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天鎧さんは農民志望  作者: 水溶き片栗粉
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2話 天鎧さんは思いを馳せる

読んでいただき、ありがとうございます。

『天鎧』の読みは『てんがい』でございます。

「おめでとう!君には魔法の才能がある!」


神父様のその一言で、俺の人生は変わったんだと幼いながらに分かった。


オル・シュベリア王国の人間は10才になると教会で魔法の適正を調べてもらうことになっている。

それは、俺の住んでいたロア村も同じで、今年も教会に住む神父様が村の子どもたちの適性を見てくれた。

そんな中で唯一俺に魔法の適正があったらしい。

こんな辺境の村で魔法の才能を持つ子供が生まれるなんて初めてだったから、村の人達は大いに喜んでくれた。

俺自身も、自分の土魔法で村がもっと暮らしやすくなるなら、父さんも母さんも楽になるし、弟、妹ももっとご飯を食べられるようになるんじゃないかと思って嬉しかったんだ。


「あれからやっと10年か。」


村の皆の援助があって王都の魔法学園に入学したはいいものの、ひょんな事から国王陛下を魔物から助けることになり、あれよあれよと言う間に学園を辞め軍属し、当時の序列1位『天魔』ジフ=グレイプニスに師事を受けた。あれから10年。


「やっと、やっと開放された!これで村に帰れる!」


まぁ、元々10年はこちらで土魔法の勉強をする予定だったからこそ、軍属も10年までって約束だったしな。期限は変わらん。


「それもこれも、新しい魔法なんか作っちゃうからだよなぁ。普通に勉強しておけばよかった。」


現在俺は『天鎧』のトレードマークである黒い鎧をつけていない。というのも自室にいるというのもそうだが、何より俺の鎧は魔法で生み出したものなのだ。


土属性魔法『強化鎧装』


なんと学園で魔法の知識を覚えたばかりの10年前の俺が作った魔法である。

元々、畑を耕したり、落とし穴を作ったりと、地味な魔法しかない土魔法だが、戦闘用の魔法もないわけじゃない。

防御に片寄っているだけで授業では戦闘用の魔法も幾つか教えて持っていた。

その中で俺が注目したのは、砂の鎧を身に纏う下級魔法『サンドアーマー』。

本来足元の地面をそのまま使うことの多い土魔法だが、この魔法は足元がどんな地面であろうが『砂の鎧』を身に纏うのだ。

つまり下の地面の性質はあまり関係ない。

そこで俺は密かに『サンドアーマー』の改造実験を行っていた。

そして生まれたのが『強化鎧装』である。

この魔法は地面を含まれるめちゃくちゃ硬い金属(俺もよくわからない)に性質を変え身に纏うというもの。

更に副次効果で(師匠曰く)、膨大な大地のエネルギーをその見に宿すことが出来る。

それにより圧倒的な防御力だけではなく、ドラゴンすらも一撃で殴り殺せるパワーと、目にも留まらぬスピードを手に入れた。

しかも、元が下級魔法の改造故に消費魔力も非常に少ない。

こんな魔法を作ってしまったから、何かピンチだった王様助けちゃうし、強すぎるから正体を秘密にして半ば無理やり軍に入れられるし、おっかない魔導士が師匠になるし。序列1位になっちゃうし、超危険生物と闘わされるし、周りから祭り上げられるし、貴族からの求婚がめっちゃ来るし。

本当に、未だに根が農民のままの俺にはキツイ10年間だった。


「それも今日で終わりだ。良し!準備は完了だ!今すぐロア村に帰ろう!」


「これ、ちょいとまて。」


・・・はぁ。


「ジフ先生、後でお伺いするつもりでしたが。いつ来られてたんですか?」


「なに、丁度今来たとこよ。愛弟子の見送りをしてやろうと思うてな。」


「師匠は止めないんですね。」


「元々10年の約束じゃったからのう。そのうえで弟子にしたんじゃから今更とやかく言うつもりはないわい。」


「それはよかったです。」


「お前さんの部隊への対応はワシがしておいてやろう、他のナンバーズへの説明もの。」


それは正直助かる。俺の正体を知っているのは国王グスタフと宰相アーヴィン、そしてジフ先生の3人だけだ。今迄ずっと隠してきたから、辞めるにしても今更どう周りに説明しようか困っていた。そして開き直って何も言わず逃げようとしているのが今なのだが、どうやら先生には御見通しだったようだ。


「先生、ありがとうございます。」


「なぁに、約束をしっかり覚えておきながらギリギリまでお前さんを働かせていた陛下が悪いんじゃよ。」


やっぱりこの人には頭が上がらないな。

ジフ先生には、魔法戦闘だけでなく、俺が本来学びに来た農業魔法、建築魔法に関しても丁寧に教えてくれた。それこそ、学園で学べる以上のことを。

ツラい10年だったが、これで大手を振って帰ることができる。


「先生の御蔭でこの日を迎えることが出来ました。本当にありがとうございました!」


「ほっほっ。ワシも楽しかったよ。そのうちまた、顔でも見せに来なさい。勿論、ヴァン=ホーエンハイムではなく、カイウス=ロアとしての。」


「はい!そう遠くないうちに!俺が作った野菜を持ってきますよ!」


「それはそれは、楽しみじゃ。期待しとるよ。」


修行中はめちゃくちゃ厳しくて、めちゃくちゃ恐い人だったが、暖かい人だった。

いつかまた恩返しにこよう。


「行くのか。」


「はい。」


「達者での。」


「先生も、御身体に気をつけて。」


「ふ、あと50年は生きるであろうよ。」


「ははっ、そうですね。・・・それでは失礼いたします。」


「うむ。」


「ありがとうございました。」


こうして俺の10年間の王都生活が終わった。

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