1−14 侵入者
ブックマークしてくれた人、ありがとうございます。
今週は、1日1話ぐらいのペースで投稿します。
ただし、休みの日は、2話以上投稿できるようにします!
14話です!
『不可視の壁』
シルンが使った、この技は魔法である。
魔法........今まであまり触れてきていなかったが、出てきていないわけではない。紙幣の話で、証明魔法とか、この洞窟内の明かりとか.............あと他になにか出てきてたっけ?
とにかく、魔法サマはいろいろな分野で活躍しておられるのだ。
人間は、魔力はあるが、魔法は使えない。
これは、魔法を放つ体の構造をしていないからだ。
魔法を放つには、魔法を放つ構造、つまり、放魔構造を持ったものに、魔力を込める必要がある。
ゆえに、人が魔法を放つには、媒体が必要なのである。従って、杖、魔晶石(内部に放魔構造を持つ石)などを使って、魔法を出している。
混血の人類の中には、放魔構造を持つ者もいる。
一方、獣人は、放魔構造を持っている個体が、少数ながらもいる。
ただし、体の中に持っている魔法は一つ。ごく稀に、二つ以上持っている個体もある。
『体の構造が特定の魔法の媒体の役割をするという』性質から、『固有魔法』と呼ばれている。
固有魔法は、魔獣も持っている。複数持っている個体も少なくない。
固有魔法は、一般の『魔法』とは違って、性能が桁違いである。
獣人が迫害される原因の一つとして、この固有魔法の存在もある。
エルフ、魔人種は、体の魔法を司る器官の性質を変えることによって、複数の魔法を扱う。
ただし、固有魔法を持つものは、極めて少数。
魔法を発動すると、いわゆる『魔法陣』が見える。
ただ、これは、放魔構造から溢れた魔力が、複雑な屈折をすることによって見える『ムダ』であって、必要なものではない。
つまり、この世界で、『魔法陣を書く』などという作業はない。
ただし、魔法陣の研究はされ続けている。
魔法発動の際に、その魔法名を言う必要はない。
ただ、これは長年の議題でもある。
というのも、戦闘の際に、
「ふん!!」「おら!!」「くらえ!!」
とかの掛け声だけで魔法を打ち合うと...........
非常に虚しいことになる。
だから、わざわざ言う癖をつける人も多い。
それに、掛け声を入れると、威力が上がるという研究結果もあるらしい。事実かどうかはわからないらしい。
だが、わざわざ使う技を言葉にすると、相手にこちらの手を教えることになる可能性もある。
格好良さ(威力?)をとるか、隠密性をとるかなのである。
シルンの使った魔法は、固有魔法の一種で、空間操作系だそうだ。
『あるはずのない物質をあるようにする魔法』らしい。
...............よくわからん。
「..........ますたー.........一緒にベッドに......いこ?......」
周りのを鎮圧したところで、シルンからお誘いの言葉がかかった。
だが、
「シルンさん、まだお昼ですよ」
そう。今の時刻は、およそ正午ぐらいである。
11ちゃんズにさらわれたのがおよそ9時。そこから色々あり、今に至る。
睡眠薬でぐっすり寝たため、寝不足にはなっていない。
昼間っから、そういうことをするのはちょっと抵抗があった。
それに、はじめて..........だし........。
「......ムゥ〜う.........夜......逃がさない..........から...............」
「.......はい!ぜひとも!!」
こう答えるよね普通。
カゥワイイ女の子が、上目遣いで、こんなこと言ってきたんだよ!
拒否するわけないじゃん!
よ〜し、夜が楽しみだ!グへへェ〜..........。
そんなことを考えている時、
「お゛ぉ〜い!
本当にこんなところに獣人達がいるのかよ!!」
「うるせ〜なぁ!
『あの人』がいるって言ってんだから、いるに決まってんだろ!」
「そもそも、なんで獣人風情に、人間様の俺たちから出向いてやる必要があんだよォ!!」
「そう怒んなよ。
捕まえたら、命さえあれば良いっていう契約だろぉ?
