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戦禍の大地に咲く百華  作者: 大洲やっとこ
第一部 傷に芽吹く火種
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第21話 別の道



「……逃げられちゃいましたけど」


 ツァリセは、北東と南西に首をぐるっと向ける。

 追っていたはずの影陋族の集団は、北東へ。

 ここらで行われていた戦闘行為で使われた魔法の当事者は、南西へ。

 それぞれ逃げてしまった。



「どうしようもねえ、だろ」

「今日のところは、確かに隊長の言う通りです」


 ビムベルクの足元に転がる汚らしい青年。

 いや、汚らしいのではない。汚い。

 所々破れた服もひどいが、臭い。


 何十日も浮浪者をやっていたとしても、糞尿を着衣のままする必要はなかっただろうに。



(……あったのか?)


 事情はわからないが、とにかく悲惨な様子だ。

 スーリリャもその青年を見て顔を顰めている。



「これが……その、噂の勇者なんですかね」

「そう呼ばれてたな」


 噂とはずいぶん違うが、噂を鵜呑みにしてはいけないということか。


 ビムベルクも、場所によっては高潔な英雄騎士だと思われているという。

 西部での話だ。


 現在このカナンラダ大陸にいる英雄は、ビムベルクの他にもう二人。そのどちらも西部では割と悪い方向で有名なので。


 西部はルラバダール王国の勢力ではない。別の国の勢力下ではビムベルク本人の人柄は知られておらず、武名による噂だけでは聖人君子で騎士の鑑なのだとか。



(それにしても、若き勇者シフィークねぇ……)


 今の姿を見れば、狂犬だとか蛮闘士だとか、そういう呼び名の方が似合っているのではないかと思うのだが。


「確かに、勇者と呼ばれるだけの力はありそうでしたから、本人なんでしょうね」


 素手で大地を大きく抉るような攻撃が出来る冒険者は少ない。いても困る。

 見れば、十数人を埋められそうなほどの穴が出来ている。

 ちょっとした噴火口跡だ。



「この人……怖い、です」

「おお、そうだな。ツァリセ、縛り上げとけ」

「触りたくないなぁ」


 上司にやれとも言えないし、婦女子にやれとも言いにくい。

 たとえそれが奴隷のはずだとはいえ、上司のお気に入りの女の子にそんなことをさせられるだろうか。


 渋々、荷物の中の縄を手にして気を失っている汚勇者を拘束する。

 もともと影陋族を捕える可能性もあったので、縄の準備はしてきたのだ。



「わかってると思うが、半端にすんなよ」

「わかってますよ。英雄ビムベルクでも動けないくらいにしときます」

「そいつぁ無理だろ」


 人間の体というのは、力を込めやすい体勢と入れにくい向きがある。


 暴れようとしても筋力を発揮しにくい形に固定してしまえば、英雄ビムベルクとて捕らえられるのだ。

 戦闘力以外にツァリセが買われるのは、こういった雑事が得意な点だった。



 上位の冒険者でも抜け出せないような形で、それを二重に、三重に、さらに重ねて。


「……お前、しつけぇなぁ」

「慎重で入念で丁寧なんです」


 万全の上に万全を重ねて、足首さえまともに動かないくらいに固定したところで満足してみた。


「ふう」

「……縛るの、慣れていらっしゃるんですね」


 また間違った評価をされている気がする。


「ここまでしておけば、隊長でもなければ動けないでしょう」

「お……おう」


 ビムベルクの顔色も暗い。

 ツァリセがビムベルクの副官に据えられている理由を察したのだろうか。



「それで……」


 この後どうしようかと額の汗を拭いかけて、言葉を止めた。

 思わず、言葉を失った。


「……」


 自分の手の臭いを嗅いでみる。


 指の間に、爪に、袖に。

 糞尿の臭いと何か腐ったようなそれらが染みついていた。



「……川まで行きましょうか?」


 一歩、二歩と、ツァリセから距離を取りながらスーリリャが提案する。

 なぜ逃げるのか。さっきはこの手とその手をつないでいたじゃないですか、と。


「……僕はこのままでもいいですよ。いいんですよ」

「いや、わりい。臭すぎて俺が無理だ、川で洗え」

「誰のせいですか」


 汚物扱いをする上司に噛みつきながら、ぐるぐるに縛り上げた汚勇者を引きづって川へと向かうのだった。



  ※   ※   ※ 



「うーん、まだ臭い気がする」


 どれだけ洗っても臭いが取れない。

 むしろもう一体化してしまった気さえする。


 臭いの元である勇者も、川の流れに浸けておいた。

 縄でぐるぐる巻きにしているので洗えないが、とりあえず水で臭いが多少は落ちるではないだろうか。


 

