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2−26 お前、獣人か?

 26話です!

「その髪型.....お前、獣人か?」


 桜が振り返って、


「はい?.....まあ、確かに獣人ではありますけど......」


 歯切れの悪い返事をした。

 僕もつられて返事をしそうになったが、なんとか思いとどまった。

 桜に、

『次人前で喋ったら、尻尾をコロッケにするわよ』

 と脅されているのだ。

 自分の尻尾を以前食べたことがあるのだが、結構美味しかった。

 意外とコロッケにされるのも悪くないのでは?とも思ったけど、切る過程がねぇ......やばいです。

 ので、お口チャック中なのです。


「違う、そっちの男だ!」


「ルゥゥ......ルーの事ですか?」


 ルーちゃんは街ではルールーだからね。

 言い間違いしそうになる気持ちわかるよ!

 桜が『静かにしろ』みたいな視線を送ってきたので『アイアイサー』って視線で返しておいた。

 

 今質問してきているのは、肌が褐色で髪は黒の.......気の強そうな女の人だ。

 腰に剣を持っているから、多分冒険者だと思う。

 もちろん面識はない。

 初対面の人に『その髪型....獣人か?』って聞いてきたから......絶対変態だ。

 しかも対象がルーちゃんときた.....もう救いようのない変態だ。


「僕かい?僕は獣人ではないよ」


 ルーちゃんが営業スマイルで対応する.....けど、なんか面倒くさそうな顔してる。

 この娘が放つ独特のオーラに気づいたのだろう。


「嘘をつけ!その髪型は我ら馬人族伝統の髪型でぇ!!」


 自称馬人族がふらふらしている......これ完全に酔ってるパターンだ。

 酔ってる変態に絡まれたパターンだ。

 多分僕たちの目の前にある酒場で夕飯と一緒に飲んできたパターンだ。

 この類は......やばいね.......相当面倒くさいやつだ。


「ルールー.....あなたどうにかしなさいよ」


「いやぁ........僕ってこう言う下賤の人は金で黙らせてきた人でしょ?

 あんまり金なしでの交渉は慣れていないんだよ」


 このお金持ちが!

 今はルーちゃんの札束戦法が使えない。

 ルーちゃんのお金のほとんどは別のところにあるらしいからだ。

 なら、今は適当に交渉するしか......


「お客さん!早くお金払ってくれ!」


 この馬人......ウマ子と呼ぶことにする。

 このウマ子、更に面倒くさいトラブル抱えてそうだな。

 どうせここで、


「金?そんなモノォ〜〜......ない!!」


 言うと思った。

 想像よりも豪快な言い方だったけど、たいして状況に変化はない。

 僕の予想では、


「おい、お前ぇ......お金ちょうだい」


 知ってた。

 ルーちゃんと桜すごく困ってるじゃないか......どうしてくれるの?

 あまりに唐突なことで僕に目で尋ねてきてるじゃん.....。

 ひとまず『いいんじゃないの?』って返しておいた。

 一回分の食費なんてたいしたことないでしょ。

 それに馬人族.....そのワードは気になるし。


「わかったわ。いくら?」


「銀貨1枚です」


 カハッ!.....銀貨1枚?

 それって僕の中では男一人が食べる食事100食分なんですけど.......。


「嘘じゃねぇよ!ほらぁ!」


 店主が一つの机を指差した。

 そこには間違いなく100皿以上ある皿の山があった。

 あ....これマジか。


「そ、そう......どうぞ」


 桜が大銅貨(銅貨10枚分の価値のある硬貨)を10枚渡した。

 桜の表情はなんとなく悲しそうだ.....耳がしょんぼりしている。

 冒険者でコツコツ貯めたお金を、こんなところで浪費......同情するよ。

 ウマ子にはきっちりその分働いてくれないとね。


「毎度!今度からは食い逃げみたいなことすんなよ!」


「おう!....じゃあ、解散解散〜.....」


 ウマ子が逃げようとしている。

 もちろん、


「ちょっと.....お金のお礼がまだじゃない?」


 桜が鬼の形相でウマ子の肩を掴んだ。

 あ......ご愁傷様だね.......。


「あは☆ありがとう☆」


 ゴスッ!!

 桜の渾身の左ストレートがウマ子の腹にはいり、ウマ子の意識を刈り取った。

 ウマ子は魂の抜けた顔でその場で.......マジで魂がどっか行っちゃったようだ。

 

 その後、ウマ子を拉致った☆

 通行人から注目されたが、もともと僕を連れている時点で注目されてたので、ノーカウントだ。


 



ー監禁場所.....ではなく、僕たちの宿の部屋ー


 ハムハム......ハムハム......

 ウマ子の髪の毛は結構いい匂いがする。

 僕がウマ子の髪型を舐めて整えていると、


「う....あ.......ん!?んあぁ!!化け物が(ウマ)の髪食ってる!?」


 ウマ子が起きた。


「化け物とは失敬だね。僕は髪型をいい感じにしてるだけなのに」


 いい感じに.......うんこっぽくなってる。


「しかも.....しゃぁべったぁあ!!」


 お、いいリアクション♪

 ちなみに、桜に僕がどうしても喋りたいってお願いしたら、オッケーもらえたから今は会話して問題ないよ。

 最悪強制的に僕のメンバーにすればいいって言ってた。


「ん?あのぅ.....これ外してくれませんか?」


 急にシュンとなって頼んできた。

 今ウマ子は椅子に縛っている。

 あ、勘違いしないでもらいたいんだけど、僕は拘束プレイとか趣味じゃないからね。

 別に嫌いとかそういうものでもないんだけど.......ね?.......ね?

