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2−10 竜爪

少し久しぶりです!

10話です!

 わっちの名前はルティユ・エインダー。


 ルティユ竜族の族長をしている。

 このルティユという名前は、竜族名でもあり、固有名詞でもある。

 初代族長から引き継がれ続けているのじゃ。

 わっちは21代目ルティユということになる。

 エインダーは名字で、特に変哲もない黒龍の家系じゃ。


 ルティユ竜族は、力が最も重要視される一族で、生まれてきた子どもが一定以上の魔力を持っていることが確認されると、すぐに『王』の権利がその子どもに譲渡される。

 わっちもその条件に当てはまり、子どもの時に王になった。


 王の権利の譲渡方法は一つしかない。

 王を殺すことじゃ。

 わっちは生まれて間もない時に、一番最初に硬化する歯、つまり『初歯(ういば)』で先代の王の喉を掻き切らせられたそうじゃ。

 先代の王は、賢王としてみんなから慕われていたらしい。


 古臭くて反吐が出そうじゃが、こんなことを6000年近くも続けているのじゃ。

 そう簡単に覆せるものでもないのじゃろう。

 まあなんであれ、こうして生まれながらの王であり、竜殺しの21代目ルティユが誕生した。

 

 物心ついた頃から、いろんなことを学ばされた。

 滑空技術指南書とか、ブレス解析学とか、尻尾応用論とか......。

 読んでてイライラするぐらいにくどかった。

 そんな本が軽く百冊......殺す気かって本気で疑った。



 .......そんなこんなでおよそ32年の月日が経ったある日のことじゃ。

 

「のぅ.....ギルク.....いつものアレをやってくれんか?」


 わっちが自分の部屋の机に突っ伏しながら『ギルク』に話しかけた。


「まったく....しょうがないでヤンスねぇ.....」


 メガネ....それも瓶底メガネをかけた茶色のドラゴンが返答した。

 このドラゴンこそがギルクであり、副族長兼わっちの秘書だ。

 ギルクがバックから土を一握りほど取り出し、


「ほいやっと!」


 そんな掛け声とともに土に魔力を流し込み、土人形にした。

 人間の少女の形をしている。


「.....スーサイドちゃん.....」


「だ〜か〜ら〜.....スーサイドちゃんはツインテール!!

 この子はポニテで、名前はセルフ・デストラちゃんでヤンス!!」


 最近暇な時は、こうしてギルクに土人形を作らせて、その名前を当てるゲームをしている。

 今のところは、33回中33回外している。

 だから最近は、10回連続スーサイドちゃんと言って順番が来るのを待っているが、なかなか来ない。

 なんでかのぅ?


 ギルクは人間のカルチャーに興味があるらしく、固有魔法の『人化』を使って、よく人間の街に行っている。

 とは言っても、ここから全力で飛んでも、人間の街まで一週間はかかるのじゃ。

 だから、二ヶ月に一回ぐらいの頻度で向こうに行っている。

 ちなみに今はまっているのが、スーサイドちゃんが主役の『G(ジー)殺ガールズ』らしい。

 女の子がゴキブリを殺す話と言っていた気がする。

 ......本当に面白いのかのぅ?


 現在、わっちは巨大な木の上に作られた族長室で、仕事という名の監禁を受けている。

 族長のやることってそんなにない。

 先代の王が頑張ってくれたおかげで、族長の負担が少なくても皆がまとまった行動をとれる制度を制定してくれたのじゃ。

 だけど逆に、超暇になった。

 今すぐ外で遊びたいけど、族長としてある程度の時間は族長室にいないと、怠けていると思われて周りからの視線が痛くなる。

 12年前に経験済みだ。

 

 ゆえに、こうしてギルクと一緒に暇をつぶしているのじゃ。

 ギルクはわっちの幼馴染じゃ。

 とは言っても、ギルクの方が20歳ほど年上ではあるが。

 ドラゴンは長寿(300年ぐらい)だし、王のわっちには寿命がないし、正直20歳の差はほぼないに等しい。

 

 そして、ギルクはわっちの許嫁(いいなづけ)じゃ。

 わっちが50歳に成ったら、結婚することになっている。

 .....わっちはギルクのことが結構好きじゃ.....。


 ギルクと一緒に人間のカルチャーについて話し合ったり、村の人と会議をしたり、先代の王と親しかった竜から暗殺者が差し向けられたり......いろいろなことがあった。

 ここ10年くらいは特に何もなかったが。

 

