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死妃の娘  作者: はかはか
第一章 知られずの四人
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知られずの四人 その9

 食事の後、スーシェルとモアミは山菜を採りに再び山に向かった。勿論、スケープも一緒だ。


 村が近くにあるが、ほとんど自給自足の生活をしている為、山の恵みが四人の生活の支えになっている。


 只、闇雲に何でも取って良い訳では無い。山は村の共有財産である為、その利用には村の許可が必要になる。

 メル達は、その山の見回りも受け持っているという事で、ある程度自由に野草の採集や狩りをさせてもらっている。


 とは言え、実際に肉や野菜を食べるのはメルだけ。スーシェル達三人は羊の血を飲むだけの為、多くの量を必要としない。


「さっきの話、あれでいいのかな?」

 メルが朝食の後片付けをしている横でユイナが呟いた。


「さっきの話って、スーちゃんの?」


「うん。ひょっとしたら、スーねえも相手の人を気になっていたかもしれない」

 スーシェルは、四人が置かれている状況を見て恋愛を諦めているのかもしれない。

 もし、そうだとしたら、それでいいのか……。

「スーねえは、私達の事を考えて、ああ言ってくれているのかもしれないんじゃないかな?」


 ユイナは、スーシェルとモアミの前では弱音を吐く事は無い。自分がしっかりしていないとふたりが不安がってしまうのではないかと感じている。

 メルもそんなユイナの気持ちが分かっている為、ユイナとふたりだけの時は出来るだけ聞き役になる事にしている。

「そうねえ。自分の我が儘でこの生活が変わってしまうのを避けたのかもしれないわね」

 スーシェルの性格なら有り得る。

「今度、スーちゃんにそれとなく聞いてみるわね。あなた達の前では言い辛い事もあるでしょうから」


「でも、村長には断りを言いに行くんでしょ?」


「ええ、後で村に行って来るわ。スーちゃんには、今夜話をするから、もし、スーちゃんにその気があるのなら、明日にでも謝りに行けばいいわ。向こうも一日や二日で新しい相手が見付かるものでも無いでしょう」


「ま、呆れた」


 メルは、結構大雑把な性格をしている。

 若くしてスーシェルの乳母になって以来、長年の逃亡生活だ。メル自身、対人関係が得意な訳では無い。

 ユイナもメルの代わりをするとは言え、現状、他人との接触を避けている生活では、社会の常識や外の世界の情報が乏しくて、自分の判断が正しいのか自信が無い事が往々にしてある。


「村長には、失礼の無いようにね。この村から追い出されないように」

 ユイナは、冗談っぽくメルにひと言注意して、家の外に出て行った。

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