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第二十五話 理由

 とりあえず家に入り、日荒川から事情を聞くことにした。

「私からひるめ様に頼ませて頂きました。ひるめ様は直ぐに承諾してくださいましたよ」

 東条ひるめ。俺の母だ。

「何でまたここにわざわざ。ある意味左遷だぞ、これ」

「そんなことはありません。ご主人様が次期当主になると、この日荒川翆、確信していますから」

 勝手に確信しないでもらいたいものだ。

「聞きましたよ。ご主人様は☆☆高校の征服を計画しているとか。現在の当主であられる影偶致(かげぐち)様とよく似ていますよ」

「俺はあんなよく分からないモノを探求する親父の気がしれないよ」

 なぜ俺の計画を知っているのかは聞かない事にする。

 と、さっきまで傍観していた二人が会話に入ってきた。

「都靄君って、お坊っちゃまだったんだ」

 そう妹子ちゃんが言うと、頷きながら天が言う。

「そうだな。東条影偶致っていったら、あの東条伊丹治(いたち)元総理大臣の息子だしな。ところでその東条影偶致が探求しているっていうモノって、何なんだ? あと都靄、学校を征服するのは本当か?」

 俺はその核心を突く一つ目の質問に、淡々と答える。

「親父の探求してるモノについては俺からはノーコメントだ。新聞部なら話してくれるかもな」

 そこで区切る。

 俺は正直二つ目の質問について迷っていた。ここで話してしまってもいいものか、と。

 そこに、隣の日荒川が口を挟んだ。

「ご主人様、嘘は信用を無くします。何事も未踏に辿り着いてこそ、ですよ」

 はっきりと告げられたその言葉に、俺の心は決まった。

「分かった、言おう」


 といってもそこまで仰々しく話すような内容でもない。ものの一分で説明は終わった。

 どんな反応がくるのか不安でもあり楽しみでもあったが、意外とあっさりしていた。

「そっか。楽しそう」

「大変だな」

 それからいつの間にか女子三人で話が弾み、俺は蚊帳の外だった。



 妹子ちゃんと天が帰り、夕食をとろうと日荒川に声をかけた。これに対して彼女は。

「私目などがご主人様と食事をとるなど、考えられません」

 と言うと、配膳を終えてどこかへ出掛けてしまった。

 別に誰と食事をとろうが、大丈夫だとは思うのだが。あと、一人よりは二人で食べた方がいいに決まっている。

 勿論、今までの短い人生の半分は独りでの食事だったから、慣れてはいる。

 それでも、だ。わざわざ別々に食べることもないだろうに。


 俺が食べ終わると、日荒川が食器を片付けにきた。さすが日荒川家の血を引いているだけあって行動が素早い。

 ちなみに、料理は叶には一歩及ばないものの、充分美味しいと思える味だった。

「私の苗字は日荒川、ひいては東条家に遣える者ですが」

 突然手の動きを止めて、日荒川は話し出した。

「昨日までは城ヶ崎浜三日月子様の御屋敷、つまり田奈浜弥羅和(たなはま やらわ)様、赤沙(あかさ)様のお側におりました。少々田奈浜家の方がごたごたしていたそうで、水無月李梨(みなづき りり)様から御相談を受けました」

 学校では城ヶ崎浜のことを月子ちゃんと呼んでいた。公私をしっかりと使い分けているのだろう。

「その水無月李梨ってのは」

「私の伯母に当たる方で、田奈浜吾郎(たなはま ごろう)様とは古い御友人だと聞いています。ご令嬢のお二人をごたごたに巻き込みたくないと水無月李梨様に御相談されたそうで。そこで、同じ学校に通っている城ヶ崎浜三日月子様、田奈浜弥羅和様、私、そして赤沙様が一所に集まっていました。ですが先日、ごたごたが治まったという連絡を受け、城ヶ崎浜三日月子様の御屋敷を離れなくてはいけなくなりました。そもそも遣える者の姓の違う同士が同じ御屋敷に何日もいる、ということが不自然ですから。そこで、私はせっかくだから、と本家ではなくこの別荘でご主人様の御世話をさせていただくことにしました」

 言い終えると、これで話は終わりとばかりにさっさと下膳をして、リビングを出ていってしまった。

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