1−15 閃光
15話です!
「マスター...........選択肢は二つにゃ。
一つ、全員で戦ってやられる。
二つ、マスターだけはそこの箱の中に隠れて、見逃してくれるのを待つ。
にゃ。
できれば、2つ目を選んでほしいにゃ」
「じゃあ、1で」
「残念ながら、3の選択肢はないにゃ...........ん?
今にゃんて?」
「1です」
「み、みんなでやられるのかにゃ!?」
「はい、もちろん三つ目の選択肢の、
みんな無傷で冒険者をボッコボコにする、がいいですけど。
でも、2を選んで、僕だけが助かるのは御免です。
みんなを犠牲にして助かったら、ダメなんです」
当然だ。
綺麗事かもしれないけど......できないことなのかもしれないけど、目の前で獣人たちが、それも僕のメンバーともなれば、........傷つく姿なんて見たくない。
「なぜにゃ!?
マスターが死んだら、みんな死んでしまうにゃ!
それだけは、防がなきゃいけないにゃ!
.............それに、うちらは連れ戻されるだけにゃ...........。
前の生活は、もう慣れてるにゃ.........。
だから、心配無用にゃ...........」
ルイが俯きながらそう呟いた。
慣れる?そんなのが嘘であることなんて一目瞭然だった。
ならば、
「断ります。絶対に。
残念ながら、君たちのマスターは、強欲なんです。
目標は「もふもふ計画」遂行。
これは、全獣人を、相手の意思、状態、立場にかかわらず、モフり、自分の『だけ』ものにしていくことです。
そんな僕が、自分のメンバーの獣人を他の誰かに触らせると思いますか?」
これが僕の答えだ。
「マ、マスタ〜............」
「...........さすが、.......私の...マスター..........一生....ついてく..........キュン..........」
今僕めっちゃいいこと言った。
フュ〜.......僕ってかっこいい!
「.........それに、時間切れのようですよ」
「あぁ〜その通りだ、べっぴんさん」
ガラの悪そうな奴らが僕らの視界内に入ってきた。
「思ってたよりも、俺好みの女がいるじゃねぇか!
俄然やる気が出てきたぜぇ!」
「............」
人数は思った通り三人。
いかにもチンピラの下っ端のような顔、スキンヘッド、肩パッド.......と言う、世紀末に出てきそうな身なりの中肉中背の男。武器は、銃剣のようなものを持っていた。
でかい、ごつい、顔怖いといういかにも筋肉にステ振りしすぎちゃったって感じの大男。武器は、大剣。
背が低く、フードをかぶっていて顔は分からないが、服の端から、尻尾が見えることから、獣人と思わしき少女が現れた(足音では、男だと思っていた)。
「なっ!」
僕は驚いていた。そう、銃がある。
この世界では、冒険者も銃を使うのかぁ〜。どんな銃なんだろうか?光線銃とかだったら、勝ち目なくないか?ありそうで怖い。
「159!!」
アイが叫んだ。あの獣人とは、どうやら知り合いらしい。
「ごめん...みんな......。しゃべっちゃった......」
159が言った。
おそらく、『命令』されたのだろう。
奴隷は、主人と『服従』の契約を結ぶ。
これにより、主人に危害は加えられず、『命令』には逆らえない。
「........他のみんなはどうなったかにゃ?」
「...........」
........その沈黙が意味することは、僕でも察しがついた。
おそらくは.....もう...........。
「感動の再会のところ、申し訳ないが、
こっちには、時間の都合があるんだ。
とっとと捕まってくれないか?」
そう言って、スキンヘッドが銃を構え、ごついのが、大剣を背中から抜刀した。
こちらのメンバーも全員武器を構えた。全員、武器はナイフ。
正直、ナイフを持つだけで手が震える。
でも、仲間の命のことを考えると、自然と震えが止まった。
まさに、一触即発の状況の中、
チンピラが口を開いた。
「やれ!」
「.........はい炎撃」
後ろに隠れてた獣人の子が、杖を使って、魔法を放った。
杖の先端から、炎の塊のようなものを3つ飛ばしてきた。
『命令』されているのだろう。
「うおわぁ!」
そう言いながら、僕はなんとか、回避した。
そこに、ごついのが突っ込んできた。
「ヌゥゥ!!」
「グゥゥゥゥ!!!」
タックルされた。めちゃくちゃ早い!
アイのアクセルと同じくらいの速さで巨体が突っ込んできた。
翼でガードしたが、壁まで吹っ飛ばされた。
これも翼をクッションにして防いだ。
「やるなぁ!ねえちゃん!!
