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1ー1  事故ですね、わかります。

もふもふしゃんです。よろしくです。


最初は、説明回的な感じになっていますが、

徐々に、徐々に珍妙な話になっていきますので、

読み進めてくれたら、嬉しいです。


では、どうぞ!

「たぶん大丈夫だと思うけど、念のため病院に行ったほうがいいと思うぞ〜」

 

 11月となり、少し肌寒くなってきた日の夕方、そう声をかけている少年の名前は、「白神輝(しらかみあきら)」。


 緑あふれる地元の獣医学部に通う、18歳の大学生である。

 やっと大学生活に慣れ始め、学園生活をエンジョイしている最中だ。


 輝に体調を心配されているのは、一匹の犬で名前は「桜」。

 金色に近い茶色の毛色を持つ、ゴールデンレトリバーである。

 飼い主で近所に住んでる幼なじみの「佐藤麻里(さとうまり)」が、「体調がすぐれないようだから見て欲しい」と言って家まで訪ねてきたのだ。

 もちろん、18歳で大学に通い始めたばかりの輝は、獣医の免許を持っているわけではない。

 しかし、やはり獣医の卵というだけで近所の人たちからは頼りにされ、度々動物に関する知識を聞かれるのだ。

 

「アキちゃん、ありがとね〜。今度なんか奢るよ〜」


「......」


 輝は桜のことを、じっと見つめたまま何も言わない。


「アキちゃん......やっぱり桜のどこか悪いの?」


「きれいだ......」


「えっ!?」


「あっ!いや......ごめん。何でもない。大丈夫だよ。」


「あ......そう。ならいいんだけどさ......」


 突然の輝の言葉に戸惑い、顔を赤くする麻里。

 この時、麻里は幼なじみで素直で優しい性格を持つ輝に、少なからず好意を持っていた。


(本当にそう言ってくれればいいのにな〜)


 この時、輝は


(あっぶね〜。ついつい言葉に出ちまった。


 落ち着け、俺)


 このように内心焦っていた。

 佐藤は確かに容姿が整っていて、同じ高校に通ってる時に、告白されている現場を目撃してしまったこともある。

 だから、ここで輝が「佐藤」に「きれいだ」と言うならば問題ない。

 問題なのは、輝は「桜」対して「きれいだ」と言っていることである。


 

 


*******************





 高校時代、輝は犬、猫などの動物をなでなでするのが大好きなだけの普通の高校生であった。

 まあ、強いて言うなら、将来の目標が見つからず、少々うつ気味であった。


 そんなある日、輝は友達から近頃流行っているという、一つのゲームを借りた。

 いわゆる、ギャルゲーである。


 その中で、ヒロイン人気ランキング最下位という、暗い立ち位置にいるヒロインがいた。

 そんな彼女に、輝はぞっこんだった。

 そして、獣人だった。


 獣人だったから好きになったのか、好きだったのが獣人なのかは、本人もわかっていない。

 でも、輝は、その()が好きだった。

 どのぐらい好きかというと、逆立ちしながらパソコンを操作し、その娘のエンディングまでプレイできるくらいだ。

 まさしく、愛..........本人はそう思っている。


 しかし、ゲームにはエンディングがある。

 エンディングを迎えるたびに、アキラは心に穴が開いたような気持ちになった......。


 輝は、名残惜(なごりお)しんだ。

 どうして、終わっちゃうの?どうして、彼女は画面で、微笑んだまま動かないの?どうして、毎回同じ会話をするの?

 どうして......どうして........どうして............. 。


 輝には、その答えが全て分かっていた。

 だから余計に虚しくなった。



 でも..........それでも!

 それならば、せめて.........

 

 もっと『獣人の彼女』の声を聞いてみたい!


 こう思って、そのゲーム会社の公式サイトを調べてみたら..........




 会社は、潰れて無くなっていた...................。

 







 それから、2年とちょっと後........





 尻尾がなくても、人間はバランス感覚を保つことができ、感情を外に出すこともできる。

 ケモミミがなくとも、生活するのに不自由のない生活をする聴力が人間にはある。


 それはつまり、それらが不要ということか?

 否!

 そこには新たな可能性がある!


 人間に部位が増えることによって、新たな人の見方が増えるかもしれない。

 ケモミミによって、今までよりももっと広範囲に対して、意識を向けることが可能になるかもしれない。

 尻尾によるバランス感覚の拡張で、新たな動き、技能が見つかるかもしれない。


 これからの人間にとって必要なのは、必要ではないもの(耳、尻尾)に対し、新たな可能性を見出す行為である!



 輝はこんな論文を作っていた.............。





 輝が獣医学部に進学したのにも、獣人が関わっている。

 とある目標を達成するためだ。


 その目的とは、



『獣人を創る。現実(リアル)で!』


 である。

 そう、輝の好意の対象は、獣人全般になっていたのである。

 そこらへんの紆余曲折に関しての説明はひとまず割愛させてもらう。


 その頃の輝は、獣医学専門の教員になろうと考えていた。

 本人曰く、


『合法的にペットをモフれて、研究もできる、理想の職』


 らしい.........。


 すでに、獣人生成に関わるプロジェクトも、幾つか考えてある。

 そのために必要な知識を集めて研究を行っていたため、輝の成績は優秀であった。

 教師からは、優秀な子、真面目な子、努力家などの評判を得ていたが、本人は、そんなこと微塵も気にしていなかった......。



 


 そして現在.........





