第一話 入学式後
入学式が無事に終わり、ホームルームの為に各クラスに移動した。
俺は全9組中の7組だ。
教室に入ると半分程の生徒がいた。予想通りその中の半分程がグループを形成していた。多分、中学校が同じ生徒だろう。
「よろしくー!」
と元気良く言ってみると、何人かは返事を返してきた。その中でも近くにいた長髪の女子の反応がよかった。
「あ、君、さっき代表やってた東条君だね。君の席はココココ」
そう言って彼女は自身の左隣の席を指差す。
「君は?」
そう聞きながら、言われた席に彼女と向かい合うように座る。
「私の名前はね、瀬賀井妹子だよ。初めまして」
「こちらこそ、よろしくね、妹子ちゃん」
ぽっ。バン。ガラピシャはぁあー!ガラガラはい……。みゃぉぅ。ん?Zzz...。キャー!
俺が言い終わると同時に、複数の事が起こった。
効果音のみだとよく分からないので、順番に解説をする。
始めの、ぽっ。は妹子ちゃんの顔がなぜか真っ赤に染まった音。
次の、バン。は前の方の席にいた金髪女子が机を両手でど突いた音。
ガラピシャはぁあー!は後ろの扉を乱暴に開けて入ってきた女子が俺を見て、あー!と叫んだ所までの音。走っていたのか息が切れている。
ガラガラはい……。は前の扉をゆっくり開けて入ってきた気弱そうな先生が教室の様子を見ての一言。
みゃぉぅ。はどこから入ったのか、猫が跳んだ時の鳴き声。
ん?は顔をさっきまで伏せていたが煩かったからか教室を見回す男子。
Zzz...。は入学式の時と同じ女子生徒の鼾。
キャー!は猫がいた事に驚いた女子の叫び声。
俺は猫と金髪美女を置いておいて、まずは扉を乱暴に開けた女子を確認する。
えっと、小柄で美少女のその女子には、見覚えがあった。
「あ、君は今朝の」
「あんた、誰? てゆーか、そこ私の席なんだよな。ドケ」
俺はその今朝とは全く違う彼女の雰囲気に気押されながらも、妹子ちゃんに目線で助けを求めた。
だが妹子ちゃんはそんな俺を完全無視だった。
仕方がない。これも何かの縁だ。
そう思って気持ちを切り替え、立ち上がった時だった。
「ちょっとあなた、都靄様に向かって何て口のきき方を」
声のしたほう、つまり俺の後ろを向くと、例の金髪女子が仁王立ちしていた。これが正真正銘の仁王立ちと言わんばかりに。
扉を乱暴に開けた女子は意外と冷静で、俺に小声で尋ねてきた。
「知り合いか?」
「いや」
「大変だな。あと、あんたの席は一つ前だ。よろしく」
「あ、ああ。ありがとう」
彼女のことを聡明だと見直しながら、こそこそと前の席に移動した。
彼女は妹子ちゃんと挨拶をしたので友達なのだろう。
「――ということですの。分かりましたこと? あなただけでなく、そこのあなたも。なぜ都靄様に嘘を吐くのですか」
金髪女子はどうやら話し続けていて、僕たちが席に着いたことに気付いていないようだった。それになぜか妹子ちゃんを指で差している。
それになぜ俺の呼び方が都靄様なんだよ。吐気がする。
「城ヶ崎浜三日月子さん、独壇は構いませんが、遅刻扱いになりますよ」
先生が言うが、それは嘘だ。すぐに分かる嘘だ。それに、そんなことよりも猫の方は気にならないのだろうか。
だが、城ヶ崎浜三日月子と呼ばれた長い名前の女子は素直に席に戻っていった。その時、俺を見て顔を赤らめた気がしたが、気のせいだろう。三回も女子に顔を赤らめられて嫌ではなかったが、その理由が分からない内は早急に判断を下すべきではなく、また行動すべきではないだろう。
そう考え、そして今度は放課後どうするかを考えた。




