表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

愛憎

作者: Open

……見つけた


幸せそうに俺の友人でもある男と手を組みながら歩くあの女。俺は内ポケットに入れてあるナイフの感触を確かめながら彼等に向かい声を掛けた。


「よお」


「っ?!…あ……あなた……」


俺は驚く彼女とその隣にいる友人に近づくと、内ポケットに入れていたナイフを高く振り上げる。


「キャアアアアア!」


「な、何するんだ?!」


彼女の悲鳴と友人の驚きの声が木霊する中、鮮血が舞い散った。










・・・・・


・・・











一年前


「……ごめん、やっぱり私、あの人のことが忘れられないの…だから、別れましょ」


そう言って彼女は呆然と立ちすくむ俺を残し、街の中へと消えていった。


そこから、俺はどうやって家に帰ってきたのかは覚えていない。ただ、起きたら家だった。狭いアパートの床を埋め尽くさんばかりの缶ビールの空き缶と酒瓶が転がっていたことと、そして、頭の酷い痛みだけは鮮明に覚えている。



それから一年、俺は端から見たら至って普通に暮らしていた。いつものように仕事をこなし、平坦な日常を繰り返していた、そんな時だった。


一通のメールが届いたのは


メールを出した主は高校時代の俺の友人だった。


内容はこうだ


“今度結婚するから是非式には来てくれ”


結婚式招待の一文と、写真が一通添付されていた。そこには一年前、俺を振ったあの女が幸せそうに微笑んでいた。


ズキリと久しく感じていなかった胸の痛みが走る。



そして、もう一通、1年前から全く音沙汰のなかったメールアドレスからメールが届いた。内容はこうだ


“今度結婚します。あなたも幸せになってね”


その一文を読んだとき、俺の心の奥底で眠っていた。いや、蓋をしてみないようにしていた感情が一気にあふれ出る。


許さない許さない許さない許さない許さない許さない

許さない許さない許さない許さない許さない許さない

許さない許さない許さない許さない許さない許さない

許さない許さない許さない許さない許さない許さない

許さない許さない許さない許さない許さない許さない

許さない許さない許さない許さない許さない許さない

許さない許さない許さない許さない許さない許さない

許さない許さない許さない許さない許さない許さない

許さない許さない許さない許さない許さない許さない

許さない許さない許さない許さない許さない許さない

許さない許さない許さない許さない許さない許さない

許さない許さない許さない許さない許さない許さない

許さない許さない許さない許さない許さない許さない

許さない許さない許さない許さない許さない許さない

許さない許さない許さない許さない許さない許さない


絶対に許してはならない。



お前の横で幸せそうに笑っている男に恋人がいるとわかり落ち込んでいたお前を慰めたのは確かに俺だ。僕は君が好きだったから。


だが、そんな俺に告白してきたのはお前だ。


そんなお前を僕は確かに受け入れた。


そして、自己評価が低く、いつも謝り倒していた君を何とかしようと、俺は心理学の本を読みあさり、君の自己評価を上げようと努力した。自罰的な、必要の無い自傷行為をする君が見たくなくて。


そして一年前、あいつが今フリーなのを知った瞬間、お前は俺の元から離れていった。健康的になった心と体を伴って。


俺は用済みと言わんばかりに


だから俺は


お前が


お前が…


お前が……!


だから俺は決めた。俺は彼女に復讐をすると。そして、彼女の記憶に残り続け、俺から彼女を奪ったアイツに消えない傷を残すことを。


こいつらを殺しても、何の意味は無い。俺にのみ罪が与えられる。それに、死んでしまったらあいつらはそこで終わりだ。


そんなこと、決して許されてはならない。


ならばどうするか。


俺はお前達の記憶の中で君が死ぬまで永遠に残り続けよう。君が幸せだと感じる瞬間に俺のことを思い出させよう。



・・・・・


・・・


高々と掲げたナイフを俺は自分の胸へと。心臓のある位置へと突き立てた。


一瞬の冷たさと身体の中を焼き尽くさんばかりの熱さが襲うが、構わず俺はさらに深くナイフを刺した。ブチリと言う音が聞こえ、俺の中を流れていた血が勢いよく噴き出し、俺は地面に倒れ込んだ。


「いやあああああああ!!!!」


意識が朦朧とし出してきたのにもかかわらず彼女の姿と声だけははっきりと聞こえた。


俺は最後の仕上げとして彼女に呪いを掛ける。決して忘れないように。君がこの先俺以外の男と幸せになんかならないように。そして、いなくなってしまう今の俺の心からの気持ちを正直に告げる。









「あ…い……して…る」


















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