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死妃の娘  作者: はかはか
第一部 トラ=イハイム
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【覚え書き】

『それ』が足元を蠢いているとは誰も思わなかった。


人々は、自分の生活に手一杯で他所を振り向く余裕さえ無かった。


自分を守り、家族を守る事で他を考える事が出来無かった。


自分の生活さえ良ければ他人の事は後回しで良い。


本当は、自分も他人に優しいと思っている。


しかし、まずは自分の生活を優先したい。


だが、ならば、どうなったら他人に目を振り向く事が出来るのか?


どのくらい富を蓄えれば満足するのか。


その間も、危険は身に迫っているというのに。


本当に自分や自分の家族を守りたいのなら、今、一度立ち止まって周囲を見回す事が必要なのに。


この間に、最悪の事が進んでいるのに。


後悔は、永遠に塗り替える事が出来無いというのに。

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