第十話 設立パーティー
俺の声にビクリと体を震わせる一同。
しばらく沈黙が続いたが、それを破る声が部屋に響いた。
「どういたしました」
声のしたほうを見ると、先程の運転手が扉から顔を出していた。走って駆け付けたのか息を切らせていたが、喋る言葉には一切そんなことを感じさせなかった。
「何でもございません、溝部。それより、パーティーの準備を」
「はっ、かしこまりました」
俺に抱きついている城ヶ崎浜は溝部という運転手にそう命令すると、俺を上目遣いで見てきた。
「だめ?」
……あー、城ヶ崎浜はツンデレだったか。今、デレが確認できた。
もちろん答えはいつも一つ。
「駄目。俺が思うように動けない」
城ヶ崎浜は溜息を一つつくと、俺から一歩離れて手を叩いた。
「はい皆さん、充電はここまでにして、ファンクラブ創立パーティーをいたしましょう」
「「「「「はい!」」」」」
そう元気よく言う一同を見て、俺は内心で溜息をつくのだった。
パーティーは、それはそれは豪勢なものだった。どうも制服姿の高校生には合わないのか、どことなく違和感が出てしまっている。
だがそんなことを気にする時間を俺にくれる人はいなかった。
入れ替わり立ち替わり話しかけてくる女子たち。一人当たり十分ほど、七人いたので一時間以上話していたことになる。その間、さっき昼食を食べたばかりだというのにテーブルに出されたお菓子をどんどんと持ってこられ、それを食べないとなぜか睨まれるから大変だった。
そんな時間もようやくおひらき。ようやくだ。
俺が椅子で休んでいるうちにほとんどの人は帰ってしまったようだ。残ったのもちろん城ヶ崎浜だが、天も残っていた。そんな時、扉がノックもされずに開けられ、そこから三人の美女が姿を現した。一人だけ灰色の作業着だったが、それでも美しかった。
どこかで見たことがあるなと思っていると、三人が自己紹介をしてきた。
最初に長髪の人。
「はじめまして、東条都靄君、ですね。私、田奈浜弥羅和と申します。これから色々とお世話になることもあるかと思いますが、その時はよろしくお願いしますね」
次に短髪の人。
「はじめまして、東条都靄君。私、知ってるかもしれないけれど、田奈浜赤沙、役者業をやっています。弥羅和とは双子の、妹です。よろしくお願いします」
最後に作業服の人。
「はじめまして。私は仲村小詠です。えっと、☆☆高校の二年生で田奈浜さんとは同窓生になるのかな」
田奈浜赤沙。数年前に新進気鋭の役者としてデビューし、今では国民的アイドルになっている。父親はあの□□□株式会社の社長をしている。仲村小詠。去年のミス☆☆高校コンテストで一年生にして見事2位に輝いた美女だ。今は同じ二年生の狭山茂樹と公認で付き合っているようだが、最近は破局説が浮上しているようだった。彼女の様子を見る限り、そんな風には見えないのだが。
挨拶だけすると三人は残っているお菓子に向かい、それらを食べ始めた。よほどお腹が空いていたのだろう。
それを見て、俺は家に帰ることにした。城ヶ崎浜が送ろうとしてくれたがそれを遠慮して徒歩で家まで帰ることにした。天はもう少しここに残るそうだ。
玄関近くまで行くと城ヶ崎浜がやってきた。向かい合う形に立つと、彼女が顔を赤くして言う。
「また……また、来て頂けますか?」
いつもそんな感じでいれば可愛いのに。
そう思いながら返答する。
「ああ、忙しくなければいつでもいいよ」
「で、では、明日にでも」
「あー、明日はまた別の家に行こうと思ってるんだ」
「そう、ですか。仕方ありませんわ、都靄様には都靄様の予定がおありでしょうし。ではまた明日学校で」
「ああ、また明日」
少し悲しそうな顔をする城ヶ崎浜を見てほくそ笑みながら、帰宅の途についた。