「エインは今の生活どう思ってるでヤンスか?」


 ギルクが唐突に聞いてきた。

 わっちはエインと呼ばれている。

 ギルクが先代の王のことをルティユと呼んでいたからじゃ。

 

「ん〜.....どうと言われてものぉ〜......暇で死んでしまいそうな生活?......かのぉ?」


 わっちが曖昧に答えると、


「やっぱりそうでヤンスよね!!」


 思ったよりもギルクが食いついてきた。


「おう....どうしたのじゃ?急に?」


「いやぁ〜.....もしもの話でヤンスが、この退屈な生活が止められるとしたら、エインはどうするでヤンスか?」


「....そりゃあ.....もちろんそうしたいのぉ.....」


「そうでヤンスか.....そうでヤンスよね!!

 やっぱりエインとは気が合うでヤンス!!」


 よくわからんが、ギルクはなんか面白いことをするようじゃ。

 前にも、花火大会をやって一族を盛り上げたことがあった。


「エイン....三日後の夜、村のはずれの滝に来てほしいでヤンス」


 ギルクの言う滝とは、わっちが10歳ぐらいの頃、泳ぎの練習と称して、親に叩き落とされた滝のことだ。


「わかった....楽しみにしておく」


 わっちはあまり表情を動かさずにそう言った。

 もともと感情を顔に出すのが苦手なのじゃ。

 だけど実際には、かなりワクワクしている。


 その後、ギルクはわっちのもとを去った。

 準備があるらしい。

 三日後か.....少しは暇つぶしになるかのぉ?


 そして、仕事(仮)が終わるとすぐに、ギルクが準備とやらに出かけていく日々が三日過ぎた。

 約束の日の夜、わっちはギルクに言われた通りに、滝の近くに来ていた。


「ギルクのやつ.....遅いのぅ....」


 時間は夜としか聞いていないため、夕方ぐらいに来たのだが、ギルクの姿はどこにもなかった。

 レディを待たせるとは、けしからんやつじゃ!

 少しうじうじしながら、三角座りしていると、


 ドゴォォンッ!!


 集落の方から爆発音がした。


「なんじゃ?....また喧嘩かのぅ?」


 ドラゴンの集団ではよくあることじゃ。

 特にわっちの族は血の気が多い。

 どっちが強いかを決めるために、男女問わず喧嘩することが多いのじゃ。


「エ〜イン!待たせたでヤンス!」


 ギルクが爆発音の方向から飛んできた。

 そして、わっちの前に着陸した。


「遅い....遅すぎるのじゃ!

 『命令じゃ』そこに正座せい!!」


 わっちが、レディを待たせた無礼者に罰を与えるため『命令』した。

 しかし、ギルクは何事もなかったのかのように、立ったままの状態じゃ。


「ん?どういうことじゃ?」


『王』の命令は絶対。今までも幾度となくギルクに命令してきたが、失敗したことはなかった。

 聞き取れなかったのか?とわっちが考え始めたところで、


「実は今日、エインに『吉報』があるでヤンス!

 もうこの退屈な生活におさらばできるでヤンス!!」


 ギルクが興奮した表情で言った。


「おう、そうなのか?で、今回はどんなイベントを催したのじゃ?」


 わっちは、四日も内容を教えてもらえなかった『吉報』が気になった。

 命令の件も気にはなったが。


「今回は......『人間』に一族の居場所を教えたでヤンスよ!!」


「........は?」


 わっちは混乱した。

 どうしてここで人間が出てくるんじゃ?

 人間にわっちたちの居場所を教えた?

 そんなことをしたら、わっちたちは捕まってしまうのでは?


「その代わりの条件として、僕とエインに『人権』をもらえるように、契約したでヤンス!!」


 人権とは、人と同等に暮らす権利のことだ。

 だがそんなことより、今ギルクの言っている意味がわからない。

 人権の手にいれる?そんな話いつしたのじゃ?


「つまり、僕とエインは人間として過ごせるでヤンスよ!!」


 .....なんとなくわかった。

 

「.....つまり、一族の命を犠牲にして、わっちとギルクだけ人間の権利を手にいれる....ということかの?」


 わっちは恐る恐る質問した。

 願わくはその答えが......