俺ぁ、強い女が好きなんだよ!」
「あなたの趣味なんか聞いていませんよ!」
「いいねぇ!気が強い方がもっと好みだゼェ!
続きをしようかァ!」
そう言って、タックルの速度でまた突っ込んできて、大剣を振り下ろしてきた。
それを、ナイフで受け流そうと構える。
「そんなんじゃァ〜、ムダァ!!」
その通りだと感じて、半歩さがった。
ギリギリ僕の顔の前を通って、地面に大剣が衝突した。
ドガァゥゥン!!
地面が割れた。
生じた石飛礫が体にぶつかった。
「グゥッ!!!」
痛かった。顔からも出血して、視界が赤くなってる。
少し吹き飛ばされ、転倒したが、起き上がった。
「アキラ!!」
桜が叫んだ。
「よそ見してんなよ!!やれ!」
「炎撃」
「クウッ!!!」
桜はギリギリのところで避けて、直撃こそ免れたものの、髪が焦げていた。
バァァン!
そこに、チンピラの銃が発射された。
ブゥゥゥン!
が、発射された弾丸が何かにぶつかったのかのように静止し、地面に落ちた。
シルンだ。
「ありがと、シルン!」
桜が礼を言った。
「........戦闘に...集中!.....」
シルンがいつになく、早口だ。
つまり、余裕がないってことだろう。
「いつまでそっち見てんだぁ?俺も構ってくれよぉ!」
そう言って、ごついのが大剣を振り下ろした。
「いやです!!」
かなり余裕を持って避けれた。
羽による急加速をしたのだ。
「いいなぁ〜、そのはねぇ〜。
俺にくれよぉ〜」
「いやです!!触る事も却下します!」
「そんなつれないこと言うなよぉ〜。
ちょっと二回だけ剣でブスってやるだけだからよぉ〜.......オラッ!!」
ごついのが再び剣を叩きつけてきた。
もちろん全力で避けたが。
「僕は痛いの恐怖症なんです!!
だから、もっと丁寧に扱ってください!!
まあ、何を言われようともあげませんがね!!」
当たり前だよ!!
剣でバッサリ羽を落とさせてほしいって言われて、はいどうぞって答えるわけねぇだろ!!
ステ振り知力に振り分けてこい!!
「まあ、そっちの意見なんてはなから聞く気はないがな!!
それに.......あっちはもう片が付いたみてぇだぞ」
そう言われて、桜たちのほうを見ると、ちょうど、シルンに炎が襲いかかるところだった。
「シルンさん!!」
「............ッグ!!...........」
そして、炎を纏ったまま、吹き飛ばされた。
まだ、意識はあるようだ。少し動いている。おそらく、直撃寸前に魔法で防いだのだろう。
11ちゃんズは全滅。気を失っている。ルイは、銃による怪我で、お腹から出血している。早く手当をしないと非常に危険だ。
桜は、壁の近くで苦悶の表情をしている。足に銃が打たれたのであろう傷があり、出血していた。
やばい......やばいよ!!
は、早く手当をしなくちゃ.......早くこいつらを倒さなくちゃ........できるのか?
「さぁあって!
こっちも終わりにしようやぁ!」
そう言って、ごついのが近付いてきた。
地面の振動がいつもよりも大きく聞こえた。
倒す?.........無理だよ......そんなの。
...........怖い 。
怖いよ...........。
何が怖い?
剣で切られること?
奴隷にされて、酷い扱いを受けること?
魔法で丸焦げにされること?
銃で撃たれること?
「アァン?なんだぁ?
戦意喪失中ってかぁ?
はなから、獣人が人間に勝てるわけねぇだろぉ!」
死ぬこと?
大口叩いて、何もできなかったこと?
仲間がこいつらに酷いことされること?それを見ること?
シルンとの約束を守れないこと?
もふもふできなくなること?
「お前、獣人が何年前から奴隷だか知ってるかぁ?
200年だよ!200年!!
ク.......ガハハハハハハ!!
200年も奴隷にされる種族が今更何したって、無駄なんだよぉ!!」
.......................。
..........全部だよ!!
何か温かいものが体の奥から昇ってくる感覚がある。
だから僕は........
それを口から吐き出した。
ギュウウウゥンンッ!!!
そんな音ともに、洞窟内に閃光が走った。
そして、一瞬で収まった。
「...............ん!?眩しい!!
なんですか、これ?」
そして、前を向くと、ごついのの腕が
『焼け落ちていた』
お゛ぉれ゛ぇの腕がァァァァア!!
あ゛んまりだぁぁ!!
次回、腕はどうなっちゃうのか!?
また見てね!