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脅しと反省

「そ、それで、今日はどういった御用件で?」

「おお、そうであったな。今日主人殿が出会った者にこれまでの戦争についての経緯を聞いたそうでな、その時に何故リリアは教えてくれなかったのかと気にしておったのでな。その不安を解消してやろうと、こうして妾が聞きにきた次第だ。」

「え、知らなかったんですか? 私はてっきりアリスが教えているものとばかり……。」

「私は、リリアか教師の誰かが教えるものとばかり……。」

「くはは……やはりそうであったか。」

「やはりって、そう思ってたんですか?」

「妾はの。だが主人殿はそれでも不安だったようでな。しかし妾の予想通りであったのならば何も問題はないな。では、妾は主人殿を安心させに行くとするかの。」

「はい。ではまた後で。」

「うむ。」


琥珀はリリア達との会話を終わらせると扉の前まで行って……そして歩みを止めて振り返る。


「おっと、そういえば言っておらなんだな。この中に、妾達を排除すれば良い等と甘い事を考える者がおるとは思わぬが、念のために言っておくぞ。妾のこの姿は、あくまでも、主人殿に負担をかけぬ為の仮の姿に過ぎぬ。妾本来の姿は……これじゃ。」


ボフンッ! と、突如大量の煙が琥珀の姿を隠す。

すぐ近くにいたかわいそうな人は煙を吸ってしまいゲッホゴッホと咽せている。

そして煙が晴れる頃には……いや、煙が晴れる前からその姿を現していた。

3mを超える大きな九尾の狐。

その九尾の狐から放たれる神の波動の前に全ての人は首を垂れる。

邪な事を考えていた者も、そうでない者も……そして、さっき咽せていたかわいそうな人も。

今もゴホゴホやってるよ。

でも首を垂れてるよ。

ちょっと苦しそう。


ボフンッ! と、再び煙が発生する。

また近くでゴッホゲホッゴホッうゔぉえっ! って聞こえるよ。

そんな煙が晴れるとさっきまでの可愛らしい幼女がそこにはいた。

しかし、巨大な狐の姿を見た後だとその幼女も化け物のように見えてくるから不思議だ。


「ではの。」


最後にとびっきりの笑顔を見せてから琥珀は部屋を出た。

その笑顔もまた背筋を寒くさせる。

しかし、実を言えば先ほどの姿もまた、本来の姿ではない。

本来の姿はもう少しばかり大きく、そして、本気となれば怪獣大決戦を繰り広げられるくらいのサイズになることも出来る。

この事実を知った時彼等はどう思うのか……それは神のみぞ……え?

神様も知らない?

えーと、その答えは神さえも知らない。



「はれっ……?」

「ゆー君!? どうしたの!?」

「なんか、突然……力が、抜ける……。なに、これ……?」

「誰かからの攻撃!?」


琥珀のほんの僅かな時間の変化。

しかしその僅かな時間でも主人である勇輝にも影響が現れた。

これまで通りであれば勇輝の力では神の領域に足を踏み入れている妖狐を縛る事は出来ず、大した影響は無かったであろう。

だがしかし、名付けを行い魂の繋がりを強めてしまった今は違う。

今も琥珀を縛る事は叶わぬが、それでもその結び付きは強化されてしまっている。

その為、琥珀が変化を行った際に勇輝から魔力の一部が吸い上げられてしまった。

それが突然の脱力の原因だ。

だが、その事は勇輝達には知る由もなく、突然の出来事に警戒することしか出来ない。

その警戒は琥珀が帰ってくるまで続いた。


「今戻ったぞ主人殿……って、どうしたのだ!?」

「あ……琥珀……なんか、急に力が……。」

「何? 力が…………あっ。」

「あっ、て何? 今のあっ、て何?」

「うおぅっ!? それを聞くためだけにユニークスキルを使って接近するでない! というか主人殿の幼馴染みの愛が重すぎて怖いのだが!?」

「そんな事よりも、あって何?」

「ええーい、今説明するから離れぬか! この身体だと能力低くて今のお主に触れると痛いのだぞ!」


葵を押しのける琥珀だが、そのつぶらな瞳にはキラリと光るものが。

どうやら痛いというのは本当のようだ。


葵のユニークスキルは【精霊体】。

よくあるタイプの精霊をその身に宿す事で精霊と同化し精霊と同質の肉体へと変ずるものではなく、スキルを使う事で精霊を必要とせず、その身を精霊そのものへと転ずるというもの。

そして全ての属性へと転ずる事が出来るという破格の内容。

まさかこのような形で見せる事になるとは思いもしなかったが……。

今は雷の精霊になっているのでさっきからずっとバチバチしてる。


「おー、いちち……。」


手をふーふーする琥珀。

その様はとってもかわいい。

涙目だから庇護欲を誘っていてなおかわいい。

だが、その光景は魔王(葵)には通用しない。

その目は早く話せよオラ! って目をしてる。

ヒロインがしていい目じゃない!


「端的に言えば、妾が妖狐の姿になった際に主人殿から魔力が流れ込んだのが原因だ。って、待て待て待て! ここでそのような物放とうとするでない!」


葵は両手を独特な形で構え、腰を落としてか〜め〜って言い出しそうな格好をしている。

両手の中には光が発生しているよ。


「主人殿に対して良からぬことを考えぬよう脅しただけだ! だが、主人殿が妾に名付けをした事で主人殿との繋がりが強まり、結果として妾が変化した際に主人殿から力が流入したのだ……本当にすまぬ……。」


水が高いところから低いところに流れるようにして流れた力。

それは琥珀の意図したものではないが、その事を酷く反省しシュン……。としている琥珀の姿に本当に反省している事が分かり葵は毒気が抜かれてしまったようだ。


その後、勇輝ら力を吸われてふにゃふにゃになっていて使い物にならなかったので自室でのんびりゆっくりする事になった。

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