第6話ー蛇のー
今回は異世界の動物を出してみました。展開的にokなら昆虫や魚類も出してみたいところです。
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第1章
第6話
ー蛇のー
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○大扶桑帝国○
○【帝都:扶桑】○
○車内○
「ーーーというわけで、ここが大扶桑の中心部であり心臓である帝都扶桑なのです」
篠暮さんが解説してくれる。説明によるとここは首都であり、国名の由来にもなった場所らしい。
うん、分かりやすい説明だが一つ問題があった。
「うっぷ」
「大丈夫か?近藤」
俺の隣に座っている近藤が青い顔をしている。走り出して数分してからずっとこの状態である。
「(まあ、仕方ないか)」
実は今乗っているのは大扶桑帝国の車で6人乗りのジープもどきなのだが………めっちゃ揺れるのだ。日本の車と比較にならないほど揺れるし、道路も結構凸凹していて酔っても無理もない状態になっている。
しかし、大扶桑組は慣れているのか平気な顔をしている。
なお、この車のメンバーは日本組が俺と近藤。大扶桑組が篠暮さんと護衛3名が乗り込んでいる。
「(やっぱり、科学技術は日本の方が優秀そうだな)」
飛行機やこの車で思ったが、この大扶桑帝国は日本と比べると科学技術が低いようだ。
「(っと、それどころじゃない)すみません、どこかで休憩できますか? 近藤が酔ったみたいでして………」
「えっ?それは大変だ」
運転手の護衛さんが、周囲を見渡す。
「篠暮さん、あそこなんてどうでしょう?」
運転手の護衛さんが篠暮さんに提案する。
「予定とは違いますが、氷室君達も物入りでしょうし………いいですね、寄って行きましょう。後続車にも伝えてください」
「はっ‼︎」
違う席にいた護衛さんの1人が、膝に乗せていた通信機を動かして通信を始める。随分と面倒そうだ。
「………こう見ると、携帯電話って便利だったんだな」
「うっぷ」
そうして着いたのは………。
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○語りside○
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○【ショッピングモール:今見商業モール】○
今見商業モールは言ってしまえば広いショッピングモールであるが、イベントも多く、さらに言えば"日本の男性アイドルや芸能人の商品をいち早く入荷"したために、記録的な集客記録を残した今一番ホットなショッピングモールと言える場所であった。
ーーーなお、未だに日本製品は多くなく、入荷した商品も少量であったために熾烈な争奪戦が行われ、初入荷した日には病院送り2名、病院に行かないまでも軽傷者28名という犠牲が出た。
店側も入荷数を増やそうとしたり対策をしているが、やはりまだまだ貿易が始まったばかりの現在では商品数が限られてしまうのが現状であった。
「ねぇ、あれ」「そう、よね?」「え、嘘」
そんなショッピングモールにいた客店員達は一つの集団を見ていた………いや、その集団の中心を見ていたというべきか?
「これが扶桑のショッピングモールか」
「広いね?」
「近藤君大丈夫?」
「な、なんとか」
4人の青年達が軍服姿の女兵士達に囲まれショッピングモールの中を進む。
1名少し体調が悪いようだが、青年達は気になったらしい店にちらっと視線を向けながらもショッピングモールの中を進む。
「あれって、ニュースでやってた」
「ああ、あの男性王国日本の‼︎」
ざわめきが大きくなってゆく。
それも仕方なかった。なんせ現在進行形で男性減少化社会真っ只中である。そもそも男を実際に見る機会もめっきりなくなった現代で、ここにいる彼女達は初めて男を実際に見たという人も少なくなかったのだ。騒ぐなというのが無理な話なのだ。
さらにいうのであれば、この世界の家庭では父親がいないなどざらにある話であり、王族貴族政府の高官でもない限り父親のいる家庭の方が確実に珍しかった。
つまるところ、兄弟でもいない限りは男を見る機会は無いに等しかった。
「な、なんか見られてないか?」
「軍人と一緒だからじゃないか?」
青年達が進む中、話しかけてみたいが軍人に囲まれているせいで話しかけられない客や店員達が遠巻きに青年達を見る………異様な光景が完成していた。
「というわけで、休憩ついでに足りなくなるかもしれない生活用品をここで買います」
「え?財布持ってきてない………うっぷ」
「こ、近藤君⁉︎」
