第3話ー異世界の思惑ー
区切りの問題で少し短くなってしまいました。申し訳ありません。
ストーリーを修正したため冒頭が変更になりました。
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第1章
第3話
ー異世界の思惑ー
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○語りside○
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大扶桑帝国が存在する惑星【青星】は、地球と比べると少し大きい面積を誇る有人惑星である。
そんな星の【東方海洋】と呼ばれる海域に現れた日本国であったが、その四方には海を挟んでいくつかの隣国が存在していた。
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○【アトランティス共和国】○
アトランティス共和国は人口約2億5千万人を有する巨大民主主義国家の大国である。
強大な軍事力と工業力を持ち、地下資源もそれなりに豊富であった。その証は世界最大級の経済と青星で最も影響力のある国という形で現れていた。
なお、日本とは2番目に外交的接触を行なった国であった。
そんな国の政治の中枢………などではなく、高級レストランの個室で、1人の老婆と若い女性がスーツ姿で話し込んでいた。
「ーーー今回は完全に出遅れたわね」
老婆はステーキをナイフでスライスしながらぼそりと呟く。
「はい、大扶桑帝国は密かにこの計画を進めていたようです。気付いた時には既に………。日本政府も今回の件で様子を見る気らしく我が国への派遣はすぐにとはいかなそうです」
若い女性はチラリと机の上に置かれた新聞を見る。そこにはデカデカと一面に『日本国学生団、大扶桑帝国に留学か⁉︎』『日本人留学生団の7割は男子学生かっ⁉︎』『出遅れたアトランティス』と日本人学生達の留学を伝えている。
実は日本人学生の留学は大扶桑帝国の要請で両国間で密かに、そして厳かに行われていた。その結果は青星に存在する国家に衝撃を与えた。ネットやマスコミの間ではこの衝撃のことを【留学インパクト】と言うらしい。
各国は慌てて日本から留学生を引き出そうと交渉に当たったが、日本政府としては大扶桑帝国への留学でこの世界での留学について様子を見る気であり、その結果を見てから他国への留学も検討するつもりであった。
「日本は文化的には大扶桑帝国に近いそうだけど。しかし、大扶桑帝国とは違い民主主義国家でもある」
老婆は薄く切ったステーキを口に運ぶ。
「それについては日本を調査している部署から報告があり、日本は天皇制と言われる独自の民主主義体制をとっているようです」
「天皇制?帝政なの?」
「分かってない事も多いですが、日本では皇帝は国家の象徴であり、日本人の模範となるのが皇帝らしいです。皇帝に権力はなく、象徴的意味合いでのみ存在しているとのことで………それ以外は民主主義のようです。皇室が存在する民主主義国家という事らしいですが………」
「民主主義か帝政かよく分からない国だこと………しかし、日本には是が非でも我々の影響下に入ってもらう必要がある。そしてもっと親密になる必要がね」
老婆は机の上にナイフとフォークを置く。
「どの陣営もどう動くか分からないわ。一先ず留学生の件の交渉は貴方に任せるわ………しかし、こう考えると中立的だった大扶桑帝国が初接触国だったのは救いだったかもね?」
「ええ、全くその通りです。特に【コミュンテルン】だった場合が恐ろしいですね」
「そうね、それも問題ね。諜報員達に連絡して日本への他陣営諜報員をシャットアウトするようにして」
「はい、"大統領"。全ては共和国の為に」
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○【黄巾人民連邦共和国】○
黄巾人民連邦共和国はかつて【モーウゴル連邦帝国】と呼ばれる大国が存在した国家である。
モーウゴル連邦共和国は人口約4億2千万人という巨大な人口と、その人口を受け入れられるだけの領土を持つ国家であった。
しかし、とある事件がきっかけで内戦が勃発し、【レオニアン・レオス】と名乗る革命家により共産主義国家である黄巾人民連邦共和国を樹立した。
内戦で国土は荒れ果て、約4億2千万人もの人口は約3億4千万人までに減った。
だが、彼女らは再び立ち上がり、周辺諸国を共産主義国家にしていった。時には武力で。
その結果として黄巾人民連邦共和国は世界第2位の国として返り咲いた。
そんな国の政治の中枢にして、国家代表たる第一書記長の部屋で、怒号が飛んでいた。
「クソっ‼︎また出遅れたぞ‼︎」
人民服と呼ばれる服を着た中年女性が己の金髪の頭を抱えながら叫ぶ。
「原因を報告いたします同志第一書記長。現在我が国のスパイは日本に直接潜入できておらず、大扶桑帝国にも浅い部分までしか入り込めていないためかと思われます」
若い女将校が原因分析を行った結果を報告する。
