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13.第二次アカウント停止事件

小山さんはお酒が入る度に饒舌に、そして過激になっていった。

私は支払わなければならないお会計の金額と会話の内容にドキドキしながらも話しに引き込まれていく。

そして、小山さんが2回目のアカウント停止を食らった瞬間にとうとう話題が移った。


「僕が2回目のアカ停を食らったのはつい最近です。日付もしっかり覚えていますよ。

2015年10月28日。この日に何があったか覚えていますか?」

ハイボールを入ったグラスをテーブルに置きながら私に問いかけてきた。

10月28日のドラクエ……「あ。」と私が言うとそれを遮って小山さんが続ける。

「そうですよ、バージョン3,1後期のバージョンアップの日。この日に突然アカウント停止食らったんです!……まあアカ停はいつも突然なんですけど。フフフ。」

と自虐的に笑った。


10月28日。アップデート日に小山さんは有給を取っていた。

11時にメンテナンスが明けると即ログイン。

レベル解放をさっさと済ませ、メタキンの持ち寄りで2職をレベル90のカンストに持って行った。

それからチャンス特技クエストをなんとか済ませると、軽食を食べて一息ついた。

腹ごしらえも済んだので、またメタキンの募集でも行こうかと思いグレン1の東口へルーラで飛び、レベル上げパーティー募集がないか眺めていた。


突然画面が暗くなった。

黒い背景に黄色い文字で何かが書かれている。

その中に「停止」という文字があった気がした。

ろくに文章を読まず、きっとグレンで人が多すぎなので落とされたのだろうとウインドウを消して再びログインしようとしたがプレイできなかった。

画面には昔一度見たことがある「サービスの提供停止」の黄色い文字がおどっていた。


楽しみにしていたアプデの日に何故こんな目に遭わなくちゃいけないのか……何かの間違いであってくれと念じながらメインアカウントの登録時に使ったメールアドレスをチェックすると、画面暗転から30分後に運営からのメールが届いた。


_______________________

お客様

(中略)

このたび弊社調査により、お客様が「ドラゴンクエストⅩ」において以下の規約違反を行っていた事が確認されました。

そのため、お客様の「ドラゴンクエストⅩ」の利用を一時停止し、禁止事項の該当行為によって入手したゲーム内のゴールド・アイテム等を没収したことをお知らせいたします。

(中略)

ご利用停止日:2015/10/28

停止期間:翌0時より起算して216時間

ご利用再開日:2015/11/7 0時以降


_______________________


こうして小山さんは2回目のアカウント停止を受けた。


しかし前回の停止とは比べ物にならないほどの衝撃である。

今度はメインアカウントが処分されてしまったのだから。

ちなみにメインに送金していた運び屋のサブBにも同様のメールが届いており、10日間の停止処分を受けていた。


小山一家をまとめるとこうになる。


メインアカウント:第二次停止事件でに10日間停止処分

サブA:第一次停止事件で10日間停止処分→処分が解けてからキャラ削除。

サブB:第二次停止事件で10日間停止処分


今回は業者と直接取引していたサブBだけではなく、メインアカウントにも処分が下ったことを特筆すべきだろう。

ラムターの処分回避方法として信じられていた、サブでワンクッション置く方法が無意味であると判明した瞬間だった。


このあと小山さんの勢いは増していき、

「10月28日には僕の他にもかなりの人数がBANされているはず!」

「僕はログインと同時にこの日発売された1800円もする馬プリズムをショップで買ったし、

プラチナ会員なんですよ。複数アカウント課金してショップにもお金を落とす、そんな上客を処罰するなんておかしい。」

「28日から僕みたいに10日間、ゲーム内で音沙汰が無かった奴は間違いなくラムター。」

「10日以上音沙汰が無い奴はBANされたと思っていい。売り専門の連中がBANになっているはず。」

「メインアカウントのゴールドは没収されて0Gになっていました。おかしいですよね?この中には僕がちゃんと試練の門などで稼いだゴールドも含まれているのに。」

「復帰してフレンド欄を見たら毎日ログインしていた奴が数人インしてませんでした。こいつらはBAN食らったラムターですね。」

「来月の公式RMT報告調査報告が楽しみ。僕の3000万Gもその数字に入ってますから。」


などなど、酒の勢いでマシンガンのように持論を展開していった。

迷惑だったかというとそんなことは全然なく、今日の取材の総決算のような気持ちになって私も終始笑いながら聴いていた。


小山さんの運営に対する恨みごとがひと段落したところで、店を出ることにした。

時計を見ると、入店から3時間余りが過ぎていた。

大食漢の私と飲兵衛の小山さんのコンビだったのでかなりの額を支払った。

酔い覚ましのために1時間ほど喫茶店に入り、補足の取材をさせてもらって小山さんと別れることになった。


別れ際、


「何時も一人で酒飲みながらドラクエやっていましたが、今日は酒飲みながら人とドラクエの話が出来てよかったです。ありがとうございました。」

そう言ってくれたのがなんだかうれしかった。


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