ヘッドホンを首にかけた青年が少しばかり青い顔で呟く。
「国から準備金1人3万を預かってきてますので大丈夫ですよ?」
クスリと女性が笑みを浮かべる。
「「「「えっ………?」」」」
青年達が固まる。
「あ、そ、そうなんすか………」
巨大な体を持つ青年が苦笑いを浮かべる。
学生にとって3万どころか1万でも大金である。それをポンと渡されても警戒してしまうのは当たり前であった。
「でも、出国前に買い込んでますので………」
「そうですか? なら何か他に欲しいものはありますか?」
青年達は顔を見合わせる。
「………なら」
優しそうな青年が右手を挙げた。
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○【ペットショップ:新見動物店】○
「「「「oh………」」」」
ペットショップの中で、青年達は思わず呆然としていた。
ーーー何せ彼らが見たことのある生物がまるでいないのだから。
「あの星型の真ん中に目のある生物は………?」
キリスト教徒とかが見たらとある悪魔の名前を叫びそうな生物を指差す背の高い青年………というか久保竹。ついでにその生物はふわふわと浮いている。
「【星目】という生物で、目に見える部分が口です。果物を食べるおとなしい生き物ですよ」
と、女性こと篠暮が答える。
「あの玉ねぎに4本の棒が生えたような生物は………?」
と、首にヘッドホンをかけた青年こと近藤が問う。
「【木卵】ですね。アトランティス原産の生物で元は食用ですがペットとしても人気が高いですよ?」
「へ、へぇ」
近藤はその生物をじーっと見る。なにやらもぞもぞしていた。
「あの、骨のネズミみたいのは?」
と夕霧が骨だけのネズミ?らしきものを指差す。骨だけのネズミ?はチュ?と言わんばかりに首を傾げている。しかし、骨であるためにそれくらいしか感情を読み取ることはできない。
「おや珍しい。これは【骨鼠】の子供ですね。白銀連合王国の辺境の島にしかいない鼠でかなり希少なんですよ。あ、本当の体は完全に視認できないだけで触ればわかりますけど本体はありますよ」
「え?あれで子供?」
夕霧が恐る恐る見る。 すでに人間の赤ちゃんぐらいのサイズである。大人サイズを考えればそのサイズは………。
「oh………マジか」
ふっと、そういえばギネスとかどうなるんだろうと夕霧は考えていた。
「えっと、あの、俺の足に絡みついてるこの羽根付きの蛇は………?」
氷室が足に絡みつく蛇を指差す。その蛇には天使のような羽根が付いていた。
「かなり貴重な生物ですが、というかここにいること自体不思議ですが【羽毛もつ蛇】ですね。【マア古代文明国】原産でかなり気性が荒いはずなのですが………懐いたみたいですね。餌は果物ですし、飼ってみますか?」
「いや、流石に連れて帰れないですし………」
帰国後の責任が取れないために、氷室が断ろうとするもククルカンは絡みついて離れない。絞め殺そうと疑いそうになる絡みつきだが、甘絡みと言えばいいのか、痛みの発生しない程度の絡みつきであった。
「おや、その手の模様………」
「え?」
氷室が右手を見ると手の甲に2匹の蛇が絡み合っているマークが浮かんでいた。
「あーなるほどなるほど………これはマズイ」
「え?」
氷室は冷や汗を流す。
「その………ククルカンは【神の使徒】とも呼ばれていまして………その、どうやら【神の加護】に類似する加護を与えられたようですね」
「神の加護⁉︎ そんな非科学的な⁉︎」
その瞬間篠暮の脳内ににうん?と疑問が浮かぶ。
「そういえば、氷室君の信仰している宗教は何ですか?ククルカンから加護を与えられるということは似た神話を持つ神なのですか?」
「え?いや、俺宗教信じてないんで。強いて言うなら神道になる、のか?」
「え?」
「え?」
すれ違いに両者が気付いた瞬間。蛇のマークは溶けるように消えていた。
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○語りside END○
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エンド
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紹介されなかった生物
○針貝:はりかい
ヤドカリみたいな見た目で、しかし足の先全てが針のように鋭く硬い。ついでに言うならハサミはドリルみたいになっている。怖い。
一応陸上生物。動きが鈍い(獲物にドリルを刺す時以外)ので大きさ的にも異世界版リクガメと言っていいかもしれない。大扶桑帝国南部原産。なお、毒はない。