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手続き

「心配しましたよ、アリス様。朝に出て行ったっきり帰ってこないのですから。てっきり盗賊にでも襲われたのかと。」

「そうですよ。あの、所で護衛の者と馬車はどうされたのですか?」

「それにあの幼女を多数従えた怪しい男は誰ですか?」

「落ち着いてください。順を追って説明しますから。」

「ああ、すみません。つい。」

「これはお恥ずかしいところを。」


怪しい男認定された勇輝は今自分が出ていっても余計にややこしくなるだけだと思い、この場の説明はアリスに任せようと考えた。

余計ややこしい事になるような発言はしないよね。と頭の片隅で思いながら。


「あなた方が考えた通り私はお父様に届け物をした帰りに盗賊に襲われ、捕まり牢の中に入れられておりました。残念ながら護衛の者たちはその時に殺されてしまいました。そして盗賊のアジトにいる所をあちらにいるユウキさんに助けられたのです。彼は身なりは少々変わっていますが、礼儀正しくとても優しい方です。ですので、お礼もしないといけませんし賓客として私の家に来てもらうつもりです。」

「そうですか。ですが街に入れる以上はきちんと手続きをしないといけませんし、その際に犯罪歴などがあった場合は拘束させて頂きますがよろしいですね?」

「ええ。もちろんです。」


仕事はキッチリとすると言ってはいるが、衛兵達の心中では未だに勇輝の事を疑っており、犯罪者であると判明した際には即座に捕縛出来るように準備を怠るつもりはない。と顔に書いてあるのを勇輝は眺めながら、ステータスを見られた時に余計な騒動にならないよう超隠蔽で偽装を施す。


そうしている間にも準備が進んでおり、またアリスに対しての質問も続いている。


「それであの子達はどういう子達なんですか?」

「彼女達も私と一緒に捕まっていてそこをユウキさんに助けられたのです。それでどうも身寄りがないようでして、しばらくの間家で預かろうかと。」

「そうですか。分かりました。それでは今の内に伝令を出しておきましょう。」

「ありがとうございます。」


「それでは入門手続きの準備が整いましたので、こちらに来てください。」

「分かりました。今行きます。」


(こういう時の定番は身分証確認。無ければマジックアイテムかな。物によるけど、嘘発見器みたいの、犯罪歴を調べる物、最悪なのはステータスを調べるのかな。僕はともかく雪羅はどうしよう。人じゃないし。)


考えながら歩いて行くが特にいい案が浮かぶことなく手続きの場へと着いてしまう。

そしてそこにあるのは水晶玉。

衛兵のこの水晶玉に手を置いてくださいという指示の通りに勇輝は手を乗せる。

そうしている間にこっそりと水晶玉の鑑定をする。


ー嘘見抜きまっせ〜!(虚実の玉石)ー


17510年前の勇者が当時所属していた国と共同で開発した嘘を見抜くマジックアイテム。

真実であれば青、嘘なら赤く、嘘と真実が混ざっているなら黄色に光る。

名称に関しては当時の勇者が関西人であり、ノリとボケで付けてしまった。

今ではその名を知る者すら少ない。


(おいおい。ノリで名付けるなよ。……でも、これなら大丈夫かな?)


「こちらのマジックアイテムは虚実の玉石と言いまして嘘を見抜くことが出来、真実なら青、嘘なら赤く光ります。それでは幾つか質問させて頂きます。この質問は身分証を持たない方には全員に行っておりますので、その辺はご了承ください。」

「はい。分かりました。」

(やっぱりそっちの名前か。まあ、あの名前は流石に嫌だよね。)


「先ずは、貴方の名前を教えてください。」

「御神勇輝です。勇輝が名前です。」

「大丈夫そうですね。次に街に入る目的は?」

「宿と仕事を求めて……ですかね。後はアリスさん達を送り届けるためにです。」

「これも大丈夫ですね。では最後に、貴方は償っていない罪はありますか?」

「無い……筈です。盗賊の物とか持ってきたので、それが窃盗にならなければですが。」

「それならば大丈夫ですよ。言い方は悪いですが、盗賊はモンスターと同じ扱いとなっていますので問題無いですよ。それに光も青ですしね。」

「ほっ。そうですか。良かった。」


心の底から安心している勇輝を見て衛兵達は、ただ沢山の幼女を連れていただけで怪しいと判断した少し前の自分達を全力で殴り倒したくなっていた。

しかし、その事に気付かない勇輝は雪羅の心配をしていた。

質問の内容に問題はないと思っていても、人ではないという事がやはり気になっていて、上手く作動するのか心配している。


しかしその勇輝の懸念は杞憂に終わる。

勇輝はまだ知らないが、魔法世界トライザードには人間以外にも獣人、亜人、精霊などの様々な種族がいる。

それ故、嘘見抜きまっせ〜はそれら異種族に対応できるように作られている為、反応しない、誤作動を起こすような問題などは起きようがない。


雪羅も無事に手続きを終え、二人分の街に入る為の通行証を発行してもらう。

この通行証は十日で失効するので身分証明証を十日以内に発行してもらってくださいと説明を受ける。

女の子達は盗賊の被害者という事で保護される為、通行証の代金は必要なかった。

そして街の中に入る勇輝一行は既に用意されていた複数の馬車に乗りカトレイア家へと向かう。


カトレイア家へ向かう馬車の中から勇輝は街の中を眺める。

勇輝にとっての世界は病院の中とそこから見える街並みだけであった為に、建築技術が現代日本からかなり劣っており中世ヨーロッパと表現されるであろう街並みだが、人が行き交い、喧騒に包まれた街が新鮮でその顔を満面の笑みに変えていく。

それを見たアリスは不思議に思いながらも、自身の父が治める街を見て喜んでいることだけはわかる為に自然と微笑みを浮かべる。


そんな光景は馬車がカトレイア家へ着くまで続いた。

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