 えぇとつまり、これはウマ子を逃がさないようにするための物であって、僕の趣味ではないということね。


「それはできないよ。君.....自分が何したかわかってる?」


「えぇ.....うぅ.....確か(ウマ)は.......」


 この娘の一人称はウマですか......。

 僕の感覚では『俺はウマなんだぜ、ぎゃっはっはー!!』とか言ってたら相当な狂人ってことになるんだけど、やっぱり獣人ではそういう一人称もありってことだね。


「....お酒を飲んで.......そうだ!お金をくれたんでした!」


「そういうこと。本当はお金を返してもらってすぐ返す予定だったんだけど.......君、お金ないでしょ.....」


 この娘一文無しだったのだ。

 

「はい......すみません.....あ!でも、どうにかして返すので、命をとるとか、奴隷にするとかってのは勘弁してください!」


 このパターンのセリフは聞き慣れたよ。

 ルティも然り、グリも然り、フェンも然りなんだもん。


「そんなことはしないよ。

 別にお金は返してもらわなくても良かったんだけど.......その.....君って耳あるでしょ?馬の.....」


 この娘の頭をいじってたのは獣人ってのが本当かどうか調べるためだ。

 案の定ケモミミ様が隠れておられた。

 桜達の猫っぽい、犬っぽい耳ではなく、なんとも不思議な馬耳だったから、ついつい舐めてしまい、我に返ったついでに髪の毛の寝癖を直してあげていたのだ。


「はい......なんかすごく.....濡れているのですが........」


「.....それを見て君が獣人ってわかったんだ」


「そうですか......ところで、どうして濡れているんですか?」


「.....僕は王で....証拠もあるよ」


 王権顕現(クラウン・オープン)をした。

 白い王冠が出現して光っている。


「あの......耳.....耳.....」


 ウマ子がずっと耳、耳って言い始めた。

 毒でも盛られたんじゃないかって顔してる。


「その.......ごめん.....我慢できなかった」


「そっかぁ.....私死ぬんだぁ.....」


 ウマ子が遠い目をしてる。

 完全に毒と勘違いしてる感じだ。


「大丈夫、ただ舐めただけだから」


「へぇ.......へ!?それならそう言ってくれ.....くださいよ!!」


「敬語は不要だよ。ぜひ敬語を使わないで話して」


 敬語要員はもう十分だ。

 ルティとか、グリとか.....その他大勢いる。


「その.....どうして舐めたのだ?やっぱり人食いなのか?」


 目が恐怖に染まっている。

 ここで『そうだよ』とか言ってみるのも面白そうだけど、かわいそうだからやめておく。


「僕は君にメンバーになってもらいたいんだ」


「メンバー?........何だ....それ?」


「はいぃ?」


 どうやらウマ子は元奴隷で、主人が死んだから自由になったらしい。

 馬人族は獣人の性質(耳、尻尾)がわかりにくいから、冒険者として暮らしていたらしい。

 でも、獣人の魔法適正の低さは致命的で、獣人であることを隠すためにパーティを組まずに頑張っていたため、苦労に苦労を重ねた挙句に酒に手を伸ばし、金を使い果たした。

 もうどうしようもなくなって、今日はお金がないのに酒とたくさんの料理を食べ、僕たちに出会ったという経緯らしい。

 僕たちがおごってくれなかったら、もう一度奴隷に戻っても構わないとか考えていたらしい。

 

 元奴隷だからいろいろ知識がなくて、メンバーとかその辺について理解できなかったっぽい。

 その辺の説明をして、優しく撫でてあげたら......


「ご主人様!」


 調教完了.....ニヒッ☆

 縄を解いた瞬間抱きついてくるレベルの調教済みだ。

 エンゲージも済ませてある完全調教だ。

 はぁ.........なんだろう.....自分がすごく間違ったことをしている気がする。

 

「ご主人様、願いがあればなんでも言え!夜通しでもなんでも付き合うぞ!」


 ウマ子が体を押し付けてくる.......。

 あぁ......その.......


「夜の......夜の遊びがお望みなの?」


「わっひゅ!?」


 ウマ子の頭から湯気が上がってる.......なんか.....可愛いね。

 夜通しお付き合いしてくれるのか......やっぱり馬並みのなんとかって言うしね。

 やっぱりすごいのかな?気になるなぁ......。

 ウマ子.....結構美人だし......


「本当に望んでるなら、付き合うけど......どうする?」


 ん!!口走った!!

 僕はルティと以外経験したことのないアマチュア.....それに、そういうことはルティにいう義務があってだな.......。

 ウマ子は......良かった....失神してる。

 いや、良くないか。

 仕方ないから介抱してあげよう。

 



「ただいま.....もう調教完了みたいね」

 

 桜とルーちゃんが帰ってきた。

 お買い物をしてたのだ。

 ウマ子の事件のせいでお昼ご飯を食べられなかった

 

「できれば....その.....調教って言わないで.......哲学とか倫理について考えちゃうから......」


 調教とはいったい何か?

 ウマ子は獣と人.....どっちに近い?

 ウマ子を攻略することは調教か?

 調教は悪か?

 ......みたいな?


「ところでルーちゃん、他の獣人のいるところにはいつ招待してくれるの?」


 ルーちゃんが集めた獣人は主に二箇所にいる。

 一方は海底都市、もう一方はこの周辺にあるルーちゃんの秘密基地だそうだ。

 そのルーちゃんの秘密基地に行きたいのだが......まだ内緒だって言われたままお預けなのだ。


「今日の夜に招待するよ.....人目にはつかない方がいいからね」


「そっか。夜が楽しみだよ。

 ところで僕のお昼ご飯は何?」


「それはね...........」


 それから僕たちは、ウマ子が起きるまで昼食を楽しんだ。



 そういえば.......ウマ子って本名なんだろう?

 まあ、そのうち聞けばいいか。

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