁぁ!

 腕…腕が…破裂した…あ、やめ、もう…

 死んじゃうから…これ以上やったら死んじゃう!」

「ふふふ、死ねばいいじゃない。

 あなたのせいでザインさんも、カノちゃんも、トマさんも、

 村のみんながみんな死んだのよ。

 あなたが生きていい理由は何もないの。はい、ヒール。」

「ひぃ!ごめんなさい!ごめんなさい!

 謝るから、あたしが悪かったから!」

「もう、村のみんなは生き返らないの。

 あなたが謝らなきゃいけない相手はもういない。

 あなたのせいでね。それじゃ、さようなら…ヒール。」


「あ、あぁぁぁぁぁ!

 あぎゃーー!」


ボコボコボコ……ボンッ!

ビチャビチャビチャ………



……

………


「終わった。

 これからどうしたらいいのかしら…

 村のみんなはもういない…

 うぅぅ…あぁぁぁぁ!」


「セレスティナよ…」

「…誰?」

「私は、神だ。」

「神、さま?」

「そうだ。此度の件すまなかった。

 人間界に直接の手出しは出来んのでな…」

「私は、救えませんでした…

 それに、人を殺めてしまいました…」

「うむ。」

「もう、生きる意味もありません。

 神の慈悲で殺してください…」

「そなたはここで死ぬには惜しい存在だ。

 そこで私から提案がある。」

「提案…?」

「そなたは今、光と闇の狭間にいる。

 世界を滅ぼさんとする力と、全てを守り抜く力、

 その両方の素質がある。

 故に、どちらかを選べ。そなたがどちらを選んでも、

 私は力を授けよう。」

「あぁ…神よ…あなたを疑った私を許してくださるのですか…?」

「うむ。」

「では、私は…………」



……

………


そうして…


「お、セレスちゃん、今日もお務めかい?」

「あら、ザインさん、おはようございます。」


「あ、セレスお姉ちゃん!今日こそ遊ぼーよ!」

「いいわよ、何して遊ぶ?」


「今日もセレス殿のおかげで平和であります!」

「トマさんのおかげでもありますよ。」



村は元通りになりました。

正確には村人は元通りになって、村としては再建中です。


あの時、神さまから光の力を授かり、2つの魔法を習得しました。

一つは結界魔法、もう一つは蘇生魔法。


結界を張り直し、魔物が消えたあとすぐに、

村全体に蘇生魔法を使用したのです。


みんな、死ぬところは覚えてなかったらしく、村の惨劇に

は驚いていましたが、前向きに復興に取り組んでくれています。


また、諸悪の根源であるレイナも蘇生しました。

でも、前と違って、私には敬語で喋ってきます。

何ででしょう?


さぁ、私も復興のお手伝いに行きましょう!



ここまでありがとうございました。

これが、私、セレスティナの物語でした。


聖女も人間、闇堕ちだってするんだもん。




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