表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/67

1−22 星下のシルン


22話です!


 今、僕たちがいる場所は、この街、コルメシオの比較的中心に近い場所だ。

 忘れているかもしれないが、この街はすんばらしく高い建物がわんさか建っているのだ。

 ただし、それは街の中心近くに集中していて、街の比較的外側には、一階建ての建物もたくさんある。 

 

 なぜ僕たちが中心近い場所にいるかって?

 理由は二つ。

 一つ目は、『買い物』のためだ。

 コロシアム襲撃に必要なもの、具体的に言うと、僕とシルンの装備を買うためだ。

 他に必要なものは、みんなが揃えてくれるらしい。

 あとで、ご褒美としてもふもふしてあげよう!

 .........今夜も、楽しめそうだゼェ〜.......。

 いけないいけない。あんまり妄想していると、シルンに変な顔って言わr........。


「......変な顔.......」


 れちゃった。


「......ちょ、ちょっと買い物が楽しみすぎて、にやけちゃっただけです!

 決して夜のこととかを想像していたわけではないですよ!」


 なんでだろう......。

 これじゃほとんど答えを言っているようなもんじゃないか.......。

 きっとあれだ。僕はアホの子だ。そうに違いない。

 .......言ってて悲しくなってきた。


「.......そんなに....『私との』夜.....が、........楽しみ....?」


 あぁ〜、そういえばシルンは、ものすごいポジティブな娘だった。

 なら、この流れに乗るしかねぇ!


「はい!もちろんです!

 ものすっごく楽しみです!!」


「......もう......アキラったら.........ポッ.....」


 ちょろいぜ☆

 .......あとで教会に行って懺悔してくる........。


 僕たちがここにいる理由のもう一つを説明しよう。

 こっちの方が『僕にとっては』、重要だ。

 それは、街の中心に行くほど.........

 



 .....デートスポットが増えて、豪華になるからだ。


 つまり、僕がここにいる理由の大半が、シルンとのデートを楽しむためである。

 許せ、みんな......。

 これは、あくまで英気の補充だ。必要不可欠だ。

 わかってくれ......キリッ。


 

「シルンさん、どこ行きますか?」


「.........ぷいっ......」


 シルンがそっぽを向いてしまった。 


「えっ!?ど、どうしたんですか、シルンさn..........あっ!

 ごめんなさい、シルン.......」


 ついついシルン『さん』と言ってしまっていたのだ。


「.......わかればいい........」


 表情がにこやかなものに戻った。

 機嫌を直してくれたようだ。

 すっごい美人だ......。

 ついついシルンの顔を凝視してしまった。


 やばい!そんなに顔をまじまじ見たら、変だろ!

 何か話題を変えて.......と?


「あ、あそことかどうですか?

 えぇ〜と『鉄鋼クレープ』......なんて......」


 ごめん、シルン。

 なんかいい匂いがしたから適当に選んじゃった。


 そこには、馬車の一部を改造して商品を出している店があった。

 客は少ないようだ。空いている。


 何だよ!『鉄鋼クレープ』って!

 鉄鋼とクレープってイメージ違いすぎんだろ!

 と、僕は内心ツッコミを入れていた。

 

「........アキラが.....いいなら.......」


 シルンやさしぃい。

 撫でてやろう。ナデナデ......。


「.........ん〜.....」


 ご満悦のようだ。おっと、鼻血が......出てなかった。

 でも、ちょっと気になる。『鉄鋼クレープ』。

 見てみよう。


「へい!らっしゃい!!」


 そう声を出したのは、頭に三角巾をつけた青年だった。

 意外だなぁ〜。いつもの流れだと、変なおっさんが出てくるんだけどなぁ〜。


「あのぉ〜、ここってクレープの店ですよね?」


「ああ、そうだよ!

 でも、単なるクレープじゃあないんだ!

