1−28 獣人月歩 6
サブタイトルを変更しました!
28話です!
僕はルートベルトの手を頭から払った。
正直、もっと撫でられていてもいいかもって思ってしまうくらい、ものすごく撫でるの上手だった。
後でまた、僕の頭を撫でさせてやろう。
ルートベルトが、驚いた表情のまま数歩下がった。
「アキラ.........どうやっても君は僕のものになる気はないようだね.....。
.........ならば、手足を切り落としてでも持ち帰るッ!!」
少し怒りの感情を含んだ表情になった。
「なら僕は、手足を切り落とされてもあなたに勝ちますッ!!」
そして僕は大きく息を吸い込み、
「わが選択に栄光あれ!!
『正義の光』!!」
ギュウゥゥンッ!!
白い閃光を放った。
「そんなものッ!!」
あっさりと回避された。
だが、僕とルートベルトの間に距離ができた。
『ジャッジメント・レイ』は、撃った後の硬直はほとんどない。
その隙に僕は武器倉庫から逃げた。
「また逃げるのか!?」
「逃げているんじゃありません!!
戦・略・的・撤・退です!!」
「全然言い訳になっていないじゃないか!!」
ルートベルトは叫びながら追いかけてきた。
ここで桜たちを人質にとれば、おそらく僕は詰んでいただろう。
ルートベルトもそのことには気づいてはいたはずだ。
でも、僕を追ってきた。
僕を本当に合意の上で、奴隷にするつもりなんだろう。
.......悪い人ではないな。
だが、今回はそれを仇で返させてもらう!!
マジでごめんなさいッ!!
そして、なんとか追いつかれずに、バトルドームの中に入ることができた。
僕は手に猟銃のような銃を持っていた。
武器倉庫に置いてあったものだ。
「そんなものが僕に当たるとでも?」
ルートベルトが追いついて、聞いてきた。
「まさか、そんなことは微塵も思っていませんよ」
高機動、高反応速度のルートベルトなら、近距離でもほとんど当たらないだろう。
「つまり、何かしらの『切り札』を持っているということだね?」
「そういうことです」
僕は正直に答えた。
嘘を言ってもすぐにバレると思ったからだ。
「........そうか。
桜さんとシルンさんでいいんだよね、あっちで倒れていた獣人達は?」
ルートベルトが、桜たちの名前を尋ねてきた。
「はい、そうですけど......どうして名前なんか気にするんですか?」
「いや、ただ単に獣人につけられた名前っていうのが珍しいなぁ、と思っただけだよ。
.......彼女達にはエーテル・ポーションを使った。
絶対に無事だよ」
正直安心した。
そのことが気がかりで、焦りを感じていたからだ。
「.......ありがとうございます....」
「その代わりに条件がある。
その『切り札』とやらを使い切っても僕が倒れていなかったら、君が無傷でも降参してくれ。
だけど、僕が『切り札』によって地面に伏して倒れたら、僕はすぐに降参する」
ルートベルトは以外と正直な人だ。
会話していてそう実感している。
おそらく本当に自分が倒れたら、降参するだろう。
もし僕が、『切り札』を使ってルートベルトを倒せなかったとしても、まだ切り札が残っている、と言い続ければ僕は降参しないで戦い続けられる。
しかも、口約束だから強制力はない。
だから、僕はすぐに、
「わかりました。
その条件を受け入れます」
と答えた。
「..........そうか」
どことなく寂しそうにルートベルトが言った。
強制力がない口約束なら、何をどう約束しようが後で取り消すことができる。
だけど僕は、
「その条件には必ず従いますよ!!
『約束』です!!
でも、こちらの『切り札』は強力ですよ〜!!
必ず『僕ら』が勝ちますんで、覚悟してくださいねッ!!」
僕は嘘偽りなくこう答えた。
自信と希望に満ちた笑顔で。
「......そうかッ!!やっぱり君は面白いッ!!」
ルートベルトは満面の笑みで言った。
その表情にはどことなく、新しいおもちゃをもらった子供のような無邪気さが含まれているように感じた。
「では、行きますよッ!!」
「ああ、来いッ!!」
僕は銃を構えたままルートベルトに向かって走った。
そして、
「加速!!」
アイの使っていた魔法を使用し、急加速した。
僕の靴にはアクセルを使えるようにする魔晶石がついている。
アイは、固有魔法としてアクセルを使っている。
それゆえ、速度とかは申し分ないのだが、本人の魔力操作が下手で微妙な性能になっている。
「そんなんじゃ僕には追いつけないよ!!
