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1−29 獣人月歩 白

ブクマ感謝です!


29話です!



ーside ルートベルトー


 私、いや、僕の名前はルートベルト・スカッゼ。

 スカッゼ家の当主の息子で、おそらく次期当主だ。


 性別は男であるとされているが、本当は........女だったりもする。


 スカッゼ家の当主、つまり僕の父親は、自分の息子のうちの誰かに次期当主を受け継がせることにひどく執着している。

 分家に当主の座を渡すことを拒絶しているのだ。


 そんな家庭事情の中、『私』が生まれた。

 場所は、王都。

 つけられた名前は、『ルーベル』。


 私は親の愛情というものを感じたことがない。

 父は、男である兄の教育に夢中だったのだ。

 母は父の後ろをついていくだけの人だったので、父と同じように私に関心を持たなかった。


 私は舞踏会に数回しか参加したことはなく、ドレスを着た回数も、10回もないと思う。

 ほとんどいない子状態だった。


 そのおかげで、私は家に引きこもり、本を読みまくるという貴族らしくない地味な生活が可能だった。

 本はいい。

 特に変わった考えが記載されているものが好きだ。

 新しい考え方が、自分の中で構成される感覚がたまらないのだ。


 文字の読み方、理論の立て方、その他に関してもほとんど独学だ。

 家庭教師を雇う話もあったが、自ら断った。

 私は本を読むことで自分なりの世界観を作っていたため、他の人が勝手なことを私に教え込もうとするのが気に入らなかった。


 そんな私が8歳の頃、兄が死んだ。

 盗賊に襲われたのだ。

 父は嘆き悲しんだ。それこそ、世界の終わりだとでも言い出しそうなくらいに。

 ........いや、実際に言っていた気がする。


 私は、三人兄弟だ。兄と弟がいる。

 父が悲しんでいた理由の一つとして、弟がとんでもない無能であったことがある。

 

「俺の辞書に礼儀の文字はねぇ!」

 とか騒いでいた気がする。

 礼儀はなく、座学は平民以下、運動せず、ぶくぶく太っていた。

 まさにダメな坊ちゃんである。


 その頃の私の家は、子爵の位を授かっていた。男爵の一つ上だ。

 貴族で、上から4番目、下からも4番目だ。

 すごいと言えばすごいが、貴族としては、微妙といったところだ。


 ゆえに立場はそこまで強くない。

 弟なんかが当主になったら、1ヶ月もたないだろう。

 

 分家に当主の座を譲るか?

 と、父が本気で考えていた時、私に目がいった。

 

 正直思ったよ。

 マジほっといてくだしゃいって。

 残念ながらその願いは叶わなかった。


 そして、なんやかんやあり、

『僕』は隠し子の『ルートベルト』として貴族社会にデビューした。

 年齢は9歳。

 設定無理ありすぎだろ!とも思ったが、金でも渡して黙らせたんだろう。


 それからというもの、剣の稽古、魔法の稽古、座学、礼儀作法などをみっちり学んだ。

 そして、その全てで『天才』と呼ばれた。

 知識はあったので、それに合わせた体にすれば良いだけだったからだ。

 どうもこの国(人類の国は一つしかない)の人々は、経験だけでものを言う傾向が強いようだ。

 ズバーンとか、ガガガッとか擬音ばっかりの教え方をする。


 剣の先生は冒険者だった。

 Sランクだそうだ。

 3日で倒した。

 技に癖が強く、合理性を欠いた動きが多かったので、以外と楽に倒せた。

 大人との身体の能力の差を技術で補ったのだ。

『先生』を倒した後は、僕が先生になった。

 僕が体力作りをして、暇があったら、『先生』に先生をした。

 

 魔法の先生は、引退した宮廷魔導師の爺さんだった。

 魔力量、魔法効率、魔法威力、魔法発動などのすべての項目で、爺さんが来た日に爺さんを凌駕した。

 驚いて、ぎっくり腰になっていた。

 そして僕は、魔法の『先生』の先生にもなった。


 座学、礼儀作法などすべての習い事で、『先生』の先生になることができた。

 これが10歳の頃の話。


 そんな噂を聞きつけて、僕は人類の『王』と謁見の機会を与えられた。


 謁見当日。

 僕は初めて『王』の顔を見た。

 若い。青年といった感じの年に見える。

 だが実際は、500年以上もの間、人類を統治している人だ。

 威厳のようなものを感じられた。


「お前がルートベルトか?」


「はい」


 空気が重い。そう感じた。

 そのあと、貴族特有の他愛のない話をした。


「何か望みはあるか、ルートベルトよ」


 きた!