「うぅぅ! むぅぅぅ!」


 目を覚まして呻いているが、とりあえず無視。

 命があるだけでも感謝してほしい。これだけ臭かったら殺されていても仕方がなかったのに。

 人間って、こんなことでも殺意を覚えるのだなとツァリセは初めて知った。



「で、これからどうします?」

「……」


 まるで事情はわからないが、他の冒険者を殺そうと暴れていた勇者を捕えた。

 これはこれで一つの成果として報告が出来る。


 任務としてここに来た以上、騎士団本部への報告は必要だ。

 報告書というのは、その内容よりも、量が大事だとツァリセは思う。

 どうせロクに読みはしないのだから。


 何も見つかりませんでしたという内容を十枚に渡って書くのは、かなりの作文能力が必要だ。

 その点、書ける事実が存在するということは悪くない。

 


「さっきの、清廊族が……」


 スーリリャが口を開いた。


「……これ以上、人間と戦ったり、殺したりするのは……しないように、話をしたい、です」


 難しそうだ。


 あの集団にいた影陋族の戦士は、戦う力がある。

 強大な力を持った魔法使いと戦い、生き延びるだけの力が。


 力がなければ、話も出来るだろう。

 なまじ力があるだけに、人間と戦えるだけの力があるから、話を聞くことをしないのではないか。



「……どっちにしろ追うしかねえ」


 おや、と。

 ツァリセは疑問に思った。

 ビムベルクなら逆の判断をするのではないかと思っていたので。


「たぶん、決裂しますよ」


 だから追わないかと思ったのだ。


 ビムベルクの行動指針はわかりやすい。

 自分が好むか好まないか、という部分が大きく左右する。

 だがそれでも、エトセン騎士団として最低限の一線は守って。


 気に入らないとはいえ、ルラバダール王国所属領内での危険行為は許可しない。

 だから取り締まる。


 逃げた連中が向かうのは管轄外の方角だ。

 このまま放置したとして、この先ならコクスウェル連合の領域に入っていくのだから、後は放置してもいいのではないかと。



 どういう理由にしても、影陋族と戦い殺すことを、スーリリャは喜ばないだろう。

 交渉の余地があるのなら試してみてもいいが、可能性は低い。きわめて低い。

 そんなことはツァリセが言い出すまでもなくわかっていると思うのだが。



「放っておくわけにもいかねえ。ありゃあ危険だ」


 もう少し先の、放置した後の始末が困難になることを危惧したのか。

 コクスウェルの問題だけではなく、後々自分たちに降りかかってくる火の粉だと。


「まあ確かに、あの魔法使いと戦えるだけの力なんて危険ですかね」

「ばか、ちげえよ」


 罵倒もセットで否定された。


「ああ、あれな……あの黒髪の女。あれもまあ相当なもんだとは思うが、そっちじゃねえ」


 思い返しながら、ぼりぼりと頭を掻いた。


「そうか、あの魔物……二角鬼馬の変異個体みたいでしたけど」


 戦う力が弱いはずの影陋族に、なぜか力を貸していた黒い馬の魔物。

 喋っていた。

 伝説に出てくるような高位の魔物だ。



「あれは確かに、放っておくわけにも……」

「っとに、お前は本当にバカだな。戦いのことになるとまるで見る目がねえ」

「ええぇ」

「ま、まあまあ」


 ビムベルクの罵声をスーリリャが宥める。

 事務仕事や雑事が得意なツァリセは、戦いのセンスという話であれば実際にあまり向いていない。

 直感的なビムベルクとはまるで違う。



「え、と、閣下? 何が危険なんです?」

「あの子供……じゃねえのかな。あの魔物の背中に乗ってたやつだ」


 そう言われて記憶を辿れば、確かにあの黒い魔物の背中には少女らしい誰かが乗っていた。

 魔物を飼い馴らしているのはあれだったのか。


「ありゃあ多分、壱角ってやつだろ」

「あ……はい、そうだと思います」


 スーリリャが頷いて、額に手を当てた。


 影陋族に伝わる昔話で、額の中心に角がある影陋族は、同じような魔物と意思疎通ができるとかなんとか。

 御伽噺だと思っていたが。



「あの魔物は、確かに伝説級の魔物だろうよ。でも、それだけなら別にいい。そういう魔物は実際に今も世界中に存在していて、それがどうこうってわけじゃねえ」


