第三話 四つ子?
学校を出てから歩いて十分。一軒家の前にたどり着いた。
「ここが私たちの家です。まだ両親は帰ってきていないと思いますが、どうぞ」
そう昭が言っている間に、天と明は玄関の向こうに消えていた。なんだか中で騒いでいる音が聞こえるが、このまま外にいるのも変なので玄関に向かうこととする。
先回りした昭が開けてくれた。
「どうぞ」
「あり――」
「ごめんなさい」
昭にお礼をして入ろうとすると、中にはか細い声で謝る女の子がいた。その子を見て絶句する。
「寝てろって今朝言ったよな。晴はもっと自分の体を大切にしろ」
天がその晴と呼んだ女の子を優しく怒鳴っている。だがそんなことよりも。
「なあ昭、あの子は?」
そう、晴の容姿が三人と非常によく似ているのだ。いや、同じと言っても誰もが納得するだろう。ただ服は制服ではなくて黄色のパジャマを着ていたが。
だが。
「昭って呼んでくれるの?」
昭は見当違いの返事をしてきた。ただ単に杉目が何人もいるから名前で呼んだのだが、何かいけなかっただろうか。しかも顔が赤くなっている。今朝もそうなったかと思うが、どうしてこうも簡単に顔が赤くなるのだろうか。
と、自分も見当違いのことを考えていたことに気付き、気持ちを切り替える。
いつの間にか、晴と話していた天が俺の側に来ていて質問に答えてくれた。
「晴はあたし達の妹だ。今年からあたし達と同じ高校に通うことになっているが。ま、詳しいことは中で話すから、まずは中に入んな」
一番話が通じるのは天のようだった。
リビングに通されると、天が晴を寝かせに二階へ、昭が飲み物を準備しにキッチンに向かい、明と二人きりになった。とりあえず話しかける。
「自己紹介をしていなかったな。俺は7組の東条都靄だ。よろしく、明君」
「よろしくね、お兄……様?」
今、何て言った?
お兄様、って何でだよ。しかも様なんか付けて。城ヶ崎浜三日月子の顔が浮かんで、すぐに消した。
簡単に質問する。
「何で俺がお兄様?」
自分でお兄様と言うのは意外と気力が必要だった。
明はさっきまでの寡黙さはどこえやら、饒舌に話し始めた。
「天と昭が好きな相手だから。いつか結婚すると兄弟になるけど。天と昭のどっちが勝負に勝つか。そうなると昭は譲るから天が不戦勝。だからお兄様。僕のお兄様。ちなみにファンクラブが設立されると。お兄様じゃあなくなるかも。それは残念。だからお兄様」
言葉の意味は分からなくもない。だが分かりたくない部分がいくつかあった。
俺が分析していると、天がやってきた。
「ごめんな、晴があんたと話したいっつーから我慢させるのに手間取った」
そう言いながら明の隣、つまり俺の斜め前に座る。ほとんど同時に昭もやってきて、天の向かい側、つまり俺の隣に座った。そして緑茶の入ったカップを配った。
熱いお茶を一口飲んで一息つき、天を見ながら聞く。
「それで、あの子は」
「すみません、紹介が遅くなってしまって。杉目晴、私たちの妹ですが、同学年です」
問いかけた天は熱いお茶を冷ますことに精一杯のようで、昭が答えた。その昭を見ると、どこか意地の悪そうな顔をして続けた。
「四つ子ではありませんよ。顔が似ていても、晴の誕生日は私たちよりも一日前なんですから」
今ので全てが分かった。昭が意地の悪そうな顔をしたのは、俺が分かっていないと思ったからだろう。だがもう少し巧妙にヒントは出すべきだ。