 ここでは、クレープに鉄鉱石を入れて焼いたものを出しているんだ!」


 確かに店には鉄板が付いていて、今まさに、クレープが数個焼かれている最中だった。


「カリッとしていて、うまいぞ!

 どうだい、おねぇさん!そっちのお嬢さんも買っていかないか?」


 いやいやいや......。ちょっと待とうか、お坊ちゃん。

 それは、カリッとじゃなくて、ガリッとするんじゃないのか?


 ツンツン.....

 シルンが食べたそうにこっちを見ている。


「二つ買います」


 シルンの可愛さに負けた。後悔はない。


「まいど!!

 うまかったら、みんなに広めてくれ!

 俺は将来、絶対この商品で世界を取ってやるんだ!」


 何かすごい目標を持ってらっしゃるのね......。

 値段は、二人で40W(ウェルド)だった。安いのかな?まだよくわからない。


「わかりました。

 みんなに広めておきます」

 

 味はともかく、話の種にはなるだろう。


「そういうセリフは味を見てからにしてくれ!」


 か、かっこいい、と思った。

 よっぽど味に自信があるのかな?

 僕も料理したらあんなことを言ってみたい。


「できたよ!ありがとうございました〜!!」


 僕とシルンは、手を振って青年と別れた。



 近くのベンチにがあったので、そこに座った。

 もう夕方って感じだ。


「美味しいですね!」


「........ん.....美味しい.....」


 外側の生地だけカリッとしていて、内側は普通のクレープでもちっとしている。

 全然鉄っぽさがしない。

 しかも、鉄分豊富.......本当に鉄鉱石入ってんのかな?

 今度自分でも作ってみよう。そしてみんなに食わせよう!


 僕がバナナクレープで、シルンがイチゴクレープを買った。

 味の種類は、この二つしかなかった。


「........あ〜ん.....」


 シルンが、口を開けていた。

 そうか〜、シルンは僕の『白くてベトベトしたもの』が食べたいんだなぁ〜。

 仕方のないやつだなぁ〜。

 ほら、よく味わって食べるんだぞ〜。

 

「......パクッ.....」


 シルンが.......食べた。


 ゴクリ

 僕は唾を飲み込んだ。


「ど、どうです?

 お、お味は?」


「.......甘くて.......美味しい......」


『僕のもの』は、甘くて美味しいらしいです。

 シルンに食べられちゃウゥ〜。

 とまあ、冗談はここまでにして、


「シルンのやつも、僕にください」


「............あ〜ん........」


 パクッ

 普通にイチゴの味がした。シルンの味はしなかった。


「.........美味しい?......」


「はい、もちろんです!」


「......それは、......よかった......」


 クレープを食べ終わり、シルンと道具屋に寄った。


 特に何事もなく済んだので、買ったものだけを紹介させてもらおう。


 ○アキラ

 刀、ハイポーション、マジックポーション。


 ○シルン

 ダガー、ハイポーション、マジックポーション。


 ね!何事もないでしょ!

 基本的に戦闘補助の小道具は、11ちゃんズが揃える手筈担っているため、武器ぐらいしか買う必要がないのだ。

 防具は?と思うだろうが、シルンのお店で買ったものは、冒険者用なので買い足す必要はない。

 武器は、耐久性があるものを選んだ。

 結構いい値段がしたので、いい感じのものなんだろう。


 マジックポーションは、魔力を微量回復させるものだ。

 戦闘中使うこともあるが、すぐには効果はないため、適度に飲み続ける必要がある。



 買い物が終わり、もう帰る予定の時刻が迫っていていた。

 星も見えてきて、もう夜って感じだ。


 この街の中心部の周辺には、川のようなものが流れている。

 中心部をぐるっと囲うように作られた、人工的な川だ。


 現在その川の上の橋にいる。


「いやぁ〜、もう今日が終わっちゃいますね。

 僕的には、もう少しシルンとデートしていたかったんですけどね」


「..........」


 シルンが、複雑そうな顔をしている。

 僕.......ちゃんとシルンって言ったよね?