 影陋族と行動を共にしていようが何だろうが、魔物が存在する事実は変わらない。

 時にその魔物が荒ぶり、町がいくつか壊滅することがあっても。



「だけどな……あの壱角ってのが、そういう魔物まで操れるってんなら……」

「……」

「仮にだ。もしそういう魔物の中に、他の魔物への命令なんかが出来るような、そういう力がある奴がいたとしたら」



 ビムベルクの想像を聞いて、考えてみた。


 力が弱い影陋族が、大陸に生息する魔物を指揮して一斉に襲い掛かってくるなど。

 その中に、先ほどのような伝説級の魔物が数体でも紛れていたら、どうなるか。


「町が……どころじゃない。国が滅びます」

「大陸の人間全てが滅びるかもしれん」


 先ほどの魔物一匹でも、町を滅ぼすだけの力があるのかもしれない。

 そう思えば、どれほどの危機なのか。



「そこらの魔物を手懐けるってだけなのかと思っていたんだが、見ちまったからな」

「……ですね」


 英雄の危惧は、最悪の事態の想定だが。

 だがなくはない。

 現実に、あの伝説級の魔物は影陋族に味方していた。


「……勇者君のことはともかく、追うしかねえだろ」

「そう、ですね」


 人間の英雄として当然の行動。

 重苦しくなった雰囲気の中、不意にビムベルクがスーリリャの頭を撫でた。


「なぁに、こっちにも伝説を作ろうってやつがいるんだ」

「……閣下?」

「うまいこと話して仲良く平和にってなりゃあ、それが一番だ。そいつは俺にもできねえ」


 希望を、スーリリャに託す。


 あの影陋族の集団を殺さないことも、人間と影陋族が全面対決の道に進まないことも。

 この少女に。


「あ……はいっ!」


 それは儚い希望でしかないけれど。

 敬愛する主に期待をされていると、スーリリャは嬉しそうに頷いた。


 だが、ツァリセの胸中は複雑だった。



(濡牙槍マウリスクレス、持ってくれば良かったか)



  ※   ※   ※  



 東に流れる川のほとりで、先行した荷車を率いるニーレたちと合流した。

 そのまま少し休憩する。


 危険が去ったわけではないが、休息をせずに進めるわけでもない。



 ルゥナは、トワに連れられて川で洗われた。

 汚れた服を脱がされ、履いていた靴などと共に足を洗う。


 まだ全身の力が入らずにされるがままのルゥナに、トワは献身的に尽くすようだった。


 アヴィもさすがに疲労の限界を過ぎていたのか、ソーシャの背中で眠っていた。

 首に抱き着くように眠るアヴィの背中から、エシュメノが覆いかぶさるように抱き着いて眠っている。



「ルゥナ様、これを履いて下さい」

「……」


 体に力が入らない。

 呼びかけたトワを見て、口が半分に開くだけで。


「……もう少し休みましょう」


 そう言ってトワはルゥナの足を易しく揉みほぐすように擦る。


 歩いている時も、膝ががくがくと震えていた。

 トワの手が擦れると、温かい。

 少しずつ血の巡りが戻ってくるようで、その心地よさに身を任せる。



「大丈夫です、ルゥナ様。もう大丈夫」


 優しく語り掛けながら足を擦るトワの手が、少しずつ上に上がってきた。


「……ありがとう、トワ」


 その手を止める。


「まだ疲れているのでは?」


 止められた手とは反対の手を、ルゥナの胸の辺りに添えて顔を寄せた。

 雪のように白い肌と、銀が揺れるような灰色の瞳。


 うっすらと色づく唇が寄せられて――



「もう大丈夫ですから」


 その唇に指を当てて、押し留めた。


「そうですか」


 その指に吐息を吹きかけるように答えて、ふいっとルゥナから離れる。

 油断のならない子だ。



「さあ、ルゥナ様。これを着て下さい」


 そう言って着替えに持ってきた下穿きを、ルゥナの足元に構える。

 穿かせてあげますよ、と。


「……自分で出来ますから」

「遠慮しなくても」

「出来ますから」


 残念、というように口を尖らせつつも、楽しそうに下穿きをルゥナの手に収めていく。


 こんな状況でもめげないというか、なんというのか。

 勇者に恐怖して自失、失禁してしまった自分が情けない。


 とりあえず新しいそれを穿きながら、少しだけトワの態度に心が癒されてしまうことに複雑な想いを抱かざるを得ない。


(下心があったとは思いますが)


