2−6 アッシ
ブクマ感謝です!!
今回はすっごく短いです!
6話です!
ゴォォォォ......
黒いドラゴンが羽を動かすたびに、木々が大きく揺らいでいる。
俺はドラゴンを見上げた。
大きさは俺より少し小さいくらいで、スリムな体型のせいで贅肉は少なめ。
尻尾が途中で切れていて、羽には肉はほとんどない。
挙げ句の果てに全身鱗で覆われていて、食べるのに苦労を要す.....。
.......ハズレだな。
俺はそんなことを考えていた。
「ゴオオオァァアアァァァアッ!!!」
ドラゴンが咆哮を上げた。
「ヌオオォォウゥアアアアッッ!!!」
俺も咆哮を.....じゃなくて悲鳴を上げた。そして、うずくまった。
超高性能四つ耳装備の俺にとって、ドラゴンの方向は効果抜群だったのだ。
ドラゴンが首をかしげている。
「.....て....テメェは絶対殺すッ!!」
俺が殺気を向けると、ドラゴンが攻撃態勢に入った。
ドラゴンが息を吸い込むような動作をすると口元が赤く光りだした。
そして、吐き出す動作でブレスを放った。
ズガガガガガガガガガッ!!!
ブレスが地面や木に当たりながら、俺に迫った。
火炎と言うよりも光線、つまりジャッジメント・レイに近い。
それを俺はエンジェリック・ヲォールで吸収した。
一部吸収しきれず周りに弾いてしまい、大規模森林破壊になったが、気にしないでおく。
「グゥ.....」
自慢のブレスを弾かれて警戒しているようだ。
まあ確かに、空中戦艦の砲撃の何倍かの威力はあったが、今の所無敵の対魔法防御、エンジェリック・ヲォールには関係ない。
万策尽きるまで相手をしてやってもいいが、面倒だし、動いたから腹減った。
だから、
「.....落ちろ」
ゴゴゴゴゴゴゴッッ!!
ドラゴンの魔力を根こそぎ奪った。
すると、過去最大級の魔力が俺の中に入ってきた。
ドレインでここまで大きな音が鳴ったのは初めてだ。
ドラゴンは魔力が多い。
それが今回の戦闘で、俺が唯一覚える必要を感じたことだ。
ドゴォォンッ!!
でかい音を立てながら、ドラゴンが地面に落下した。
どうやら魔力を使って飛んでいたらしい。
俺は魔力枯渇で動けないドラゴンに近づき、4本の腕を使って羽と手足を拘束した。
馬乗りのような態勢だ。
.....いやまあ、体の作り的には俺の方が馬に近いけどね。
「グゥゥゥウウッ!!」
ドラゴンがうなり声をあげながら睨んできた。
.......知ったこっちゃないね。
俺がドラゴンの首元に牙をかけ、今にも喉を噛み砕こうとしている時、
「.....お願い......殺さ.....ないでぇ.....」
そんな声が聞こえた。
俺はとっさに周りを見回した。
そしてもう一度ドラゴンを見ると、驚いた表情になっていた。
「....言葉が.....通じる.....ですか?」
ドラゴンが目に涙を浮かべながら尋ねてきた。
「....ああ.....」
俺は素っ気なく答えた。
「...そう...ですか。
お願いです....殺すのだけは勘弁してくれませんか?」
ドラゴンが懇願してきた。
「....俺のメリットは?」
「....なんでもします!!
足でもなんでも舐めますんで、殺すのだけはやめてください!!」
なんでもかぁ......。
今俺が欲しいのは.....肉!!
「....じゃあ、お前の肉を食わせろ」
「はい、喜んで.....って、エェエエッ!?
それって結局、あっし死にませんか!?」
一人称で『あっし』なんて使ってるやつ初めて見た。
「....疲れた...腹減った.....だからお前を食べる。
.....何がおかしい?」
俺は至極真っ当な意見を言った。
そして、ドラゴンの首元の匂いを嗅いだ。
「ちょっ!?やめっ!!くすぐったい!!
お願いです!!今すぐ食べ物持ってきますんで、食べないでぇ!!」
うぅ〜ん....鉄みたいな匂いがする。
「.....お前美味しいのか?」
「へッ!?....いやもう、ゲロマズって感じですよ!!
肉は糞味、血液は硫酸のお味ですよッ!!」
Oh.....それはやばい。
.....ゲロマズ以下だな。
「....わかった」
俺はひとまず拘束を解除した。
「本当ですか!?ありがとうございます!!」
ドラゴンの表情は読めないが、声の調子から喜んでいるのがわかる。
「その代わり、今すぐ俺を休めるところに案内しろ」
「はい、よぉろこんで!!
.....あれ?食べ物はいらないんですか?」
「.....いる。
これから『毎日』お前がとってこい」
「.....フェ!?今なんて言いました?」
なんだ難聴か?
「俺は安全な場所でグータラ寝て過ごしたいから、お前は場所と食べ物を『半永久的に』提供しろって言った」
「なんですとぉッ!!
それってアレですか!?
ヒモ?ニート?社会のクズ?」
ガバッ!!
俺はとっさに、さっきと同じようにドラゴンを拘束した。
そして、
「社会のクズなめんじゃねぇよ!!」
ぶち真剣な眼で、ドラゴンの顔を覗き込みながら、かっこいいセリフを言った。
「は....はいぃ....すみません.....」
こうして俺は無職に就職した。
面接官は、満面の笑みで俺を雇うことを快諾してくれた。
硫酸ってどんな味なんでしょうね?