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1−6  ギョギョ魚

6話です!



「「.......」」


 アキラと桜は、『それ』を白い目で見ていた。


 2人にとって、これが初めての『人の死体』を見た瞬間であった。

 身長は、2メートル強、小太りの『オス(推定)』、年齢不詳。

 死因は明らか。頭部に槍が刺さったこと。

 普通なら、見た瞬間驚き、混乱するだろう。そして、慌てるだろう。

 実際、二人も驚いた。混乱もした。が、冷静だった。


 なぜか?

 二人が、死体にも感情を動かさない、鉄のメンタルを持っていたからか?

 違う。


 なぜなら、『それ』が『バケモノ』で、『魚人』だったからだ。

 

 魚人は、マグロHEAD、マグロBODY、マグロTAILを持ち、

 筋肉ムキムキで、ヒレ付きの、腕、足が生えていた。

 そして、槍で頭を貫通され、鎖で拘束され、店に吊るされていた........。


「桜さん、あれなんですか?」


「ドレノコトカシラ、ワカラナイ」


「「.........」」


 僕たちは沈黙した。

 そして無言で『あれ』を無視することに合意した。


「宿を探しちゃいましょう!」


「うん、そうね」


「ちょっとそこのベッピンさん方!見てってくれないか!安くしとくよ!」


 ミツカッタァ〜。

 魚人売りのおっちゃんが声をかけてきた。

 さすがに、無視はしちゃいけないだろう。話だけでも聞いてみよう。


「これって魚人ですよね?」


「ああ。あんた魚人は初めて見るのかい?

 まあ、俺も今日初めて見たんだがね!そこに落ちてた!」


 何?どゆこと?魚人は(ラピュTA)から降ってくるの?


「と言うのは、冗談で、川の近くに落ちてたんだ!」


 結局、落ちてたんかい!

 それより、

 

「魚人ってなんなんですか?」


 漁師のおっちゃんは、魚人について話してくれた。少し曖昧な感じだったけど。


 魚人は、人魚とは別。人魚は人に近い、魚人は魔物に近い。

 魚人は人魚の近くに生息している。

 人魚は、ある程度人権のようなものが与えられているが、魚人にはない。

 人魚も、魚人も滅多にお目にかかれない。

 ..........らしい。


「食ってみる?うまいぞ〜」


 この人、これを食ったらしい。よく見ると魚人の腹の辺りが一部切り取られている。


「いえ、結構です」


「ほれ、熱いから気をつけて」


 話を聞けぇ!

 まあ、匂いは悪くないし。断るのも失礼な感じがするし......


「........はい」


 もぐもぐ......。


「.........」


 桜がなんとも言えない顔をしてらっしゃる。

 そんな顔しないで!!

 結構美味しいから!食べる?


「あ〜ん」


 そう言って、箸を近づけたら、プイッと横を向いてしまった。

 悲しい.....けどかわいい。

 実際、魚人うめぇのに.........。

 でも、味はマグロじゃない。どちらかというと、ブリだ。

 僕はブリ派だ。


「お客さん、こいつ買っていかねぇか?

 こいつを置いておくと、お客が逃げちまうんだ。

 めったに食えねぇぞ!銀貨1枚でもいいからヨォ〜。頼むよ」


 そりゃそうだろう。こんなのが置いてあったら、客は近づかないだろうよ。

 .......何気に銀貨を要求してきやがった。

 まあ、でも、お金には、余裕があるし、後で桜に無理やり食べさせようとして、食べたくなかったら、もふもふさせろ!とか言ってみるのも面白いかもしれない。


「では、いただきます」


「助かるぜ!お姉さん!」


 ..........アイアムオトコ。


 キャリア付きの箱もオマケにつけてくれて、運ぶのには困らない。魚人はぶった切られて、箱に詰められていた。赤いケチャップがばらまかれていた。


 次は、宿......じゃなくて、服だ!服!忘れてた。

 桜が、僕の服装のことをチラチラ見ていたから気づいた。ごめんね、もっと早く察せなくて。

 忘れてるかもしれないから、今の服装を確認しよう。


 アキラ

 臭くてボロい服(上下)

 首輪(赤)はすでに外した。

 

 桜

 ボロい服(上下)  

 首輪(青)


