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リエ  作者: 最中亜梨香
第二章
10/31

5

「な!」

 誰よりも驚いたのは、竜王だ。

「いかん、ヒナリ! 危なすぎる!」

「烙印を消すことはできなくても、結界ははれる。二人の手助けができるよ」

「ヒナリ、分かってるのか? 遊びじゃないんだぞ。結界の術は確かに見事だが、戦いは不得意だろう」

「でも!」

 ヒナリは確固たる決意を秘めた目で、竜王を見つめる。

「せっかくこうして出会ったもの、少しでも助けになりたいの。リエちゃんの命が危ないって分かっているのに、このままのんびりするなんて嫌よ。私も、手助けするわ。竜宮の姫として!」

 ヒナリと竜王、二人の視線がぶつかり合う。

 先に、視線を逸らしたのは、竜王だった。

「陸の子よ。どうする? 私の娘はこう言っておるが」

 リエとソラは顔を見合わせる。

「その、結界をはるって? あの洞窟みたいな場所を作れるのか?」

「洞窟、というよりは、見えない壁を作る感じかな。壁の硬さは保証する。ちっとやそっとじゃ壊れないよ!」

「なら、来てもらいたいな。悪霊の攻撃を避けるには、結界が必要になる」

 ソラは言った。すると、竜王は深々とため息をつく。ため息の泡が、どんどん登っていく。

「……仕方ない。行ってきなさい。ふたりとも、娘をよろしく頼む」

「やったあ! よろしくね、リエちゃん、ソラくん!」

 ヒナリは満面の笑みを浮かべる。

「うん、よろしく。ヒナリ」

 リエも笑みを浮かべる。

「ああ、よろしく」

 ソラはそっけなく言った。

「じゃあ準備してくる! ちょっと待ってて!」

 ヒナリは身を翻すと、洞窟へ戻っていった。少しして、人間の姿で帰ってきた。さっきと同じ藍色の衣を着ているが、背中に大きなかごを背負っている。

「お待たせ! さあ、行こう、行こう!」

 不意に、前が淡く光りだしたかと思うと、大きな渦の柱が現れる。

「この渦に乗りなさい。陸地へ連れていってくれる」

 リエは恐る恐る、渦に手を伸ばす。触れると、ほんのり温かい。

 竜王は静かにリエを見ている。

「ほら、早く行きなさい。化け物はこうしている今も、そなたを追っている」

 リエは渦に飛びこんだ。ふわりと身体が浮き、ぐんぐん上昇する。渦の向こうの暗闇に魚が一瞬見え、下へ消えていく。やがて、頭上が明るくなってくる。ゆらゆらと揺れる水面に、リエは勢いよく顔をだした。

 空は清々しい晴れ。水面はキラキラと光をはね返し、眩しい。少し先に、砂浜が見える。リエは泳ぎ、砂浜にたどり着いた。水を吸った花嫁衣装がずっしりと身体にまとわりつく。

「さあ、早く行こう!」

 ヒナリが砂浜にあがってくる。鯨ではなく、人の姿だ。その後にソラも続く。毛がぐっしょり濡れ、一回り小さくなったように見える。

「なあ、ヒナリ。俺達を助けるためじゃなくて、陸を旅したいから、くっついて来たんだろう?」

 ヒナリはエヘヘ、と舌をペロリと出して笑う。

「だってお父様、陸へ行くことを全然許してくれないんだもん。だから、今まではこっそり砂浜をうろうろするしかなかったの。そこに、こんな良い機会がふってきたんだよ? 絶対に逃すわけにはいかないわ! でもね、二人を助けたいっていうのも、本当だよ」

 そう言って、ヒナリは低い声で何か唱えた。すると、リエとソラの周りに熱風が吹き、二人の衣と毛は綺麗に乾いた。

「ささ、行きましょ!」

 ヒナリは無邪気に笑うと、リエの手を引っ張り、砂浜を軽快に駆けだす。

「ま、待って!」

 砂浜に真新しい足跡の模様ができる。

「……元気だな」

 ソラはそう呟くと、二人の後ろを歩いていった。

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