18
ふかふかのベッドだった。
以前の部屋のベッドは少し硬かった。シーツも薄くて、冬は寒かった。ここの部屋は続き部屋になっていて隣の部屋が侍女部屋。何人かの侍女が交代で待機するそうだ。いつでも私の用事に対応できるように。
それを聞いたときは驚いたけど、彼女たちの話だと上級貴族ではこれが当たり前らしい。
私はベッドの中に入り、目を閉じた。
「あったかい」
シーツに体を包んで寝るとほっこりとする。慣れない旅で疲れていたのだろう。ふかふかのシーツに包まれていると自然と目が閉じて行った。
◇◇◇
「様子はどうであった?」
ダリアを使用人に部屋へ案内させたカーティスはその足でエストレア王国国王、オスニエルの元へ向かった。カーティスと同じ銀色の髪に紫水晶をはめ込んだような瞳をしている。若いころは戦場に出て戦い、今でも執務の合間に稽古を欠かさずにしているせいで武官のような体格をしている。
「ここに来るまでに常駐した医者に診せ、治療も完了しています。傷はかなり深く、酷いものでは肉が裂けているものもありました。背中についた傷跡は薄くはなるそうですが、残ってしまうそうです」
「そうか」
カーティスの報告にオスニエルは深いため息をついた。
「まさか、他国の王族の血を引く娘に暴行を振るう愚か者がいるとは思いませんでした」
淡々と報告するカーティス。王族として厳しく育てられた彼は滅多なことでは感情を露わにはしない。けれど彼の父親であるオスニエルにはカーティスがかなり怒っていることがすぐに分かった。
「向こうの王には抗議文を送っている」
ため息交じりにオスニエルは言う。
「しかし、相手は四大公爵家の一つ。政治的な問題も絡んでくるでしょうし。あまり期待できないでしょうね」
オスニエルのため息の理由を正しく理解して言うカーティスにオスニエルは苦笑を漏らした。
「せめて、ここでは安らかに過ごしてもらいたいものだ」
「そうですね」