ロイ君の爆砕双炎刃
しばらく経ち、ようやく我を取り戻したロココ。
その表情はまたやってしまったという羞恥心から赤く染まっている。
それでも白音からは視線を逸らしてはいない。
復活した白音はその視線に怯え勇輝にしがみついているが……。
「えっと、それで5人は冒険者……でいいのかな?」
「はい、一応。」
「一応?」
「僕達、ルフルス上級学園の生徒なんですけど、この前の戦争でまだ休校中なんです。なので、その休みの間にちょっと稼いでおこうって話になって……。あ、もちろん冒険者登録はしてありますよ。ほら。」
そう言ってティムスは自身のギルドカードを見せる。
そのカードにはEランクと書かれているので間違いなく冒険者なのだろう。
そして、彼らの通うルフルス上級学園は王都に2つある上級学園のうちの1つ。
グレイフィア王国においては学園は4種類ある。
1つはティムス達が通う上級学園。
これは12歳から15歳までの男爵以下の下級貴族の子息に商人等の一般市民の子供達が通う。
上級学園の下に下級学園があり、こちらは9歳から12歳までの子を対象にしている。
残り2つはそれぞれ特別下級学園と特別上級学園で、男爵より上の貴族のみが通う事が出来る。
通う年齢は下級、上級と同様である。
元々は下級と上級のみで貴族、平民関係なく通えるようにする予定だったのだが、一部の貴族から猛反発があり、新たに特別上級下級学園を設立する事になった。
その際に、平民共と同じ規模の学び舎など通わせられるかと他2つよりもより大きく、より豪華な学び舎にしろと宣う始末。
当時の王としては貴族平民分け隔てなく共に通って欲しいとは思っていたが、この調子ではひどい差別や迫害が起こってしまう。
それよりはと思い、今の状況になったようだ。
「学校かぁ……。」
「それでお二人はここで何を? 休憩と言ってましたけど。」
「え、ああ、僕達も冒険者なんだよ。……といっても、登録したばかりなんだけどね。」
「そうなんだ?」
「折角登録したのに戦争でしょ? やっと今日初依頼ってわけでね。」
「あー、なるほど。それは災難だったね。」
「でも勇者様が勝ってくれて本当によかったよね。だってラベスタって色んなところに戦争吹っかけてきたし、負けてざまあみろって気分。私達の故郷の近くの川の下流の支配権を取ったのにそこで何もしてなくて気味が悪かったし。」
「そうなの?」
「え、知らない? 結構有名だと思うんだけどなぁ。」
「あー、僕登録する前は病気でね……しばらく外のこと分からなかったんだ。」
「それなら仕方ないか。簡単に説明するね。」
「お願いします。」
ジュノンが言うには、ラベスタ帝国はこれまでに小川の下流や廃坑寸前の鉱山、未開拓の森等の経済的には大した価値のない場所を狙って戦争をふっかけて来ていたそうだ。
その癖何かするでもなく折角取った土地も特に活用することは無かったそうだ。
その為近所に住む人々は気味悪がっていたとの事。
「多分だけど、戦力分析が目的だったんじゃないかな。大して価値がないから例え負けても大したものは取られない。安心して勝てると思えたらすぐに本腰を入れる。……って事じゃないかな。」
「あ、なるほど。そういう事か。」
「多分だけどね。本腰を入れて来て重要度の高い場所も狙われるようになって勇者が召喚された。それほど間違っているとは思えないね。」
「そうね。ユウキ君って言ったよね。君、頭良いんだね。」
褒められて少し照れる勇輝。
しかし、その一方で知らない話もあって驚いてもいた。
自分の推測はそう間違ってはいないと思っている為、どうしてこれまで1度もその事を教えて貰えてくれなかったのかと。
だがそれを目の前の5人に言うわけにもいかないので、勇輝は話題を変える事にしたようだ。
「所で、5人はどんな依頼を受けてるの?」
「え、ああ、僕達が受けてるのは王都周辺の見回りだよ。兵士が何人も死んじゃったからか、警備の手が回らないみたい。それに敗残兵が残ってて盗賊に身を落としてるかもしれないからって、国からの依頼なんだ。」
「へー、そんなの受けれるなんて、5人は凄いんだね。」
「そういうのじゃなくて、人数制限はあるけど、Eランク以上なら誰でも受けれるんだ。それに国からの依頼だから報酬もいいしね。」
「でもスッゲー暇だけどな。」
「何もないのならそれに越した事ないでしょ。」
「でもよー、折角俺の新必殺技がお披露目出来ると思ってたのに、それが出来ないんだから文句くらい別にいいじゃねーか。」
「新必殺技ね。左右から炎の塊が襲う奴じゃないよね?」
「な、何故それを!?」
「前に1人で練習してたの見てたし。」
「あの爆砕双炎刃とか叫んでた奴でしょ? 私も見たよ。」
「あー、僕も見たことあるかも。」
「マジかよ!? うっわはっず!」
穴があったら入りたい。
その言葉がこの世界にもあるかは分からないが、今のロイの心境はまさしくその状態である。
「「うわぁ……。」」
それを見た勇輝と葵は哀れに思い、その思いが口からも溢れてしまっていた。
みんなに内緒で練習していた筈の新必殺技。
しかし既に全員に知られていて凄くいたたまれない雰囲気が漂う。
「勇輝様。お腹すいたしそろそろ帰るの。」
「え、ああ、そうだね。それじゃあ僕達はこれで。」
「うん。あ、今度会えたらその時は一緒に依頼でもどう?」
「あー、考えておきます。」
「あはは……まあ、前向きに検討してくれると嬉しい、かな。」
ロココを見て言った勇輝を見て察したティムス。
なるほど確かに返答が濁るわけだと。
ギルドに戻り無事に依頼を達成した2人と1匹はそのまま王城に帰った。
今日のお昼は何かなと話しながら。




