第十五話 宇宙儀の組み立てセット
土曜日。
特に出かける用事も無く、今は岩井さん待ちだ。
そしてなぜか宇宙儀の組み立てセットがある。ただの宇宙儀でもなく、ただの組み立てでもなく、ただのセットでもない。明らかに宇宙儀の組み立てセットだ。とまあ、さっきから宇宙儀の組み立てセットと言って行数を埋めているのだが、別にストレスを発散している訳でもないし、宇宙儀の組み立てセットが好きな訳でもない。どちらかと言うと嫌いだ。
だが、宇宙儀や組み立てやセットは嫌いと言う程嫌いではない。宇宙儀は興味深いし、組み立ては安上がりだし、セットは注文し易いからだ。
…………
さっきから俺は何をやっているのだろうか。
まあ俺が宇宙儀の組み立てセットにどう思おうと、宇宙儀の組み立てセットがここにあることに違いはない。
送り主はM.J.とあった。
俺の知っている人々の中でイニシャルがMとJの人は少ない。例えば城ヶ崎浜三日月子とか。
イニシャルでない可能性も無いことはない。例えば横から見ると
.
つ
.
Σ
となり、点つ点シグマとなる。まあ、なったところでどうしようもないのだか。
色々考えたが、やはり該当者は城ヶ崎浜だろう。だがなぜ宇宙儀なのだろうか。
正午前。
昼食の準備をしようとキッチンの冷蔵庫を覗くと、玄関のチャイムが豪快に鳴った。
岩井が来たのだろうと当たりをつけて玄関の扉を開けると、案の定岩井たちがいた。
岩井琴子の他には、拝島好乃、叶鼎、夢星宇宙の三人がいる。折角なので宇宙儀の組み立てセットは夢星に譲ることとしよう。
この四人の中では拝島が一番背が高かった。つまり全員が俺よりも5cm以上低いこととなる。そのため、全員を見下げることになった。まあ、だからといって何も問題は無いのだがな。
「岩井さんに拝島さんに、夢星さんに叶さんかな。俺の家へようこそ」
そう言って扉を大きく開けた。
「し、失礼、します」
「おじゃまします」
「初めまして、東条さん」
「……」
上から岩井、拝島、叶、夢星である。夢星は相も変わらず本を読んでいるが、よくそれで電柱にぶつからなかったものだ。
そう感心していると、中の四人は所在なさげにウロチョロしていた。
「汚い」
拝島が呟いたが気にしないことにして、全員を客間に案内した。
背の低い木製テーブルの周りに俺たち五人は座った。
先程リビングに戻った時に宇宙儀組み立てセットを持ってきたので、それをテーブルの上に置こうとしたところ、拝島に遮られた。
「東条君、昼食はまだ食べてないですか?」
何だろうと思いながらも頷く。
すると叶がどこからか、いや体の陰から色とりどりのハンカチに包まれたものを四つ出してきた。
「これは?」
そう聞くと、拝島が答えてくれた。
「お弁当です。皆で朝から作りました。これが私、こっちが宇宙ちゃんのでこれは鼎ので、それが琴子のです」
続けて内容の説明だ。
「私は料理はあまりやったことがないので主食のおにぎりを作ってきました。梅と昆布と鮭です。宇宙ちゃんはハンバーグや唐揚げ、ウインナーなどです。鼎は肉じゃがや野沢菜の漬物などです。琴子はクッキーとかケーキなどです。一杯あるから足りないことはないと思いますよ」
「これなら充分過ぎるくらいだよ。ありがとう」
岩井は顔を真っ赤にしたが、他の三人はそんなことを気にも止めずに、弁当箱を開けていく。
復帰した岩井も手伝い、全部が露になったところでいただきますをしようとすると、拝島が一言付け加えた。
「食べ終わったら、この屋敷を掃除しましょう。いただきます」
「「「はい。いただきます」」」
俺も四人に遅れながら言った。
「いただきます」




