第14話ー3日目ー
明けましておめでとうございます‼︎
本年もよろしくお願いいたします‼︎
ギリギリ1月1日に間に合いませんでしたorz。
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第1章
第14話
ー3日目ー
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留学3日目。それぞれ別々で動こうと決めた日。俺達は車で学園まで送迎され、学園に到着していた。
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○教室○
「(さて、そうは言ったものの………どうするべきか)」
俺はうーむと考え込む。なんせ生まれてこのかた女の子の友達などできたことがない。つまるところ女友達との距離感がわかるはずもない。
だが、この国には男が少なく、この世界の男友達を作るのは難しい。
「(話すチャンスは山のようにあるんだが………)」
ホームルームで誰も近付いて来ないが、休憩時間になれば押し寄せてくるだろう。
「(さてはて、どうしたものか)」
「氷室君」
「ん?」
横から声がして振り向くと、おかっぱ頭で背が低めの少女が小声で話しかけてきていた。
「(確か………【吉原 菜子】さんだったか?)」
なんとか女子生徒の名前を思い出していると、吉原さんが話を続ける。
「実は放課後歓迎会を企画してるんだけど、是非来ない?」
「歓迎会か。分かった。ありがたく参加させてもらうよ」
瞬間、ざわりと教室の空気が変わる。
「了解♪任せておいてよ」
ーーーこの後、まさか丸投げしたことを後悔する事になるとは。
ーーーこの時に注意を一言二言付け加えておけば。
ーーーいや、これは仕方ないことだったのかもしれない。
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○昼休み○
○学食○
「(さて、と)」
俺は食事の乗ったお盆片手に、周囲を見渡す。
「(うーん、昼食くらいはどこかのグループに入れてもらおうと思ったんだが………)」
なお、近藤と久保竹と夕霧は、それぞれ別々に行動している。
「(………混んでるな)」
食堂は人でごった返しており、座れそうな席はない。
「(皆みたいに購買部で何か買えばよかった)」
「あれ?氷室君。どうしたのぉ?」
「ん?」
声のした方を見ると、少々不良ぽい見た目の女子生徒3人組がいた。
「【百嶋 百地】。モモッチーでもいいよ♪」
不良風の女子生徒は手を振りながら答える。
「あちしは【囚印 名子】♪ よろぴく♪」
化粧の濃い小柄の女子生徒が自己紹介してくる。
「………【浪々 雪】」
物静かな女子生徒が、そばをちゅるちゅると食べる合間に、静かに端的に自己紹介する。
「氷室 緋色です。 えっと、実は席がないようで………」
「ここに座りなよ〜♪」
「あちき達の席1つ空いてるしね〜♪」
「ありがとう」
俺は笑顔で座る。
「氷室君は肉料理が好きなん?」
「どちらかというと、そうだね。個人的には豚の角煮が好きかな」
「ぶ、ぶた? かくに?」
「あー、豚自体いない感じか………猪を家畜化したもの………ああ、猪もいないかもか? こう、牙があって………」
ノートの端っこに猪のイラストを描く。
「………【ボア】、かな?え?確かに美味しいって聞くけど、あれって家畜化できるのっ⁉︎」
「ボア?似てる生物がいるのか」
ふむふむと頷く。
「………普通、ボアを家畜にしようとは思わない」
浪々さんが呟く。
「凶暴って聞くもんね〜♪山に入った人が体当たりされて大怪我するってたまに聞くもんね〜♪」
囚印さんがボアのことを説明する。
「あ〜、日本人全体的に言えることだけれど、基本的に日本人は食に貪欲で、毒ある魚でも調理して食っちまうからなぁ」
「え?毒?」
「例えば………丁度いいところに」
俺は食堂のテレビを指差す。
『………ここ最近、大扶桑帝国含め周辺海域でこのような魚が見られています。この魚は【フグ】と呼ばれる魚で、日本の転移により、日本の近海にいたフグが周辺の海域に進出してきたと思われます。
さて、実はこの魚には【テトロドトキシン】という毒を保有しており、その毒の威力は、簡単に人を殺すことのできるものです』
「あの魚、日本では専門的免許がないといけないけど、高級料理として食べてるんだ」
「「「えっ⁉︎」」」
日本料理の話で、3人と盛り上がった。
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○語りside○
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その頃、他の3人も動いていた。