「そうでヤンス!!」


 否定の言葉であればよかった.....。


「どうして......どうしてそんなことをしたのじゃ!?」


 わっちは大声を上げた。


「え?退屈な生活を変えるためでヤンスよ?

 人権さえあれば、人間のカルチャーを楽しみ放題なのでヤンスよ?」


 人権さえあれば.....か....。

 実際にはそうじゃない。

 人間の中にも奴隷がいる。

 人間であれば、自由に生きられるということではない。

 まずドラゴンである時点で、そんなことは起こりえない。

 特にわっちは王じゃ。

 なんやかんや理由をつけられて、奴隷にされる。

 百歩譲って、ギルクが人間らしく生きられたとしても、わっちは絶対無理じゃ。

 つまり、こやつ(ギルク)は.....自分のことしか考えてない。


「楽しみでヤンスね、エイン?」


 ギルクは、未来のことでも考えてはしゃいでいるのだろう....ものすごく嬉しそうだ。

 さっきの爆発音は、おそらく人間との交戦しているってことだろう。

 人間には瞬間移動の術があると聞く。

 ギルクが何らかの方法で情報を送り、わっちをここに避難させてから襲撃したってところじゃろう。

 

「はぁ......わっちは集落に向かう」


 それだけ言って、飛び立とうとすると、


「ん?忘れ物でヤンスか?」


 ギルクがとぼけた表情で聞いてきた。

 おそらく集落では、ギルクのせいで人間と竜が争っているっていうのに.....。

 わっちは、今までにない冷めた目つきでギルクを見返した。


「少し責任とか......恋心とかを忘れてしもうたのじゃ......」


 わっちは今度こそ飛び立った。

 その時のギルクの顔は、砂埃でよく見えなかったが、笑っているような気がした。



 

 あっという間に集落が目に入ってきた。

 もともとそこまで距離は遠くなかったのじゃ。

 

 集落からは、火の手が上がっているが、戦っている音が聞こえない。

 もう終わったのか?

 わっちは安心しながら、集落に近づいていった。

 わっちの一族は、竜族でも最強クラスの一族じゃ。

 いくら人間とは言っても、ここまで早く殲滅はされまい。


 しかし、視界に入ってきたのは、想像と真逆の光景だった。

 わっちのメンバーが、甲冑姿の人間に、魔法の道具で拘束されていた。

 竜の周りに結界のようなものが張られていて、皆動けないようだった。


「なっ!?」


 わっちはただ驚くことしかできなかった。

 その光景にも驚いたが、人間の姿にも驚いていた。

 白い甲冑、王家の紋章......騎士団じゃ。

 騎士団とは、人類のハイソルジャー集団にして、一人一機の空中戦艦を持つ、最強の軍団のことじゃ。

 そんな化け物が3人もいる......いや逆に、3人以外の人間がいない。

 

「なるほどのぅ.....どうやら、噂は本物のようじゃ」


 足踏みで地を割り、息ひとつで山を吹き飛ばす。

 騎士団の強さはそんな風に表されている。

 つまり、意味不明ということだ。


「ドラゴン風情が人間の言葉を真似するとは......なんと不敬....」


 そして、他種族に対する見下す傾向がめっぽう強い。


「そんなこと言わないで欲しいのぅ。

 はじめは友好的に振る舞うのが、商いのコツじゃよ、騎士の坊や」


 わっちは目の前の男の騎士に話しかけた。


「.........」


 すると、沈黙してしまった。

 ドラゴン『風情』にこんなこと言われるとは思ってなかったのかのぅ?


「わっはっは!!

 お前は語彙力少なすぎんだよ!!」


 もう一人の騎士がやってきて、沈黙した騎士の肩をバシバシ叩いた。


「黙れ、田舎者!」


 叩かれた騎士は、剣を抜き、横薙ぎに払った。


「あぶねッ!?なにすんだよ、ナイト!!」


 ん?ナイト?ああ、騎士ということか.....の?


「ナイトっていうのはこいつの名前なんだよ、ドラゴンの王」


 最後の騎士が現れた。

 3人とも男のようじゃ。

 こやつが来たってことは、わっちのメンバーの拘束が完了したってことかの?