「あぁ〜、もふもふしてぇ〜」


 これが、絶賛欲求不満中の輝の口癖でもある。......とても残念なことになっている。




*******************





 そんな輝に桜はどう映ったかというと.......


(太っていなく、痩せすぎているわけでもなく、引き締まった筋肉がついていて全体的にスラッとした印象を受ける。歳はそこまで幼くもなく、人に換算すると、18とか、20歳って所だろう。何より目を引くのは、そのきれいに整った毛皮だ。正直ここまできれいなものは、ライトなノベルの中でも見たことない...........。


 こんなにきれいなのに.........


 こんなにきれいなのにぃ..........





 どうして獣人じゃないんだよ!!!)




 失礼というか、残念というか......よく分からない感情に支配されていた。


(よぉし、せめてその遺伝子のサンプルを手に入れよう!!

 それさえあれば、クローンやらなんやらで、最高の毛質を持つ獣人が作れるかもしれない!!

 ここは怖がれせないように、『やさぁしく』遺伝子サンプルを頂戴しよう!)


 輝はこんなことを考えながら口を開いた。


「桜さまぁ〜、ちょ〜っとその毛とかぁ〜、皮膚とかをぉ〜....僕に.....ウッヒッヒッヒッヒ!!


 ........くれませんかぁ〜?


 もちろんつばでも構わないんで......ぜひぃ、僕に吐きかけてください!!」


 半端ない笑顔(キモ顔)で輝は桜に近づき始めた。

 輝は桜の獣人化した姿を妄想し、完全に理性を失っていた。

『やさぁしく』するとは一体........?



「アキちゃん!?』


 麻里は驚いていた。

 好意を持っていた青年の表情が、オーク顔負けの醜悪なものになったら驚くのは当然だろう。


「ワン!」


 桜は逃げ出した。

 当たり前だ。

 本能的に嫌悪感を感じさせるものからは誰だって逃げ出したくなるだろう。

 今の輝の顔はウン()とか、G(ゴキ)とかと同じ次元のキモさなのだ。


「待てやゴラァー!!

 毛ぇよこセェェイ!」


 輝は桜を追いかけた。


 もちろん桜は足を止めない。

 桜からすれば、検査の時には優しかったお兄さんが、急に何か()がオカシクなって襲い掛かってきて、今まさに、怒鳴って追いかけてきているのである。

 ..............まさに恐怖。まさに狂人。


「ア、アキちゃん..........待って!」


 麻里が叫んでいたが、輝は気にせず桜を追いかけた。

 美少女に『待て』と言われたらどうする?

 男なら、すべからく待つだろう。

 だが、輝の中では、桜>>麻里なのである。

 悲しむなかれ、麻里よ........。おかしいのは輝だ。





 桜は、麻里の家の方角へ逃げて行った。


(さすがに、マズイなぁ........)


 輝は内心かなり焦っていた。そして、少し冷静になっていた。

 現在、桜を見失っているのだ。

 ここが田舎とはいえ、車は走っている。

 犬が人間のルールを完璧に把握しているとは思えない。

 つまり、事故の可能性だって十分にあるのだ。


(.........いた!)


 輝は桜を発見した。

 桜は信号機の前で車の行き来するのを眺めていた。


 輝は気付かれないようゆっくり近づいたが......


 あと一歩のところで気付かれてしまう。


「ワン!」

「スト〜ップ!」


 桜が赤信号になっている道路に飛び出した......。

 輝も桜を助けようとして、飛び出した。いや、いつの間にか飛び出ていた。勢いがつきすぎていたのだ。


 そして、輝たちの目前にはトラックが走ってきていた。


「あっ!!」


 ガシャーン!


 衝突した音が響いた..........。




 最後に見えたのは、



 自分と一緒にはねられて、赤く染まった桜..........。



 最後に思ったのは、



(ッツ!!!いてぇ..........なぁ..............。

 でも.........だんだん痛く無くなってきたなぁ〜...........。

 死ぬのかな、俺?

 .........にしても、ベタな展開だなぁ〜......。

 .....異世界にでも飛ばされるかもな..........な〜んてな......。


 あと...........桜...ごめん........


 償いは、あとで.........必ず.......する......からさ.........待っ...て.........て.........)


 




 そして、二つの命が散った。














「........お..........きろ。いつ........も...........ラ!」

 

 なんだか女の子の声が聞こえる。

 そして、少ししてから輝の意識は覚醒し、声をはっきりと聞き取った。


「おい、起きろ。いつまで寝てるつもりだ?アキラ!」


 聞いたことのない声で起こされている。

 いろいろ疑問に思うこともあったが、顔を上げると、


 何もない真っ暗な空間に





 「理想」が立っていた。



 

「もふもふ......しても......いいですか?」


 とっさにアキラは尋ねていた。



 そこにいたのは、白い耳、尻尾を持つ、夢にまで見た獣人だったのだ。

 

 

 




 

次回、本格的な説明回(予定)


できるだけ、手短に終わらせます(予定)


次話も見ていただけると、作者が喜びで飛び跳ねます。

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