 それでも、助けてくれている。


 こんな自分を慕ってくれるのは、やはり最初の口付けの衝撃からだろうか。

 失敗だったかもしれない。


 そういう衝撃的な出来事というだけなら、時間を置けば冷めるだろう。

 ただの一時の気の迷い。そういうことで。




「みんな、大丈夫ですか?」


 ミアデとセサーカは、木の影で二人寄り添って眠っていた。

 わずかな時間の休息でも、眠りに落ちてしまうほど疲弊している。

 あちこちに擦り傷も見える。起きたらもう一度体調を確認しよう。


 ニーレとユウラは先行していた為、少し余裕がありそうだった。

 二人で後方の警戒をしているが、今のところ敵の気配はない。


「ものすっごい爆発の音と振動だったから、心配しました」


 ユウラが言うのはマルセナが使った魔法の衝撃だろう。


「地響きで鳥なんかは全部逃げてったよ」


 激しい戦闘の様子は伝わっていたらしい。

 ニーレもトワが心配だったというが、妊婦や赤子を置いて戻ることも出来なかった。

 彼女はトワとユウラを妹のように見ていて、三者の中では責任感が強い印象だ。


 とりあえず全員が無事。

 勇者を含む人間と遭遇して、この結果は上々と言えるだろう。

 ただ――



「この川沿いでは、東に向かってしまいますね」


 逃げ延びた方角は、山脈沿いに東に向かっている。

 山越えのルートというのがあるわけではないが、本来進みたい方向とは異なっていた。

 この川沿いは、やけに周囲の見晴らしがいい。木々も少なく進みやすいのは確かだが。



『雨季になると水かさが数倍になる。今いる辺りは水に飲まれる』


 かなり平坦で進みやすいと思ったら、川の流れにより出来た地形なのだとソーシャが説明してくれた。

 心を読んだわけではあるまい。ルゥナが辺りの地形を見ていたことに気が付いたのか。



「アヴィを、ありがとうございます」

『……事情がエシュメノと通ずる。見殺しにするにはいささか似すぎている』


 人間に追われ、魔物に育てられた少女。

 確かに似ている。同じだといってもいい。

 背中で重なって眠る二人に、伝説の魔物も思うところがあるようだった。



「ルゥナ様、誰かが……」


 ユウラが指を指すのは、北だった。

 敵が追ってくるのなら西側だと思うが、川を挟んだ北を指差す。


「敵、ですか?」

「どう、でしょうか……素人のような気配ですが、数名……」


 対岸に現れた姿に見覚えがあることに驚く。

 清廊族。ルゥナたちが以前に解放して北の山脈に逃がした同胞だった。



「ああ、あんたたちだったか。良かった」

「あなたたち、どうしてここへ?」

『私だ』


 ルゥナの疑問にソーシャが答えた。


『ニアミカルムは越えられぬ。もうずっと真なる清廊の魔法で閉ざされたままだ』

「真なる……?」

『姉神の魔法だ。本来、このカナンラダを覆っていた魔法だが、今はこの山々に限りその力が残っている』


 山を越えられない。

 ただ険しいというだけではなく、別の力によって。



「ああ、その……魔物さんにそう言われて、川沿いに東に行けって」

『私も黒涎山の異変を確認したいところだった。偶然、山を目指すこの者たちに会ったのでな』


 エシュメノと同じ清廊族ということで、話を聞いて助言をしたのだと。


「でも、このまま東に向かっても……」


 今度は断崖で北部に向かえなくなる。

 ルゥナの不安に、やはりソーシャは答えを返してくれた。



『アウロワルリスは越えられる。いくらか方法がある』


 東の断崖の呼び名を、西部生まれのルゥナは初めて聞いたのだった。



  ※   ※   ※ 



 気づかれていない。


 彼女は油断していないつもりだったかもしれないが、油断も隙も多すぎだ。

 完璧そうに見えて、そういう隙だらけの彼女が愛おしい。

 その迂闊さが可愛らしいし、それでも強がる姿もたまらない。


 今日は最高だ。

 彼女が私の手に引かれるがまま、逆らうことなど考えもできずに従ってくれた。


 粗相をしてしまって汚れた足も、私から見れば汚れなどとはまるで思わない。

 なんて愛らしい姿なのだろう、と。



 状況さえ許せばどこかに連れ出して襲いたいと思うくらいに。

 ああ、私を飼っていた薄汚い人間も、こういう感情を抱いていたのか。


 私は違う。そんな己の情欲ばかりに囚われるのではなくて、彼女のことを心から案じている。


 愛している。

 だから何でも許せる。彼女の言葉も行いも何もかもが許せる。

 私の意に沿わないことでも、彼女がそれを望むのなら喜んで従う。



 だが今日は良かった。最高だ。

 彼女の方が私に盲目的に従う姿に、状況も弁えずに胸が熱くなった。体の芯から熱くなってしまった。

 汚れた彼女の服を脱がせて川で洗っている時など、何度も眩暈がするほどの至福の絶頂だった。


 ずっとこうしていたい。

 危険がまだ遠くないことはわかっているけれど、正直な気持ちだ。



 手の中には、温もりはない。

 湿った感触だけ。


 ちゃんと回収した。回収した。手に入れた。

 彼女が身に着けていたものを。

 


「ああ……ルゥナ様……」


 気づかれていない。私がこれを手にしていることに気付かれていない。


「今は、これで我慢……」


 いずれは彼女の全てを手に入れたいけれど。

 今は、これで我慢しなければ。


 手の中の衣服を大切に握り締めて、愛する彼女の匂いを満喫することだけが、今のトワが手に出来る愛の断片だった。



  ※   ※   ※ 

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