「どうしたんですか?」

 

「...アキラは、本当に『計画』を実行するの?」


 シ、シルンが『普通に』喋っている!!

 ちょっとぎこちなさが残っているけど。


「シルンさん!いや、シルン、その.....喋り方が.......」


 僕は、慌てながら口調について指摘した。


「...多分こっちの方が、本来の喋り方だと思う....」


 それから、シルンが昔話を始めた。とは言っても、十数年前の話だけどね。

 それによると.......


 シルンの母親は獣王の一人らしい。

 獣王とは言っても、現在存在する獣王の全ては人類に隷属関係にある。

 そして、人間との間に生まれたのがシルンだ。


 普通、生まれてすぐに獣人の子どもは奴隷となる。

 しかし、母親の王の力である、『転移』の力を使い、王の権限と共にシルンは遠くに逃がされた。

 とは言っても、まだ子供。

 右も左もわからず、餓死しそうになっていた。

 そこで、シルンが経営している服屋の以前の持ち主の獣人に拾われた。


 この時点では、自分の母親が獣人の王であることは知らなかったが、自身の力が覚醒した時にどういうわけか、察せたらしい。

 そのため、シルンはまだ未熟だが『転移』の能力が使える。

 数年後、服屋の獣人は、病気で死んでしまったそうだ。

 そして、年月が経ち、服屋を受け継ぎ、今に至る。


 喋り方は、口調がたどたどしい方が奴隷らしさを醸し出し、獣王との関係性を疑われなくするためらしい。

 今となっては、その喋り方の方がしっくりきているらしいが。

 

「...アキラは『計画』を、本当に実行するの?」


 シルンがもう一度聞いてきた。

 おそらく、獣王ですら人類に支配される世界で、

 実質上の、獣人独立計画を実行するのかが聞きたいのだろう。

 普通に考えて、実現不可能な目標なのだ。

 

 だが僕は、間をおかずに答えた。


「はい!もちろんです!」


「....『計画』の内容に間違いはない?」


「『相手の事情に関係なく、

 すべてのもふもふちゃんを僕の手中に収め、

 もふもふする計画』です!!

 これは未来永劫変化しませんし、僕が存在する限り続けます!」


 アキラは、熱意に溢れる眼差しで語っていた。


「.......よかったぁ......」


 シルンの口調が元に戻っていた。

 やっぱりこっちの方が安心する。


「当たり前じゃないですか!!

 僕がこれ以外の目標を持つと思いますか!?」


「......それは......ない......。

 ......やっぱり.....私のますたーは、.......アキラしか.....いない......」


「それも当たり前です!

 シルンを何処の馬の骨わからんやつには渡しません!!

 何処の馬の骨かわかっても渡しません!!」


「........ お父さんみたいな.....セリフ........」


「えぇ〜!

 そこはせめて、『お兄さん』ぐらいにしてくださいよぉ〜!

 もしくは、『夫』でもいいんですよ♪」


「......マイ....スィート....ダディ..........ポッ......」


「ありがとうございます........ん?

 それって、やっぱりお父さんじゃないですか!?

 そのセリフ言ったら、ファザコンじゃないですか!!」


 クスクスッ....

 シルンが笑っていた。

 僕も笑った。


 正直、シルンの身の上話には、一言も二言も言いたいことはあったが、

 それと僕の計画の話は別だ。

 僕は、実現可能かどうかで、目標を定めていない。

 やりたいかどうかで決めている。

 だから僕は、誰の前でも100年後も変わらず、この計画の内容を言うことができ、

 それを行う意思があることを宣言できると確信している。





 月夜の中、僕とシルンは笑いあい、少し賑やかな夜を過ごした。





 そして、帰宅時間をはるかに過ぎていることに、僕たちはまだ気づいていなかった。





次回、バトルコロシアム開催するかもしれない!!.......です。

お楽しみに!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