『疾風』!!」
ルートベルトも加速した。
そして接近してきた。
ソードブレイカーを突きつける姿勢だ。
そして、衝突まであと少しのところで........
僕は武器を手放した。
「えっ!?」
ルートベルトが驚きながら、僕の『落ちていく銃』を見ていた。
誰かと相対するとき、武器に注意がいってしまうのは自然なことだ。
僕の攻撃は、武器によるものと、ジャッジメント・レイのみしか見せていないし、それしかない。
ジャッジメント・レイは発動まで少し硬直があるため、ルートベルトが注意しなくてはいけない攻撃は、武器によるものだけだ。
そして今、僕は武器を捨てた。
そうすることによってできた僅かな隙をついて、僕はルートベルトに........
抱きついた。
しっかりと羽を使って包み込むようにしてだ。
「な、何をするんだ、アキラッ!!
ふざけているのかッ!?
そ、それとも.....もう僕を『抱きたく』なっちゃったのか?」
ルートベルトが顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「.....んぐぅッ!........」
僕は苦悶の表情をしていた。
ソードブレイカーがお腹に刺さって、出血していた。
「ア、アキラッ!?
大丈夫か!?
い、今すぐエーテル・ポーション持ってくるから放してくれッ!!」
そいって、ルートベルトはジタバタし始めた。
こいつさっき、手足を切り落としてでもとか言ってなかったっけ?
ちゃっかり剣を抑えて、抜かないようにしている。
出血を抑えるためだ。
敵かどうかを疑いたくなるよ......まったく、もうッ!!
「大丈夫ですよ、このぐらいの傷なら後でポーションを飲めば完治できます。
それに、これも作戦の内です。
今現在『切り札』発動中です♪」
「何ッ!?」
ルートベルトが周りを見回した。
魔力の濃度が自分たちの周りだけ濃くなっているのを感じられたらしい。
そして次に、炎柱の魔晶石に魔力が集まってきているのにも気づいたようだ。
「これは.......僕の魔晶石に魔力を大量に送り込んで、暴発させようとしているのかい?」
察しが良くて助かるよ、本当に。
「はい。.....もう......ジャッジメント・レイは撃てないので.......」
そう言って僕は自分のお腹を見た。
ソードブレイカーが刺さっている。
どうもこの状態だと、撃てそうもなかったのだ。
「.......そうか。
ならもう、諦めるんだ、アキラ。
この魔晶石の魔力許容量は、およそ10000MPだ。
つまり、人間一万人分だよ」
おお、まさかこの世界でもMP先輩がご活躍中だとは思わなかったよ。
でも、人間1人につき1MPかよ!!
それってあまり使い勝手良くなくない?
「アキラは広範囲から魔力を集められる能力を持っているようだが、
コロシアム内の『空気中』には、そんなに魔力は存在してないよ」
「大丈夫ですよ、たぶん。
『空気中』以外からも集めるんで。
僕の能力は、周りにある『すべての』魔力を吸収する能力ですから」
「.......『すべて』?」
「はい!」
そう言って、ルートベルトの体内から魔力を吸収した。
「.........ックゥ!!」
ルートベルトがなんとも言えない表情をしていた。
ちょっとエロいぜ!
「コロシアム内の『すべての』魔力を吸収すれば、MPたりますよね?」
「.........」
ルートベルトが沈黙した。
沈黙は肯定とみなすッ!!
どうやら正解っぽいね!
「........アキラの能力は驚いたよ。
その能力は、おそらく極めれば世界最強の能力になる。
だけど、まだ最強ではない!!
炎柱!!」
ルートベルトが魔法を、遠くの『地面に』放った。
「なっ!?何をしているんです!?
悪あがきはよしましょう!!」
「そういうわけではなさそうなんでね......。
アキラ、その能力は魔力をほぼ無限に奪うことができる。
けれども、疲れないわけではないんだろう?
隠しているようだけど、もう息が上がっているよッ!!」
バレたッ!!
そう、確かにルートベルトの言う通りなのだ。
天界の壁、つまりドレインは、魔力の消費はない。
けどすっごく疲れる。
ということは、
「僕がこのまま、魔晶石の中身の魔力を放出し続ければ、持久戦で勝てる!!」
ザッツライトッ!!
や、やばい.......どうしよう?
「炎柱!!」
再び、ルートベルトの魔法が放たれた。
アキラァ.......ルーちゃんに.....抱きついたぁ〜......。
アキラ イズ ギルティ!!
判決......死K!!
.........申し訳ない。ついつい羨ましくて......。
今日は一話だけの投稿になりそうです!
次回、決戦ルートベルト......ではない!?
一体何をするのか!?お楽しみに!!