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虎・・・トライガー・・・ティガロ

「さて、とりあえず・・・どこなんだ。ここ?」


 呟いてみるも答える者はいない。


ため息をつきながらも黙々と歩き続ける喜六。1時間ほど歩いたところ草原は少しまばらになり、サバンナのように少し開けた場所にたどり着いた。


 あたりにまばらに生える植物を見るに「異世界?」「地球?」と悩みが尽きない。

一人歩き続け、精神的にも肉体的にも疲れが見えたことから仕方なく休憩することにした。


 生き物の影や足跡などを見ていないため、これからの先行きにかなり不安が募る。

ちょうどいい感じに日陰のある低木の下で座り込む。


「・・・ふう。さて、場所がわかるかな?」

 ようやく手元にあるスマホを操作することで現在地がわかるのではないかと地図を見てみる。


「・・・圏外か」

 ある程度は予想していたことだが、電波は届いていない、らしい。


「飲み物もないし、食べ物もないし・・・オワタ」


 がっくりと意気消沈したまま、うつむたまま数分、ㇴっと大きな影が差しかかる。


「・・・なんだ?」

 そこには、おそらく「虎」がいた。

おそらくとしたが、自分の知っている「虎」とはやや見た目が違っためだ。


 体長は3メートルぐらい? 頭部は、ほぼ「虎」。なお、色違いの顔(青・黄・赤)が3つある。


・・・信号機か!


 なお、獲物を狙う目ではなく、本当に珍しいものを見るかのように不思議そうな表情をしている。

なんとなく人間のような知性を感じることができた。


・・・まさか、しゃべらないだろうな。


 お互いに沈黙のまま、数分が経過すると「虎」は、あきれたような表情(3つとも)をして悩んでいるようだ。


【さて、主はどこから来た?】


 いきなり人の言葉が聞こえ、びくっとするも、付近には誰もいない。

目の前には「3頭虎(面倒くさいので「トライガー」と勝手に名付ける。)」しかいない。


「俺?」

と、トライガーにおそるおそる聞いてみる。


・・・なにやってんだろうな?俺?

と、つい落ち込んでいるとトライガーが3つの首を縦に振る。お互いに邪魔しないようにウェイブのようになったので、つい吹き出しが漏れる。


【そう。このような場所にはヒトは来ない。ここは「誰もいない場所ノーワン」と呼ばれる不毛の大地。我らも大気の揺らぎがあったため、見に来ただけであって好んでくる場所ではない】


「そうか。俺も何でここにいるのか知らないんだ。ここがどこなのかも知らない。いきなりだったんだ」

 少し困惑しながらも、トライガーに話しかける。


【まあ良い。妖し者かとも思ったが、そんな感じでもないな。危険な匂いもしない】

「うーん。俺は平凡なヒト?だろう。家に帰りたいが、帰る方法がわからない」

【帰る?どこに?どうやって来たか覚えていないのか?」

「・・・はあ、まったく」

・・・・・・

・・・・・・

 喜六もトライガーも天を仰ぎ、沈黙が続く。どうにもならない。


【やむを得ないか。ほおっておいてもよいが、珍しい話が聞けるかもしれんし・・・】

 ぶつぶついう声が聞こえる。

一息入れてようやく気付いたが、どうして話が通じているんだろう?


【よし。我らの里まで来るか?歓迎するわけではないが、珍しい話があれば聞かせてもらうことにしよう」


 トライガーからそんな提案が出てきた。


「えっ!・・・里があるのか?「虎」に?」

【「虎」?我らのことか?我らもまあ、数は少ないが、それなりに繁栄している。里としては大きくないが・・・」

「連れて行ってくれるのか?でも、まさか、食料になるんじゃないか?」

・・・

【そんな荒れ者はおらん。それに主など牙の端にもかからん】


ガッハッハーと3つの首がそれぞれ豪快に笑う。


笑い声なのか気後れなのか分からないが、目の前が津波のように押し寄せ、地面に押し付けられる。

「・・・腹をくくるか。よろしく頼む」

 喜六は体をはたきながら立ち上がり、トライガーに頭を下げる。


「俺は、赤敷あかしき喜六きろく。キロクと呼んでくれればいい」

【「キロク」か。わかった。我らの名は「ティガロ・イーアルサン」まあ、「ティガロ」と呼べばよい】


 トライガー改め「ティガロ」との出会いであった。

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