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死妃の娘  作者: はかはか
第二章 モアミ
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モアミ その1

 トラ=イハイム第二区。


 白皇宮から邸宅街を挟んだ向かい側に監獄塔がある。

 重犯罪者や思想犯、政治犯用の監獄で厳重に警備されている。


 三方を切り立った崖に囲まれた堅固な石造建築で、周囲を塀で囲い、監視塔を四ヶ所に立てている。唯一の正面入り口には深い堀を巡らせている為、脱走を試みる者は、塀を越えた上、百メタルの崖に挑むか、正面の堀に飛び込むしか無い。


 監獄は、五十メタルの高さがある中央塔を中心に西棟と東棟のふたつの建物が並んだ造りになっている。中央塔には、凶悪犯罪や大逆罪のより重い刑罰の罪人が収監されている。


 この監獄では、厳しい尋問と拷問が日々繰り返され、夜な夜な風に漂う死刑囚の嘆きや無罪を叫ぶ囚人の呪詛の声は、耳にする者の心をけがし、身をむしばむと言われ、看守や警備員以外に監獄塔に近寄る者の姿は滅多に無い。


 まだ空に闇が広がっていた。

 シロリオは、捕まえた少女をこの監獄塔に引き連れて来た。

 少女は、荷車の上で物々しく手首足首を鎖で縛られ、数人の警備兵に取り囲まれている。


 少女を引き取る時には、ひと騒ぎが起きた。

 本来なら、伯爵殺害の容疑者としてシェザールの預かりになる筈だが、森の民側が身柄の引き渡しを拒否したのだ。

 あくまで森の民は、シロリオに協力した立場であり、少女をシェザールに渡すのが筋だと話しても聞く耳を持たず、最終的にフォントーレスの了承を得る事でどうにか決着を見たのである。


 この一件で、シロリオは死妃の娘に対する森の民の異常な感情に触れた気がした。

 少女を見る森の民達の目は、まるで自分達が被害を受けたかのように怒りと憎しみの色に塗り潰されており、機会があれば命を奪いかねない殺気に満ちていた。

 それは、フォンバーリも例外で無く、仲間の意見を抑え切れずフォントーレスに使いを送る時も森の民の手で処分をするという指示を欲しているかのようだった。


 シロリオは、そういう森の民の手前、まずは少女を重要犯罪人用の地下独房に入れて、シェザールも厳重に隔離する姿勢を見せる事にした。

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