第十八話 夕食
それから十数分後、拝島に呼ばれてリビングへ向かうと、この家には久し振りの豪勢な料理が並んでいた。
「鼎は、実は料理人を目指しているんです」
俺が固まっていたからだろう、拝島がそう説明した。叶は恥ずかしそうに下を向いている。
「さあ、冷める前にいただきましょう」
拝島は上座の席を俺に勧めた。そこに座る。
俺の右側に拝島と叶、左側に岩井と夢星が座る。
「じゃあ、いただこうか。いただきます」
「「「「いただきます」」」」
俺に続けて四人も言った。
「東条君ってさー、こういう食事、何度も食べてるよね」
唐突に叶が聞いてきた。
「ん? なんで?」
「食べ方だよ。一応きちっとした配膳とか配置とかしちゃったからさー、見ればマナーが良く分かるんだよね。それに手入れがされて無くてくすんでたけど銀食器が結構あったね」
確かに、俺と叶は他の三人と比べ慣れている雰囲気がある。
叶は料理人になりたいのだから何度もこういった料理を食べ慣れているのは容易に想像できるが、俺の場合はそうでもないのだろう。
隠す必要もないので、その辺りの種明かしをする。
「俺の親父、つまり東条影偶致って聞いたことあるか」
四人は食事の手を休めて俺の方を向き、首を横に振る。
「そうか。なら東条伊丹治は?」
「5年くらい前の総理大臣です」
拝島が答える。
「そう、内閣総理大臣やってた。あれ、俺の爺ちゃん」
俺の爆弾発言に、夢星は食事をボソボソと再開し、他の三人はポカンとなる。
夢星がフォークを磁器の皿に当てる澄んだ音だけが響いた。
「まあ、驚くのも無理はないけど、ここは東条家の別荘。俺はその家系の直系に当たるな」
「「「え〜〜〜〜!!!」」」
「……」
今度は夢星がポカンとなった。
他の三人が騒ぎ立てるのでその理由を聞くこともままならない。
「何で今まで言わなかったのですか、というより本当ですか」
「大驚きだよ」
「びっくりしました」
「……」
上から拝島、叶、岩井、夢星だ。
「まあ、言わなかったのは一応謝るとして。夢星さん、どうしたんだ?」
ビクッ
そんな効果音が聞こえてきそうな程、夢星は体を痙攣させた。いや、俺がさせたのかもしれない。
いつもに無い夢星の様子に、俺のことで盛り上がっていた三人も夢星を見る。
「どうしたの」
隣に座っている岩井が聞くが、夢星はただ首を横に振るのみだ。
どうしたというのだろうか。俺が直系と聞いた直後だった気がする。
「此処、何故?」
震える声で言う夢星は明らかに怯えていた。
質問の意味を考えてみると、おのずと怯える理由が分かってきた。夢星も『オトシモノ』を持っているのだろう。
だが親父たちがどうだろうが直系だろうが、俺は総理大臣になるつもりは無いし、それに『オトシモノ』についてもほとんど興味は無い。
夢星に怯えられるいわれはないので、安心させるためにこう言った。
「大丈夫だ。俺は“君たち”に何かをしようと思ってなんかないから。ただ協力してくれるとありがたい。無理に、とは言わないけど」
できる限り優しくそう言うと、今日一日のことを思い出したのか夢星は落ち着き始めた。
話においてきぼりになっていた三人は、夢星が落ち着いたのを見て一安心し、食事を再開した。
食事も終わり、四人は帰り支度を始める。
さすがに二日連続で来るとは言われなかったが、またいつか来るそうだ。
夜も遅いので送ろうかと玄関まで行くと、そこにはなぜか城ヶ崎浜がいた。
「都靄様、宇宙儀の組み立てセットは気に入っていただけたでしょうか。昨日、瀬賀井さんから連絡がありましてご用意させていただきました。今日はこれで失礼しますが、明日また参りますのでその時はよろしくお願い致します。それでは」
そう言うと、城ヶ崎浜は四人を連れて出ていった。




