表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/67

2−1  獣王無人 零

二章.......起動!


1話((二章の))です!

思考武装団(インテ・ヴァーペンス)


 男の声か、女の声なのかわからない声が、重々しく響いた。

 だがそれを打ち消すのかのように、空中戦艦(ヘビィ・バタフライ)の爆撃音が鳴り響いている。


「第一武装団『皆光ノ鉄杭(ファフニール)』......展開(アドベント)!!」


 とんでもない漢字変換を経由して、『化け物』が何かを叫んだ。

 すると、黒い球体が空中に出現し、そこから大量の銃が這い出てきた。

 50メートルを超えているのが一目でわかるような大きさだ。

 その全てが、遥か上空に浮遊する空中戦艦(ヘビィ・バタフライ)に銃口を向けた。

 そして、


全弾発射(フルバースト)!!」


 ドヒュゥゥゥンッ!!


 瞬間、全ての銃からその砲身に似合う、巨大な弾丸が発射された。

 空中戦艦による迎撃によって大半が撃ち落とされたが、一部が命中し、大量の煙が上がった。


『化け物』がさらなる追撃をしようとしたところに、


 ドンッ!!......ドンッ!!


 人類戦車部隊からの砲撃が『化け物』を襲った。

 が、その全ての弾丸が命中する前に『化け物』の羽に吸い込まれるようにして、消滅した。

 

「何なんだよッ!!

 .....こんな化け物......どうやって倒せっていうんだよッ!!」

 

 戦車の上から人類の兵士が叫んだ。

 すると、『化け物』が兵士の方を見た。


 細長く、先端が少し曲がった二本の角。

 4本の足で支えられ、なめらかな紫の毛皮に覆われた体。

 魔法の(ことごと)くを防ぎ、巨大な壁のように見える羽。

 背中から生えた、大型魔法を放ち続ける4本の腕。

 体と同じくらいの太さで、先が見えないぐらいに長い尻尾。

 尻尾から生えた無数の触手。

 そして、こちらを睨む二つの赤紫色に光る眼。


 それが今、口を開け、巨大な魔法陣を発生させながら、こちらに魔法を放とうとしていた。


「あぁぁ........ア゛アァァアアッ!!!」


 兵士は急いで『化け物』から逃げようとした。

 ........だがもう遅い。


 ギュウウウゥゥゥンンッ!!!


 とてつもない光量が兵士を飲み込んだ。

 閃光が収まった時にはすでに、兵士の姿はどこにもない。

 そしてこの閃光は、兵士一人を消滅させるなんていう生易しいものではなかった。

 人類の用意した陸上機動隊の約三分の一が、一瞬で消滅した。





******************




「もう二度と.........あんな思いはごめんよ.....」


 悲しげだが、はっきりとした意志の感じ取れる声が『女性』から発せられた。

 少女は右手に小ぶりの銃剣、左手には小刀を持っている。


 そしてその周りには、乱戦中の戦場が広がっている。

 主に獣人と人間が戦っているが、エルフやドワーフなども混じっている。

 もちろん、エルフたちは人類の味方だ。

 まだ時間的には昼すぎぐらいなのだが、舞い上がった塵や煙などが太陽の光を遮断し、魔素が発光することにより、暗くて、薄く赤みがかった風景になっている。


「はぁ.....早く帰ってお風呂に入りたい」


『女性』はため息混じりにそんなことをつぶやいていた。

 しかもさっきから両目を開けていない。

 だが、これは相手をなめているわけではない。

 体が汚くなったら自然とお風呂に入りたくなるからであり、

『女性』は目を開けずとも状況を確認できるからだ。


「.....シルン.....私たちを見守っていてね」


 その『女性』は......桜は、自分にとって親友とも呼べる少女の名前を呼んだ。


「アキラにばっかり負担をかけてられないし.......もう、行くね」


 桜は、親友に対して言葉を発した。


 .........返答はいつになっても帰ってこなかった。

 けれど、桜はにっこりと微笑んだ。

 そして......


位置転移(テレポ)


 姿を消した。




******************




「あぁ......アキラァ....なんて雄々しく、美しいんだ....。

 .......まさに神の作りし芸術(アァト)ッ!!」


 金髪と碧眼、整った容姿を持つアキラが好きすぎて頭おかしい『女性』........ルーベルが、いつものことながら.....いや、いつも以上に、アキラを賞賛する言葉を並べている。

 その視線の先にあるのは、破壊を繰り返す『化け物』の姿がある。

 そして足元にあるのは、無数に積み重なった人の死体。

 死体には心臓付近を何かに貫かれた跡がある。


「その視線は僕の心を串刺しにし、その吐息は僕の体すら溶かし尽くす......。

 ......嗚呼、何と美しき存在(イグジステンス)ッ!!」


 ........一時間近くこんな言葉を大声で叫び続けている。

 相手をなめているのか?

 ......おそらくそうなのであろう。


 そこへ、3メートル近い大きさの人型兵器(ゴーレム)が接近してきた。

 そして、腕に装着している大砲のような武器から、魔法の弾丸を発射した。


 ドウゥゥゥンッ!!


 そんな音とともに弾丸が一瞬でルーベルに接近した。

 だが、


既通ノ糸(グングニル)ッ!!」


 ドガアァァンッ!!


 空飛ぶ槍が複数射線上に現れ、魔法を防いだ。

 そしてすぐさま槍がゴーレムに飛来し、胸あたりをえぐり取った。

 槍を受けたゴーレムは自身の魔力により、自壊し始め、


 ドゴォォオンッ!!


 爆発した。

 それを見た他のゴーレムがうろたえ始めたが、


既通ノ糸(グングニル).......ヤれ(殺せ)


 ルーベルが冷たく命令を下した。

 ものの数秒でゴーレム十数機を撃滅した。

 そして、


「あぁ〜、既通ノ糸(グングニル)ってかっこいいなぁッ!!

 武器の見た目や性能もかっこいいけど、何より、

 

 『ネーミングセンス』がかっこいいなぁあッ!!!」


 やたらと大声でわざとらしく、『化け物』に向かってそう叫んだ。

 すると、『化け物』がこちらを向いた。


「アキラ.....すっごくかっこいいよ.....既通ノ糸(グングニル).....」


 しかし、すぐにプイッとそっぽを向いた。


「アアァァァァキィィィラアアアァァァァッッッッ!!!」


 ルーベルは、ただの叫び声なのか、それとも名前なのかわからない悲鳴をあげた。







 現在、人類の空中戦艦と魔法を打ち合っている『化け物』がいる。


 それこそが、全獣人の私有化を目論む獣人の『王』......



 アキラなのであった。







 どうしてこんなことになったのか?


 その説明には、およそ8ヶ月前まで時間を遡る必要がある。




お久しぶりの人は、お久しぶりです!


二章始まりました!


今回は、二章のプロローグ的な話です。

どんな展開になるのか、楽しみにしていてくれると有り難いです!


次回、8ヶ月前。

お楽しみに!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