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第六話 新聞部

 二日目。

 朝の早い時間に家を出た俺は、学校に大分早く着いた。それでも既に野球部は練習していたが。

 教室に入ると一人の女子が寝ていた。入学式の例の子だ。黒板に書き残された席の図とそこに書かれた出席番号を見比べると、彼女はどうやら36番、つまり一番最後のようだ。

 よく見ると黒板の端に、われきせきのこ、と書いてあった。我、奇跡の子? 誰が書いたのだろうか。

「おはよう」

 とりあえず寝ている女子に朝の挨拶をしたが、案の定返事はなかった。ただ虚しく俺の声だけが響いた。


 鞄を自分の机に置き、まずは学校を見て廻ることにした。

 ここ☆☆高校は、大きく分けて六つの建物からなっている。まずはHR棟。一階が3年、二階が2年、三階が1年となっていて、全ての教室が収まっている。予備教室が一階と二階にそれぞれ一つずつ、更に情報(コンピュータ)室が三階にある。四階には、生物室、地学室、被服室とそれぞれの準備室、五階には視聴覚室、図書室、音楽室、演劇部室がある。

 これの南側に平行に建つ建物が管理棟。職員室や生徒会室などがある。これとHR棟は二本の連絡通路で繋がっており、その東側には昇降口、間には中庭、西側には一階が食堂で二階が合宿用の部屋になっている建物がある。

 HR棟の北側には体育館があり、その東側には武道棟、さらにその東側には部室棟がある。部室棟の更に奥には弓道場がある。

 グラウンドは二つ。主に野球部の使う第一グラウンドは管理棟と弓道場を結んだ線が対角線となるような長方形である。主にサッカー部が使う第二グラウンドは体育館の更に北側にある。大きさは第一グラウンドよりも第二グラウンドの方が大きい。


 教室を出た俺は、連絡通路を通って管理棟に向かっていた。

 だが、そこには二年生の白髪の女子がいた。確か、彼女は。

「新聞部の、青梅慰夢(おうめ いむ)さん?」

 すると彼女はこっちを見、首を僅かに傾けた。肩にかかる程度の髪が揺れる。

「はいです。東条都靄君ですねです」

「そうだが」

 そう言うと、青梅はトテトテと近付いてきた。意外と背が低い。

「あの、『オトシモノ』について、知ってるです?」

 ――『オトシモノ』か。いきなり本題になったな。つまり。

「正確なことは知らないが、この世では本来起こることの無い現象の総称、だったか」

東条影偶致(とうじょう かげぐち)さんからかな、です」

 東条影偶致は俺の父だ。

「ああ。だが、未だに信じられないんだが」

 青梅は微笑む。

「この学校にも何人か『オトシモノ』を持った人がいるです。学校を本気で征服するのなら、気を付けて下さいです」

「何で、そのことを」

「新聞部を甘く見てはいけないです。あ、新聞部はそのことには無関知なのです。また、です」

 そう言い残して、青梅はHR棟へトテトテと歩いていった。

 学校征服計画はいつの間にバレたのだろうか。それにわざわざそんなことを言いにきた理由は何だ。

 まあ兎に角、新聞部が関知しないでいてくれることはありがたかった。

 ☆☆高校新聞部の発行する新聞は学内はもとより学外からも人気があり、異常に大きい影響力を持つ。実の所この活動は隠れ蓑らしいのだが、この計画には関係無いので詮索はしない。

 俺の計画に予想外の影響を与えかねない新聞部だったが、これで大分安心できた。


 一通り校舎内を見て廻り教室に戻ると、寝ていた女子はまだ寝ていた。

 時刻は8時を少し過ぎた辺り。他に生徒がいなかったので、俺はその女子にもう一度話しかけることにした。

「おはようっ!」

 さっきよりも元気に言ってみたが、さっきよりも更に自分の声が響いてただ虚しさが大きくなるだけだった。

「Zzz...」

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