 まあ、どっちにしても状況は変わらんがのぅ.....。


「そうか.....そろそろ本題に入りたいんじゃがのぅ....ナイトさんや」


「俺の名前を軽々しく口にするな!!」


 ナイトは騎士の一人に斬りかかりながら、叫んだ。


「.....俺の名前はアルート、今ナイトに斬り殺されそうなのがガルーズだ。

 短い間の関係になるが、よろしく頼むよ」


 最後の騎士(アルート)が自己紹介した。


「わっちはルティユ・エインダーじゃ。

 できれば末長くよろしく願いたいのぅ.....」


 わっちも一応自己紹介した。


「.....選択は二つ。

 人間の王に『忠誠』を誓うか、ここで死ぬかだ」


 ナイトがガルーズを追いかけ回すのをやめて、言ってきた。


「.....三つ目を要求したのじゃが.......」


「ない」


 わっちの願いは却下された。

 人間の王に『忠誠』か......つまり奴隷化じゃのぅ.....。

 それは避けたい。

 つまり選択は一つしかないようなものじゃ。


「......残念じゃ.....。

 ならば逃げさせてもらうのじゃ!!」


 わっちがそう言って、二つの異次元穴を前方向に発生させた。

 目くらましじゃ。

 そのまま後ろに跳び、羽を広げて離脱しようとしたが、ナイトが回り込んできた。


「逃すと思うな!」


 だから、さらに三つの異次元穴を展開し、そこからブレスを放った。


 ゴゴゴゴゴゴゴッッ!!


 そんな音ともに、ナイトとその周辺を爆破し、足止めした。

 さらに、その三つの穴を残りの騎士の方向に向け、壁代わりにした。

 異次元穴は、すべてのものを通さないという特性ゆえ、無限の防御力を誇る。

 おかげで追撃をさせずに、離脱できた。


 この一連の動きは、代々伝わる戦術書の中に記されているものだ。

 今日初めて勉強をしといてよかったと思った。



 現在、わっちは村はずれの森の上空を高速で移動している。

 おかげで、ある程度騎士と距離を取れたと思う。

 そう考えて、一安心していると、急に下から強風が吹いた。

 慌てて下の方を見ると、ギルクが爪を構えた状態で飛んできた。


「ギルク!?」


 ギルクはわっちが驚いている隙をついて、爪でわっちの尻尾を切断した。


「グウゥッ!!」


 激痛だった。

 だが、咄嗟に身を捻ったおかげで、体を切断されずに済んだ。

 完全に殺す気だった。


「エイン....ごめんでヤンス。

 エインが逃げ出した時は、捕まえるように『指示』されてるんでヤンス」


 指示されている?


「......誰にじゃ?」


 わっちが尋ねると、ギルクはニッコリと笑い、


僕の新しい王(人間の王)にでヤンス」


 そう言った。

 そして、


「なるほど....だから、わっちの命令を聞かなかったってことじゃな?」


「そういうことでヤンス」


 ますます狂気に満ちた笑顔になり、ギルクはそう答えた。


「どうしてこんなことをしたのじゃ?」


 わっちは、尻尾の痛みをこらえながら尋ねた。


「さっきも言った通り、退屈な日々を終わらせるためでヤンス!

 ルティユ竜族は掟が多すぎるでヤンス!

 集落から離れるのにも許可が必要だったり、定期的に集会に参加しなくちゃいけなかったり......許嫁が決められていたり!!」


 最後の一言を聞いた時、わっちは何も感じなかった。

 以前なら、思うこともあったじゃろうが、今は目の前の竜(ギルク)を敵としか思っていない。

 わっちだって、掟には一言も二言も言いたいことはある。

 けど、家族や、まだ幼い子ども達や、優しくしてくれた大人達を、自分勝手な理由で殺した狂人に愛情を持つほど、わっちは愛に飢えていないのじゃ!!


「ギルク.....わっちはお主が嫌いじゃ!