「そちらの面でも出遅れたということか………」
黄巾人民連邦共和国は諜報戦という部分で他国から比べると遅れた国家である。何せ帝国時代の諜報網は国家崩壊により消滅してしまったのだ。最初から作り直せば諜報戦後進国となってしまうのも自明の理であり、仕方ないことであった。
「しかし、日本にも同じ思想を持つ同志はいるようです。うまく革命に繋げれば我が国の人口問題も………」
「そこは言うな。分かってるから」
黄巾人民連邦共和国は3億4千万人と言う人口を誇るが、その内情というよりも男女比は他国と比べるとはるかに危険なラインまで下がっている。何せ男女比1対32.5どころか40までいっているのだからその差は歴然としている。
共産主義の名の下で男性の共有化など非人道的政策をとった事も理由の一つとされる事も多い。実際モーウゴル連邦帝国崩壊後、黄巾人民連邦共和国になってから男女比格差は広がり続けている。さらに内戦で暴徒化した人々により男性に被害が出たことも大きかった。
なお、現在の第一書記長になってからはそういった非人道的政策は見直され、取り消された。
「日本と何としてもつながりを作らねば………急ぐのだ。何としてでも日本を我が陣営に………」
「はい、同志第一書記長」
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○【白銀連合王国】○
白銀連合王国はかつて全世界の海を統べたと言われるほどの超大国であった。しかし、大きな戦争と植民地が次々と独立を果たした事により、影響力世界3位、軍事力世界3位、経済においても世界3位と、現在坂道を転げ落ちている国家でもある。
しかし、人口男女比は1対32.5よりも良い1対28という世界トップクラスの男女比高水準の国でもある。
ーーーそして、世界に名を轟かせるほどの諜報大国であった。
「………何とか間に合ったということかしらね?」
白銀連合王国のとある場所にある花畑の中、白い机にティーカップを置き、白い椅子に腰をかけたワンピース姿の少女が微笑みを浮かべる。
「はっ、何とか留学計画に一枚噛めました」
その花畑の中、騎士のような鎧を着た女騎士が膝をついたままこうべを垂れ、少女の言葉に答える。
「それにしても扶桑もよく考えたものね。日本への印象操作に留学生を使うなんて………」
「子供とは価値観などを育成する時期でもあります。その時期に良い印象を与え、後々移住したいと思うほどの国として認識してもらう。第2の故郷として扶桑を刷り込む………普通ならばそんな都合よくいくわけがありませんが、現在の日本の状況を考えるに………」
日本は友好国を文字通りすべて失った。頼る国もなく、頼れる国もなく、知ってる国もなく、知ってくれている国もない。だが、もしもそんな中で手を差し伸べてくれる国がいるなら?その国への友好度はどうなる?
「しかし、その計画は我々白銀連合王国の諜報部の知れるところとなった」
少女はティーカップに入った紅茶に口をつける。
白銀連合王国はその強大な諜報能力で、発表寸前で日本人留学生計画という情報を捉えていた。そして、滑り込みに近い形で介入することに成功していた。
「扶桑は最近でこそ疎遠ではあるものの、白銀連合王国と同じ君主制であり、一時期は軍事同盟すら結んでいた古くからの友好国。そして、日本にも皇族が存在し、実権はないものの皇帝もいる。我が白銀連合王国、大扶桑帝国、そして日本の3カ国同盟なんて素敵ではなくて?」
「コミュンテルンと民主主義同盟、そして3カ国同盟というわけですか?」
「ええ、まあ3カ国同盟といっても我が白銀連合王国傘下の国も多いからちょうど両陣営と張り合えるでしょう」
ふっと、女騎士が何かを思い出したかのように言葉を紡ぎ始める。
「そういえば、日本のいた地球という惑星では"冷戦"という状態があったそうです。コミュンテルンと民主主義が全面戦争こそなかったものの敵対しあった時代というものがあったそうですよ」
「あら、日本のいた世界も我が世界と同じような時代があったのね」
2人のクスクスという笑い声が花畑に響いた。
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○日本国○
その頃、日本国内では討論の嵐が吹き荒れていた。
「まだよく分からない国に留学だなんて………政府は何を考えているんだ⁉︎」
「いや、しかしここで友好国との関係強化は必須。これは良い判断だ」
などと、留学の是非が国会だけでなく、民間レベルで活発化していた。
何せ未成年達を未知の国へと送り出すのだ。状況が状況とはいえ良くも悪くも多数の批判が起きていた。
しかし、政府としても色々と譲歩してくれている大扶桑帝国の要求を拒否できなかった。
ーーーこうした中、日本初の大扶桑帝国への留学が始まろうとしていた。
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○語りsideEND○
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