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一章 ~幕間~


「っつクソッ!!あのやろぅぜってぇ見つけ出してブッ、殺してヤるッ!!」

「タカシクン大丈ぶぅー?膝カクーンってなってんジャン?大丈夫ゥー?」


 茶髪にピアスをしている男が金髪に剃り込みを入れている男を抱えながら狭い路地を歩いていた。

 よくよく見るとふたりとも服装が風紀と言う意味とは別に乱れていた。


 先程透哉と喧嘩した二人組である。


「アイツ!!ゼッ、てぇ許さねぇッ!!ゼッ、てぇ探し出して後悔させてヤンぜ!!」


 抱えられてる金髪の方、タカシは顔に二発もイイものを貰ったせいか相当頭に来ているようであった。言動は頭に来ているわけではなく元からだが。


「で、でもあいつフツーゥに喧嘩慣れしてたし、フツーゥに強かったしヤバーくない?」


 やけに間延びした喋り方をする茶髪、アツシのほうは先程の相手の喧嘩ぶりを見て正直な感想を言った。タカシに比べれば割りかし冷静なアツシだった。


「……ァア!?おいアツシ!おめビビってンの?おめぇイモってンのか!?アァ!?」

「いや、そーじゃなぁーいけどさァ。なんかあいつー変だったしーさァ?」


 長年連れ添ったタカシに凄まれてたじたじになるアツシだが、気になることを言い出した。


「最後おれーが角でボコそうとしーたらぁさァ、途中でなんかに当ってェー外れたんだーよね。あれぜってぇおかしぃーって」

「はぁ?おめぇ何いってンだ!?適当言うなやァ!?」


 いきなり変なことを言い出したアツシを見てコイツ言い逃れしようとしてんじゃねぇかと思い始めた時。二人の目の前にいきなり、音もなく人が立っていた。


「うぉおわッ!?」


 驚いたアツシは抱えていたタカシと一緒に後ろに倒れ、尻もちを付いてしまう。

 痛みに耐えながらよくよく見てみると、現れた人はただの男だった。

 年頃は30代か40前半だろうか?くたびれたワイシャツに咥えタバコしている。


 この二人は知らなかっただろうが、昨日透哉と沙希が出会った街角のエセ占い師その人であった。


「オィ!あぶねェだろ!いきなり出てくるンじゃねぇよオッサン!!」

「驚いーて転んじまったぁーじゃねぇか」


 さっきの喧嘩の事もありムシャクシャして占い師に食って掛かる二人。

 それを見る当の本人は昨日透哉達と会った時のような眠たげな目とは別に、どこか暗く冷たい、濁った目をしていた。

 そして軽口を叩いていたその口から、重さをも感じる程の声を出した。


「――なぁ?……さっき何か、゛変なもの゛を見なかったか?」


 二人の不良はその声を聞いた瞬間、本能的に体が震えた。


 タカシとアツシは長さで言えば割りと長い間グレていた。イジメもやる喧嘩もやる、犯罪まがいの事もやってきた。危ない道もそこそこ通ってきていた。不良としてある程度のプライドが、度胸があったのである、が。

 その二人が何の変哲もないただの男の声を聞いただけで、瞬間的に恐怖したのである。


「…………ぁ」

「………………え……」


 久しく体感していなかった原始的な感情を、なぜ眼の前のこの男に感じているのか。恐怖と理解できない現象がないまぜになって、指が、喉が、体が、凍ったかのように動きを止めてしまった。男は座り込んでしまった二人の前で中腰になりアツシの肩に手を置いた。


「うぁ、あ、ああぁ?あああぁ?」


 アツシはただ手を置かれただけなのに胃液が逆流しそうになるほど吐き気を感じた。頭の中に腕を突っ込んでぐちゃぐちゃにかき混ぜられてる様な錯覚に陥る。


「アツシ?おい!アツシッ!?」


 その様子を見て隣にいたタカシは声を掛けることしか出来なかった。

 男はジッとその様子を眺めている。


「……分からないか」


 何に対してなのか?この行為の意味?現状?この男の正体?もはや頭が何を考えてるか、それすらも分からなくなってしまっていた。

 二人に出来ることは、ただ子供の様に怯えて、ただ嵐が過ぎ去ってくれと願うだけ。


 その様をみた占い師は――。


「…………分かんないならしょうがねぇな?きーつけろよー」


 今までの威圧感が嘘だったかのように軽い言葉を二人に掛け肩から手を離し、背中を向けて去っていった。

 後に残されたのは狐につままれたような顔をした二人の不良だけである。


 今のはなんだったのか、起きながら夢を見ていたのか?

 顔を見合わせた二人はしばらくその場から動けないのであった。

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