アジト探索
「それじゃ、質問なんだけど。どうして貴方……「あっ!すみません。まだ名乗っていませんでしたね。私の名前はアリス。アリス・カトレイアです。」」
「えっと、僕は勇輝っていいます。」
「ユウキさん…。」
「はい。それでアリスさん。どうしてアリスさんは盗賊に捕まっていたんですか?あ、勿論喋りたくないというなら無理にとは言いませんが。」
「いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます。私は軍事演習に出ている父に書類を届けに行った帰りに捕まってしまったんです。幸い……と言うべきかは分かりませんが身代金を要求しようとしていたようで、乱暴はされませんでしたし。なにぶん、父は有名人ですから。」
「軍事演習に、有名人?それってどういう事ですか?僕らはこちらに来たばかりなのでよく分からないのですが、お父様はどういう人なんですか?」
「えっと、父は街の領主をしています。それで領民にだけ戦わせる訳にはいかないと言っていて、自ら領軍に混じって訓練を度々しているんです。この周辺では領民思いの領主として結構有名なんですよ。」
そう父を語るアリスは随分と誇らしげであり、父の事を尊敬している事がヒシヒシと伝わってくる。
そう感じた勇輝は一度会ってみたいと言ってみると、寧ろこちらからお願いしたいとの返事を貰った。
その事を聞いた勇輝は自身の称号にある異世界の勇者について調べてもらえないかと考えた。
しかし、自身が勇者であると不特定多数の人に知られるのは問題があると思いその事は心の片隅に留め置き、捕まっている他の子達の様子を伺う事にした。
(僕とアリスさんが話してるのを見たお陰か幾分恐怖も和らいでいるみたいだな。)
捕まっている子達と軽く話してみて勇輝はそう感じた。
「僕はこのアジトに何か使える物がないか調べるんだけど、君達はどうする?」
そう言って勇輝は捕まっている子達に質問してみる。しかし勇輝の本音としては一人の方が気楽だと思っているが、放置される側としては不安になるのではと考えて、この質問をした。
そしてその結果。
全員ついてくる事になった。
◇
捕まっていたのはアリスを含めて13人。
それら全てが勇輝達の後ろをついてきている。
盗賊のアジトを16人という大所帯で移動することが出来るのも葛がすでに制圧しているからであり、そうでなければ既に見つかり囲まれていたであろう。
「そういえば、誰かこのアジトについて知っている人いる?」
そう質問するが、返ってくるのはNOという意味での首振りだった。
「まあ、仕方ないか。お、怪しい小部屋発見。」
質問しつつも勇輝一行は着実に進んでおり、今も新しい部屋を発見した。
そして中を見てみるとそこはどうやら武器庫のようで、一般的な片手剣や槍といった基本的なものから、誰が使うのかどこで仕入れたのかフランキスカという投げ斧まである。因みにフランキスカは5世紀頃から西ヨーロッパでフランク人が使ったものでなんと、フランク人が使ったからフランキスカではなく、フランキスカを使っていたからフランク人なのだ。
まあ、こんな豆知識も勇輝には関係なく変わったデザインの投げ斧だなぐらいにしか考えていないが。
森羅鑑定を使えば転移や召喚に紛れ込んだ地球産の武器というのが分かるが、勇輝にはその特異性を理解できずにスルーされている。
そして取り敢えず宝物庫に目に付いた武器を片っ端から投げ込んでいくととある武器の前で手が止まる。
その武器を一言で表すなら……銃だ。
盗賊達は使い方が分からなかったのか埃を被っていたが、その形状は紛れもなく銃だった。
その武器が気になった勇輝は銃を手に取って森羅鑑定を使う。
ー黒星ー
種類:魔法銃
等級:S
かつて召喚された勇者が趣味で作った魔法銃の内の一丁。
使用者の魔力を消費して魔力の弾丸を撃つことが出来るが、銃自体が古く調整を施さないと使用することができない。
特殊なカートリッジを込めることで属性を持った弾丸を撃つことができる。
「カートリッジ?ってこれか?でも使えないみたいだし……まあ、一応持っていくか。」
そう言って勇輝は魔法銃を宝物庫に入れ、その後も次々と入れていき武器を全て仕舞い終わった勇輝達は再びアジトの探索に戻る。
そうして探索を再開した勇輝達はアジトを隈なく捜索していき、色んなものを宝物庫へと入れていく。
食糧、酒、金銀財宝、魔法道具、ポーション系……etc。
一通りアジトを見て回ったので、一行をアジトを後にする。
そして外に出たことで本当に解放されたことを実感した少女達が嬉しさから涙を流したり、その場に座り込んだりしていた。
その様子を勇輝、雪羅、豪鬼、葛は温かい気持ちで胸を満たしながら微笑ましそうに暫く眺めていた。
フランキスカはケンイチで知り、ノリで出しました。