第7話ーククルカンー
感想評価ありがとうございます‼︎
近いうちにキャラクターの個人設定を出せればなと思ってます。
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第1章
第7話
ーククルカンー
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ーーー神の使徒ククルカン。
神話の時代にはそれなりにチカラを持ち、神の兵として神に仕えたとされる生物である。
まあ、今は昔の話であり、神話の時代に持っていたとされるチカラは時代の流れと共に徐々に失われ、ただの動物になった個体が多いそうだ。それこそペットになるほどに。
加護といったものもその一つであり、今回のことは生物学的神学的にみても大変貴重な出来事らしい。
ーーーというのが篠暮さんの説明であった。いや、知らんがな。
つか、神の使徒をペットにすんなや。いや、篠暮さんに言っても仕方ないんだけれども。
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○今見商業ホール○
○【カフェ:りゅーりゅ】○
「いや、さてはて、どうしますか」
篠暮さんはうーんうーんと唸っている。隣に座る琴美さんもなにやら考え込んでいる。
あ、なお護衛さんたちはそこらへんに立って人払いをしてくれている。
「えっと、つまりこの世界では神から加護とかが普通にあるんですか?」
近藤が篠暮さんに問う。
「多くはないですけど、最近も国教の加護を国王が受けたって大騒ぎしてた国があったくらいですから」
「ohファンタジー‼︎」
近藤は先ほどの車酔いはどっかに素足で飛んで行ったらしく、少し興奮気味で説明を聞いていた。
「神、神ねぇ」
伝説の巨人からあだ名を貰った久保竹は気まずそうである。対する夕霧は静かに話を聞いていた。
「………日本国とはもちろんの事、マア古代文明国とももめそうね」
美琴さんが真剣な表情で呟く。
「あら、それなら大丈夫よ美琴。きちんと正規の方法で買い取ったのに文句を言われる筋合いはないわ」
篠暮さんが砕けた口調で美琴さんに告げる。
「マア古代文明国をなめないほうがいいわ。あの国はかつての栄光のためならどんな犠牲をも厭わない国よ?」
「新しい指導者になってから過激な発言多いものね」
俺達は聞きたくもない政治のきな臭い話を聞きながらも、俺の膝の上で眠るククルカンの話を聞く。
大扶桑帝国が金を払ってくれたとはいえ、買った以上(つか、有無言わさず買われたのだが)ペットにする気満々である。
「一先ず明日の学校の帰りにでもどんな加護か確認に行きましょう」
「わ、分かりました」
「日本国の担当官にも報告しないといけないわね。 ああ、絶対モメる」
美琴さんが頭を抱える。
「あら、神からの加護は祝福しても非難されることではないわよ?」
「国教が強い場合は話が違うでしょ?昔は国の宗教と違う神の加護が与えられたら弾圧されたこともあったんだから………」
怖い話してるぅ(ガクブル)。
「そういえば、日本国の国教はどんな神を信仰しているのですか?」
「その、言いにくいんですが………日本には信仰の自由が認められていて、特定の国教が無いんです。強いて言うなら神道なんですが、あまりよく知らなくて………」
「「え?」」
篠暮さんと美琴さんが固まる。
「えーっと、説明しにくいんですが、日本には【八百万の神】というのがいらっしゃいまして」
「「八百万⁉︎」」
「日本ではすべてのものに神が宿るとされておりまして………例えばこういった」
俺はティーカップを持ち上げる。
「我々が普段使っているものでも、大切に何年何十年と使い続ければ【付喪神】というものになるとされています」
「独特の考えですね………」
「確実にこの世界には無い考えね。流石異世界の国ね」
思わぬところでカルチャーショックである。
近藤が俺の耳元でささやく。
「というか、日本政府からの説明がなかったってことは………」
「知らなかったか、知らなくても問題ないと判断されたかだな………ネットに情報が出たら確実に祭りだぞ」
予想というか確実にそうなるだろう。スレとかで『留学して気付いたら蛇の加護受けてた件についてww』とか上げたら大変面白いことになるであろう。
「というか、氷室ニキ体調とかに変化は?」
「特には無いな。食欲もあるし」
そう言って、さらに置かれていたクッキーを口に運ぶ。
「うん、美味い」
「………そのクッキー色が真っ青だけど?」
「けど美味いぞ?」
モグモグとクッキーを噛み砕く。食べたことのない味だが、甘くて美味しい。
「どちらにしても今日はもう帰るしかないですね。思ったよりも目立ってしまいましたし………」
店員さんのお姉さんも笑顔が引きつってたからなぁ。
「あ、そういえば」
久保竹が声を上げる。
「ここもそうですけど、大扶桑帝国に入ってから日本人以外で男の人を見てないんですが、何かあったんですか?」
「「「え?………あ⁉︎」」」
思い返すと確かに空港から今の今まで扶桑人の男性を一度も見かけていない。さらに言えば琴美さんの父親にも会っていない。
「ダラニキは変なところに気付くな」
「え?そう?何気にずっと気になってたんだけれども」
篠暮さんと琴美さんを見ると………びっくりした表情をしていた。
「………日本政府から説明はありませんでしたか?」
「無かった………よな?」
久保竹が俺達の顔を見る。
「うん、確か基本的な海外での注意事項とかの話だけだったと思うよ?」
「それくらいだったと思うけど」
篠暮さんと琴美さんが頭を抱える。
「日本政府ぅ………」
「あ、やばい、お腹痛くなってきた」
なんかヤバそうな………。
「ダラ、謝ったほうがいいんじゃ………」
「え?そうなの?」
「いえ、大丈夫です。 説明します。というか説明しないと危険です」
「「「「え?危険なの?」」」」
一体どういうことなのだろう。
「日本の男女比率はほぼ1対1と聞いていますが、この世界では世界平均で男性1に対して女性32.5人に落ち込んでいます。大扶桑帝国の男女比率もほぼ同様の数値です」
「「「「ゑ?」」」」
what?今なんて?
「そのため男性は基本的に学校にも通わずに、それぞれの家庭の中で大切に育てられます。基本的に家の外に出てくることはかなり珍しいです。なので今回の外出もそれ自体でかなり目立っています」
「「「「おっふ」」」」
悲報。大扶桑帝国の男は引きこもりニート。
なんて羨ま………妬ま………恨めし………なんて言えばいいんだ?
「というわけで恥を晒すようではありますが、国内でも男性が女性に襲われる被害もそれなりにありまして………」
「なるほど、それでこんなに警備が厳重なんですねぇ………」
確かに、空港から今の今までほぼ軍人が警備に当たっていた。大扶桑帝国からしたら客である留学生達に被害を出させる訳にはいかなかったってことかな?
「一先ず今日は帰りましょう」
「「「「はーい」」」」
俺達は来た道をUターンし、真白家に向かった。
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エンド
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