つまり、遊んでも良いってことだろぉ?」
「まあ、な」
「それに、報酬の金額が相場よりも多い。
これは俺たち『冒険者』にとって悪くねぇ話だろぉ?」
「そうだな。
なら、さっさと済ませて金を使って遊ぶか?
そうと決まれば.........
スゥゥーーー...........
『出て来おぉぉぉぉい!!!!じゅうぅじぃぃぃん!!!』」
「おい!バカ!うるせぇ〜よ!!
気付かれたら、どうすんだよ!」
「ここは一本道だゼェ。
さらに奥には、行き止まりしかねぇ。
今頃恐怖でふるえてるさ!
ダッハッハッハ!!」
「..........これだからバカは。
奇襲で仕留めればいいものを............」
Oh.............。
どうやら、冒険者が来ているらしい。
数は三人で、男らしい。話しているのは二人で、無口なのが一人いる。
獣人に転生したおかげか、耳がよくなっていて、足音まではっきり聞こえたからわかった。
まあ、逆に、大声の時、耳がキーンってなった。こいつら絶対許すまじ!
どういうわけか、ここに獣人がいることを知っていてきているらしいが、態度が気に入らない。
何が人間様だ!
こいつらには、少し灸を据えてやらねばなるまい。
そう思って、後ろを振り向くと............
小さく震えている、11ちゃんズがいた。
「へっ!?
どうしたんですか!?」
いつも強気なルイ(結局、名前を承諾してくれた)でさえも、暗い表情をしていた。
「マスター『は』知らにゃいと思うが、
『この世界』の冒険者は、だいたい強いにゃ。
に加えて、『あの人』差し向けたとなれば、今こっちに来てるのは、A級以上の冒険者クラスにゃ。
一人でも、うちらが束になってかかっても勝てにゃいのに、
複数人いるとなれば、勝利は絶望的にゃ」
ー時間を少し遡るー
僕は、シルンと11ちゃんズに対して、自分が転生者であると教えた。
ついでに、もともとは、人間であったことも。
その時、ものすごく驚かれ..............なかった。
「もともとが人間だろうが、今のマスターは、うちらを大切にしてくれるにゃ。
これからもそうだって、うちは信じるにゃ。
うちは、マスターが好きにゃ。大好きにゃ。
.........好きなやつを信じるのは、乙女のたしなみにゃ」
「マスターを信じるか?
問答無用だ!」
「桜の仲間なら、信じる。
..............それと.........私も好きだ(小声)」
「主を信じるのは当然です!」
「今が、獣人なら問題ねぇだろ?私も信じるゾ」
「..........信じてる」
「................」
少し...........いや、かなりグッときた。
嬉しい。素直にそう思った。
こんなに、人から思われることが嬉しいとは思わなかった。それに、そんな機会もなかった。
正直、ここまで慕われる理由がわからない(この時、アキラは、『獣人男王子説』を知らなかった。が、それとは別に、11ちゃんズは、アキラをそれぞれ別の見方で好意を持っていた)が、
これからは、もっと大切にしよう、と思った。
あと、頻繁にもふもふしてやろうと思った。
いや、別にしたいからするわけではないですよ!ただ単なるスキンシップとして、モフるだけですよ!信じて!
まあ、こういう事情で、みんなは僕の状況を理解してくれている。
ー時間を元に戻すー
「えっ!........いや、でも........。
ほら!王である僕がいますし、どうにかなりませんか?」
「王は、メンバーが多くて、本領を発揮するにゃ。
それに、どちらにしても、武器の性能が違いすぎるにゃ。
............マスターには悪いけど、今回は、
..............箱の中にでも『隠れて』いてほしいにゃ」
「.........えっ!?
ど、どうしてですか?
みんなが戦っているのに、僕だけ隠れているなんてできませんよ!!」
「...........マスター...........。
もし、『王』であるマスターが死ねば、ここにいる............
『全員』が死ぬにゃ」
「........!!!」
そう、『王』が死ぬと、その『メンバー』は全員死ぬ。
これがこの世界のルールだ。
アキラは、この時、まだ、
『王』の責任を甘く見ていた。
おぉ!バトル回かぁ!?
その真相は、次回!!
お楽しみに!!