 なんか僕のだけ臭い。理由は知らん。知らないったら知らない。

 首輪については、なんでついてるのかわからない。その気になったら取外せたらしい。街中でいじってたら外れた。桜は、奴隷という設定上外していない。

 外してみて気づいたんだけど、なんか文字っぽいのが書いてあった。読めぬ。

 僕と桜の言語能力について、今更だけど紹介する。まず、この場所(国?)の言語は聞くこと、話すこと、読むことができる。だけど日本語ではない。だから書けない。後で、学習する必要がある。

 また、一部読めない文字(首輪のも含む)がある。いわゆる外国の文字なんだろう。


 とまあ、色々紹介してるうちに、服屋です。

 看板はありません。

 でも服が置いてあるので、服屋でしょう。

 少々......いやかなりボロいです。


「あの〜、服を適当に見繕って欲しいんですけど」


 そういうと、奥から、トテトテと......


 黒くて猫耳の獣人の少女が歩いてきた。

 うぅ〜ん......黒髪ロング+猫耳獣人...........結婚したい!!

 そして、小さい、かわいい、もふもふしたい!!

 何歳ぐらいかなぁ?中学生くらいかなぁ?


「........17」


「ん?」


「........17歳」


 またまたぁ〜。見栄はっちゃって〜。そんなの通用するわけないじゃ〜ん。

 だって身長150ぐらいだよ。無理ありすぎぃ〜。


「んん〜!」

 

 怒られてしまった。

 ほっぺを膨らませて喉を鳴らしてきた。

 怒られてるのに心が和む。僕ってマゾっちなのかな?

 

 というか、さっきから心が読まれている。

 やはり獣人には高度な読心術があるっぽい........。

 まあ、いい。服を買おう。


「費用は、これで」


 そう言って金貨を差し出した。


「......!そんなに........いらない。それ、この店が、.......買えるぐらいのお金......」


 Oh.......やっちまったぜ。金貨ってそんなにスゴォイんだぁ〜。

 ルートベルト神に感謝しなくては。


「銀貨2枚........それで、上下、下着4セットずつ、.........揃えてあげる......」


「こっちの分もよろしくお願いします。地味でも、できるだけいいのを頼みます」


 そう言って桜を指差した。

 獣人の少女は、少し驚いたような表情をしていた。


「わかった......銀貨4枚、ね.......」


「あと..............」


 獣人にあった時には特別な挨拶が必要だ。


「.......?」


 獣人少女が首をかしげた。


「尻尾とかぁ〜.........耳とかぁ〜........触らせて..........エヘヘェ〜.........くれませんかぁ〜?」


 アキラは、息を荒げながら、聞いてみた。

 おっと、よだれが......。


「...........。


 ............白金貨1枚........」


 なんだ要求はそれだけか?


 スッ


 僕は、白金貨を即座に出した。


「.........!」


 少女は、驚いた。そして、僕の顔と白金貨を交互に見ていた。


「.....ぐっへっへっへ!!こちらは要求を呑みました。

 今度はそちらの番です!!」


 ぬっはっはっはッ!!僕はたとえ全財産を失っても獣人をモフれるなら悔いはない。

 少女は絶賛混乱中のようだ。


「さぁ!さあ、さぁ!尻尾を!耳を!もふもふをぉ〜!」


 僕が、にじりにじりと寄って行くと、少女はふるふると震え始めた。


「フェッ、フェッ、フェッ、フェッ...ンガッ!!」


 ゴギギギッ!!......

 桜チョップが、僕の頭に食い込んでいた。


「イタァァアイ!!」


 アキラの肉体に、999のダメージ。

 シヌゥ。死んじゃう〜!ていうか、桜チカラツヨスギィ!

 チ゛グジョウ!!反撃だ!!

 無理やり飛びついて、もふってやる!!覚悟しろぉ〜!!

 3、2、イチ.......


 桜チョップ第二射の準備が終わっていた.......。

 表情は........笑っていた.......。


「すっみませんでしたぁー!!」


 アキラは、桜と店員さんにその場でジャンピングDO・GE・ZAをして謝っていた。

 怖いもん!痛いのやだもん!

 それに次ぎ食らったら、頭割れちゃうもん!


「くすくすくす.......。なんで.....奴隷に......謝ってるの?........もう、無理...」


 そう言って、店員さんは笑い始めてしまった。別の意味で、体を震わせていた。


 アキラと桜は、顔も見合わせて......


 笑い合った。


 頭は痛かったけどなッ!!




次回、

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