 僕は内心そう思った。

 この謁見で望みが聞かれたら、どうしても言いたいことがあった。

 それは、


「僕を人類のメンバーから外してください!!」


 僕はついつい大声で、王の顔を見て言ってしまった。

 慌ててひれ伏した。


「申し訳ありません」


「よい。だが、理由を述べよ」


「はっ!!

 私めは、恐れながら非凡なる才能を持っているようです。

 師を数日間で追い抜いてしまうのです。

 本心から申し上げますと、全く面白くありません。

 達成感が全く感じられないのです。

 ので、私が弱くなればよいと考えました」


「.......クククク......。

 ハッハッハッハッ!!」


 王が笑い出した。

 どうしたのだろうか?

 ワライダケでも食べたのだろうか?

 だとしたら大変だ!!

 食事を出した人の首が飛んじゃう!!


 とか考えていると、


「......ふぅ。

 いやぁ〜.....申し訳ない。

 久しぶりにそんな面白い発想を聞いたもので、ついつい大笑いしてしまった」


 口調がッ!!くちょうがッ!!クチョウガチガウッ!!

 オマエハ誰ダァー!?

 

「もともと俺は、立場とかそういうことは気にしない性格なんだよ。

 だから、あまり口調とかは気にしないでくれ。

 堅苦しくて喋りにくいし........何の意味があるんだろうな?本当に」


「は、はぁ......」


 なんか急に王が見た目相応の青年に見えてきた。

 まあ、周りに誰もいないし、いいのだろう。

 .........たぶん。


「望みの件だが、了承した。

 すぐにメンバーから追放しておく。

 .........本当にいいのか?以外と苦労するぞ?」


「問題ありません」


「........ならいいが......。

 その気持ちはわからなくはない。

 俺も強くなりすぎて、現在、絶賛退屈中だ」


「そうですか......」


「俺もルート君みたいにホイホイと弱くなりたいよぉ〜」


「..........」


 なんだそのネーミングは!?

 数学得意そう。

 そして博士に愛されそう。


「俺のことは、リョウタとでも呼んでくれ」


 人類の王の名前は『リョウタ』、転生者だ。

 長い名前は好きじゃないらしく、これがフルネームだ。

 

「.......リョウタ.....」


 リョウタは、うんうん、となぜか頷いていた。

 王を呼び捨てとか普通は考えられないんだが、本人が許してるし、いいのだろう。


 その後、王の愚痴を1時間にわたり聞かされて、やっと解放されて家に戻った。

 

 父に自分の言った要求の内容を報告したら、ものすごく怒られた。

 ムカついたからボッコボコにして黙らせたが。

 木刀でめった打ちにして、ケツの穴に魔法で作った氷の槍をぶっ刺したのだ。

 .......あぁ〜、スッキリした。


 リョウタの愚痴のせいで、激々ドリームスーパーおこおこクルリンだったのだ。

 仕方のないことだったのだ、許せオヤジィ〜。


 思えば、父にここまで反抗したのは初めてだ。

 なんでこんなやつの言うことなんか聞いていたのだろうか?

 むさい顔のただのおっさんだ。

 ......今度からムカついたら、サンドバック代わりにしよう。

 

 次の日、人類のメンバーから外されていることを実感した。

 体が思うように動かないのだ。


 普通の人はこの感覚は嫌に思うだろうが、

 僕は、久しぶりにワクワクしていた。


 なかなか成功せず、努力に努力を重ねて何かを成功させる。

 そして、成功して瞬間に得られる達成感。

 僕はそんな出来事が起きることを待ち望んでいた。

 


「今日から毎日、楽しめますように」


 僕はそう願って、自分の部屋の扉を開けた。




 

ルートベルト編です。



次回、アキラとの邂逅!!

ルーちゃんは一体何を思う!?お楽しみに!!


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