6.ラムターを多数目撃
「RMTやってるプレイヤーってすごく多いんですよ。みんなが考えているよりもずっと居ます。
フレンドが50人いたら確実に1人はラムターだと思ったほうがいいですね。」
50人に1人、つまり2%のプレイヤーがRMT経験者だとはとても信じられない。
その数字の根拠を小山さんに尋ねた。
「早い話がラムターを多数目撃してしてしまったんですよ。」
小山さんが当時使っていたRMT業者は取引場所が●サーバーの●駅と決まっていて、
サイトの取引金額記入ページにはいつもその場所が記されていた。
ということは、自分以外の利用者もそこで受け渡しを行っているはずで、ある日暇を持て余した小山さんはサブキャラでログインし、平日の夜にRMTの取引場所へ張り込みを行うことにした。
するとどうだろう、駅員の前に長時間立ち止まり続けるキャラクターがちらほらいるではないか。すぐに電車に乗ればそれほど不審には感じないのだろうが、駅の構内でずっと人の動きを追っていると明らかに不審だ。自分が取引しているときにはばれないと思っていたけど、長時間観察するとバレバレだった。
そして小山さんもお世話になっている業者のゴールド運び屋が15分、または30分間隔で電車から現れて、駅員前の不審なキャラに1~2分間横付けして電車に消えて行った。RMT取り引きの現場である。
「2時間ほど見ていましたが、確実に取り引きをしている人間が4人、不確定を含めると6~8人いましたね。不確定なのは運び屋が1度の下車で2人以上と取引しているかもしれないからです。怪しい動きの奴は6~8人いました。」
あっけにとられてしまった。利用者の最も多い夜の時間帯ということを差し引いても、にわかには信じられない数字だ。しかし同じ取引を何度もしている経験者の小山さんの言うことなのだから、その信ぴょう性は高いといわざるをえない。
「自分も最初はびっくりしましたね、ラムターがこんなに多いなんて思いませんでしたよ。ドラクエ10を取り扱っているRMT業者はヤフオクなんかを含めると50社以上あるんじゃないかな?それにラムターは毎日買ってるわけじゃないんです。けっこう買ってるはずの私でもせいぜい月に1~3回かな。月1頻度の客が1日20~30人いるとすると、私が利用している業者だけでも1000人近くの利用者がいるはずなんですよね。」
話を聞きながら私はついついスマホの電卓アプリを立ち上げた。
RMT業者は大小含めて50ほどあるという。小山さんの利用している業者は最大手の部類らしく、そこを1000人としてしても全体の推定利用者は約1万人という数字がはじき出される。
この数字が本当なら、たしかにフレンドの中に1人や2人ラムターが居てもおかしくない。
それほどまでにラムターは多かったのか。
この件についてさらに小山さん話を聞いてみたのだが。
「素晴らしいことだと思いますよ!安心するじゃないですか。これだけラムターがいれば運営の処分なんて追いつかない、それに買い手側はほとんど処罰を受けないでしょ?赤信号、みんなで渡れば怖くないです。
買い手で処罰されるやつはチームやフレンドにゲーム内でRMT自慢した頭の足りない連中だと決めつけてましたね。だから自分は処罰されない自信がありました。」
小山さんはどこまでいっても小山さんだった。
「そうそう、張り込みしているときなんですが、RMT取り引き終わって駅から出ようとするラムターの近くで『やったー!』とか『さっきはお楽しみでしたね』とチャットすると、ものすごい速さでルーラで逃げていくんです。楽しかったなあ。」
ちなみに小山さんのようなことをする人が増えたのか不明だが、その大手RMT業者は現金支払い完了後にメールで取引場所をランダムに指定してくるようになり、現在同様のことはできなくなっている。