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ーーー久保竹の場合。
○屋上○
「むむむむむっ‼︎」
シートの上に座る2人が向かい合っている。片方は久保竹であり、もう片方は活発そうな女子生徒であった。
「これは素晴らしいですな‼︎」
「そうだろうそうだろう‼︎」
女子生徒の称賛の声に、久保竹が鼻高々に答える。
「【泥沼戦争〜お前は誰だ〜】‼︎ 素晴らしい作品ですね‼︎」
「これが分かるとは‼︎ お主なかなかやるのぉ‼︎」
「この泥沼感‼︎ そしてラストで何も分かってない主人公がなんだかんだで訳のわからないまま生き残り、何が何だか分からないまま拳銃片手に戦い、最後に受勲される時に「お前は、誰だ?」という司令官のセリフ‼︎ これは素晴らしい‼︎」
女子生徒は久保竹のスマホ片手にヒートアップしていく。
「そうだろうそうだろう‼︎ いやーまさか扶桑にここまで映画の話しが合う人間がいるとは‼︎」
「こっちもびっくりです。まさかここまで話が合うとは………正直男性と話す機会なんてないだろうなーとすら思ってましたですからね」
「(こうなるとは思わんかったな)」
実は久保竹………軽い人見知り感があり、話しかけるのをためらう癖があった。とくに世に言うリア充と呼ばれる人種など、コミュニティ能力の高い人間に話しかけるのが苦手だった。
そこで、久保竹はあまり周囲と話している様子のない。そう、教室の角の席で本を読んでいるような女子生徒に声をかけることにした。
目の前の女子生徒はスポーツ系で、どちらかといえばリア充側の人間に見えた。しかし周囲とあまり話している様子がなかったため、久保竹は声をかけてみたのだ。
ーーー結果がこの相性の良さである。
「そういえば、自己紹介してなかったな。俺は久保竹 一馬」
「【愛野 天音】です‼︎ よろしくお願いしますです‼︎」
こうして、久保竹に愛野という友人ができた。
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ーーー夕霧の場合。
○裏庭○
「えっと、これ、は」
昼食を食べ終わった夕霧は、女子生徒の1人に呼び出され、校舎裏の裏庭にいた。
そして、目の前で眼鏡をかけた文学系の女子生徒が紙を差し出している。
通常日本ならラブレターであろう"それ"に夕霧は戸惑っていた。
「えっと、あの………何故に"履歴書"を?」
そう、それは履歴書であった。おまけに写真はもちろんのこと銀行の貯蓄額まで書いてある。
「え?普通告白の時って【婚活履歴書】出しますよね?」
「え?」
「え?」
実はこの世界のほぼ全ての国家では、告白の時に自分の価値を示すため、自分の価値をまとめた履歴書である婚活履歴書を出すのが暗黙のルールであった。通例と言ってもいいだろう。
そしてそれを受け取った男性はそれを元に結婚するかしないかを決めるのだ。
なお、近年は男性側の査定が厳しすぎると女性達の嘆きが多く聞かれるという。
「えっと、色々聞きたいことはあるけど、どうして僕を?」
「一目惚れです‼︎」
「お、おう、ど直球」
その気迫に、夕霧が怯む。
「告白ありがとうね。でも、ぼくは留学生で1ヶ月後には日本に帰ってしまう。だからお付き合いは申し訳ないけどできなーーー」
「なら友達からでも‼︎」
女子生徒がずいっと夕霧に迫る。
「(この子かなりグイグイくるな) それなら是非」
夕霧は女子生徒と握手する。
「【七曲 凛】です‼︎」
「夕霧 翼です。よろしく」
こうして、夕霧に七曲という友人(恋人候補?)ができた。
「必ず惚れさせてみせます」
「ん?なんか寒気が」
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ーーー近藤の場合。
○校庭○
校庭の端っこにある巨大な木の枝に、近藤はいた。木の幹を背にしてスマホをいじっていた。
「(………氷室ニキ達には悪いけど、正直積極的に動きたくないんだよなぁ)」
近藤は元々留学に肯定的ではなかった。国外に出るぐらいなら塾の合宿にでも行った方がマシなくらいだ。とある事情と氷室達が参加していなければ、留学などしなかっただろう。
「(まあ、ここで時間潰してるのはそれだけじゃないけど)」
「あれ〜先客だぁ〜」
「ん?」
近藤が木の下を見ると、器用に木を登る体操服姿の女子生徒がいた。
「僕【七村 志保】。よろしくね〜留学生君」
「アッハイ」
気付けば、七村は少し離れた枝で眠り始めていた。
「じ、自由人だ」
こうして、近藤に七村という知人………知人?ができた。
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エンド
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というわけで、新キャラの嵐です。はい。