 だから無理にでも通してもらうぞ!!」


 そう言って、異空間穴を最大数の五つ展開しながらギルクに突撃した。


「王だからって.....調子に乗るなぁ!!」


 ギルクが叫びながら、ブレスを放ってきた。

 魔力と火炎の混じったブレスが、わっちに迫ってきた。

 それを異空間穴で防ぎながら接近し、拳を握り締めると、ギルクと目が合った。

 笑っていた。

 その顔をめちゃくちゃにするつもりで、全力の拳を叩きつけた。


「ぬぉうりゃあッ!!」

「グガアァアアッ!!!」


 それをあっさりと顔面に受け、ギルクは森に落下していった。

 ギルクの実力はこんなもんではないはずじゃが......まあ良い。

 今は追われてる身じゃ。

 わっちはさっさと逃走を開始した。

 


 

*******************




「貴様......王を逃したら、約束はなかったことになるって伝えたはずだが?」


 人間の男が一体のドラゴンに話しかけている。


「構わないでヤンスよ.....。

 これで、エインは.....他人のために死ぬ必要はなくなる......」


 割れたメガネをかけたドラゴンは言った。

 その表情は心底満足って感じだ。


「なるほどな......そういうことか.....。

 であれば、容赦は必要ないな?」


 甲冑姿の男が、剣をドラゴンの首元に剣を突きつけた。


「できれば、スパーンってやってほしいでヤンス。

 痛いのは嫌いでヤンスからね......」


「言われなくてもそうしてやる。安心しろ」


「ナイトさん.....僕は仲間も、人間も.....好きな竜も騙したでヤンス.....。

 どこで間違えたんでヤンスか?」


 ナイトの表情は読めない。

 そして、


「知らん.....言葉はそれくらいにして、もう逝け.....」


 愛想のない言葉を言った。


「嫌でヤンスよ。

 好きな竜のために、時間を稼がなくちゃいけないでヤンス。

 ....まったく.....僕はなかなか大変な竜を、愛してしまったようでヤンス」


「......付き合いきれん」


 ナイトは剣に力を込め始めた。


「頑張れ.....エイン.....」


 その日、ルティユ竜族は、王以外のほとんどが殺された。




**************************




 わっちは約一日ほど滑空し続け、集落の場所から離れた。

 方向を途中で変えたりしたから、おそらく追っては来れないだろう。


 飛んでいる間、わっちは考えた。

 これで良かったのか?と。

 そして、わっちの力が減っていくのを感じた。

 つまり、メンバーが殺されているということだ。

 家族はもう死んだかもしれない......。

 今すぐ戻れば、どうにかなるかもしれない.....。

 でも、わっちが死ぬかもしれない.....。

 わっちが死んだら、メンバー全員死んでしまう。

 なら、その危険だけは避けなくてはならないのでは?


 .......いや、違う。

 怖いのじゃ......わっちも殺されてしまうかもしれない。

 家族?友達?子どもたち?

 そんな生きているかもわからない奴らのために、自分の命をかける?

 ギルクみたいに裏切るかもしれないのに?

 ....わっちは.....あたし(あっし)は.....そんな勇気は持ち合わせてはいない......よ。


 結局、あっしはみんなを助けに行かなかった。

 こうして力もメンバーも......勇気も失った王、ルティユが誕生した。

 そして、ただ欲望のままに肉を喰らい、物を壊し、怖いもの(自分)から逃げ続ける日々を送り始めた。


 だが、それは神様が許してくれなかったらしい。

 ある日、ものすごくでかくて、モコモコした生物(ケモノ様)と出会ったのだ。

 そのモンスターは、とんでもなく強い魔力を持っていた。

 いつものあっしなら、即逃げることを決断したが、その目を見た瞬間、自分の過去を思い出させた。

 ムカついた。

 なんでここまで来て、またそんな目を見なきゃいけないんだ、と思った。


 そこで、怒りのまま攻撃してみたが、あっけなく捕まり食べられそうになった。

 もういいや......こんなことになるなら、ここで死んでしまっても........。

 だけど、そう思い込むことすらできなかった。


「.....お願い......殺さ.....ないでぇ.....」


 あっしは命乞いした。

 涙まで流して、すがるようにしながら言った。

 するとこの化け物は、声に反応を示した。


「....言葉が.....通じる.....ですか?」




 その後なんやかんやあり、あっしは、ケモノ様の忠実な下僕となれました!



新連載は、一章分をまとめて作ってから投稿しようと考えています。

年明けぐらいにアップできると思います。

カテナ・ビアンカの投稿速度が遅くなってしまい、申し訳ないです.....。


その分、いい作品にしようと努力をしようと思います!


次回、ルティユ編その2+α(プラスアルファ)!!

お楽しみに!!

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