第2章第4話
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第2章
第4話
ー相談ー
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俺の叔父さんである勝也さんは、今の奥さんと出会う前はかなり"やんちゃ"をしていたらしい。詳しくは聞いてないが、奥さんが話し始めようとすると止めるところから、かなりやんちゃしていたのだと確信している。
そんなやんちゃだった叔父さんは、海外への出張が多く。たまにダラが旅行先で会うらしく、旅行から一緒に帰ってくることがある。
そんな叔父さんの次の出張先は大扶桑帝国だった。
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○【カフェ:息抜き屋】○
客が少ないカフェは、その人数に合わないざわつきで溢れていた。
「それにしても、緋色坊主もよく異世界の国に来る気になったな」
叔父さんが紅茶を飲みながら呟くように俺に言う。
「本来はシンガポールに留学予定だったし、この際全くの異文化に触れるのもありかなって思いまして」
「あー、シンガポールどころかどこにも行けなくなっちまったからなぁ」
叔父さんが腕を組む。なにやら考え込んでいる様子だ。
「まあ、留学の感想でも聞いておくかね?どうだ?留学生から見た大扶桑帝国は?」
「面白いですよ。ただ科学レベルが低いようですが………しかし、その分神秘がある」
「神秘?どんな?」
叔父さんが身を乗り出して聞いてくる。
「どうやら神様の加護を受けたみたいで………」
「か、み?」
叔父さんは理解できないような声を上げる。
「蛇にまつわる神様らしいです。ついでにダラもデイダラボッチの加護らしき物を受けているようです」
「ダラ坊主もかよ⁈ つか、あだ名の大元が加護を与えたのかよ⁉︎」
叔父さんが頭を抱える。
「………兄貴の奴多分知らねぇよな?」
「政府に連絡するって言ってたんで、政府から連絡が行くのでは?」
「俺はマスメディアと政治家は信じねぇって決めてんだよ」
叔父さんは懐からタバコを取り出し、同じく取り出したライターで口にくわえたタバコに火をつける。
「兄貴には俺から連絡を入れておこう。で、何か加護を受けたことで不調はないのか?」
「特には。調子がいいくらいですよ」
「ならいいが」
叔父さんが深く考え込んでいる。
「………緋色坊主。よかったら大扶桑帝国にいる間だけバイトしねぇか?」
「バイト?」
俺は聞き直す。
「ああ………正直言って家族としてもその加護とやらがどんな効果をお前に与えるか不安がある。同時に会社の人間として加護というものにも興味がある」
「ええ、構いませんよ。叔父さんなら信用できますし」
何せこの人、出張先の上司が不正やらかしたのを知って、その足で行政に告発したこともある人である。うん、叔父さん肝っ玉デカすぎない?
………ごほん、一先ずにも信用できる人なのは違いない。
「そうか。そしたら1週間後までには用意しておこう。できればダラ坊主も呼んでおいてくれ」
「了解しました」
食事どころか食後のお茶も終わった俺達は、席を立つ。
「支払いは年長者に任せておけ。甥っ子よ」
「ご馳走様です」
俺達は店を出た。
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○語りside○
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そこは古き国であった。
そこはかつての栄光を渇望する国であった。
そこは野望を隠さない率直な国でもあった。
国の名はマア古代文明国。神の時代には圧倒的文明を誇った世界に名を轟かせる大国であった国。
科学文明の発展により、時代ごとにだんだんと確実にそのチカラは失われていった。
さらに黄巾人民連邦共和国に次ぐ男性の少なさにより、人口の減少も進んでいた。
力不足により次々と国に蹴落とされ、国家の柱たる国民まで失いかけていた。
ゆえに、マア古代文明国は野心を燃やした。ズタズタにされた誇りを、踏みつけられたプライドを取り戻すために。失った地位を取り戻すために。
「我がマア古代文明国はニホンに対して宣戦布告する‼︎ マアの精鋭達よ‼︎ 我が愛しき国民よ‼︎ 我がマアはニホンを飲み込み‼︎ 新たなる世界の大国となる‼︎ 世界最強の大国へと‼︎」
ーーーマア古代文明国、日本に対して宣戦布告。
ーーー10万もの将兵と大艦隊が日本へと向かった。
完全なる奇襲。太平洋戦争でいうところであれば、日本がアメリカに行った真珠湾攻撃。日本は完全に対応できていなかった。
ニホンを蹂躙し、ニホンの男を捕らえ奴隷とする。マアの兵達にそのことに対する疑いなど微塵もなかった。
さらに言えばマアの誇る戦神の加護を受けた加護持ちが10以上も参戦していたことも、マア兵の士気向上に繋がった。
ーーーしかし、彼女らは予想すらできなかった。
ーーーいや、日本も世界すらも予想できなかった。
ーーーマアの艦隊が日本の艦隊と接触すらできなかったことを。
ーーーマアの上陸部隊の半数が輸送船と運命を共にするなど。
ーーー予想できなかった。
ーーー否。
ーーーたとえ、撃退されるとしても、あんな撃退のされ方は予想できなかったであろう。
ーーーいや、この場合はその相手が予想できなかったというべきだろうか?
ーーーそれとの遭遇はまさに彼女らにとっての天災であった。
ーーー日本にとって、それはかつて日本を救った神風であった。
どちらにしろである。彼女らマア古代文明国の苦難はここから始まった。
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○語りsideEND○
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エンド
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