ぼんやりと
かなり遅れてしまい申し訳ありませんでした。
リアルが忙しかったり、モチベーションが上がらなかったり、次話で祝勝会をやるのでそこに持ってく流れにかなり悩んだりしてたらこんなにかかりました。
本当に申し訳ありません。
「全く主人殿は……これでよいか?」
再びぽふんという音がし、幼女から子狐へと変化する。
それで漸く勇輝は顔を向ける事ができた。
しかしその顔は未だ真っ赤だ。
「う、うん。ありがと。」
「幼子の裸体でこれでは、先が思いやられるのう。主人殿が力をつけ、妾を完全体で召喚出来るようになった暁には、妾を抱いてもらおうと思っておるのだが……」
「うえあえ!? そ、しょんなゃ許褚、稲荷いわゃりぇても!?」
抱いてと言われて動転し、意味の通らない言葉を発する勇輝。
というか、なんで三国志の武将とかが混じってるんだか。
それに、なゃ、とか、わゃ、とかどうやって発音したのかも気になるところだ。
「驚き過ぎであろう……それになにゆえあのようなデブが混じっておるのだ? あやつは戦働きは素晴らしかったがかなりの健啖家で戦時中は食いすぎだとよく曹操に怒られておったぞ。」
実物知ってるんかい!
「まあ、あやつのことはどうでもよい。それで妾の名じゃが、お願いできぬか?」
「そんなこと、急に言われても……」
じーーーーーーーーーーっ、と、子狐は勇輝を見つめている。
その目からは、絶対に名付けてもらうぞ! という意気込みが見て取れる。
そんな目を向けられ続けては勇輝も折れるしかなかった。
「わ、分かったよ。えと、じゃあ……………………………琥珀。琥珀とかどうかな?」
「それはひょっとして、妾の瞳の色から来ておるのかの?」
「安直だった?」
「いや……我が母も、最初に名付ける時に瞳の色から着想を得たと言っておったよ。琥珀か………では、今この時より、妾は琥珀と名乗ろう。これからもよろしく頼むぞ、主人殿。幾久しくという奴じゃな。」
名付けタイムも終わり、まったりとお風呂を楽しんだ勇輝は湯上りでほかほかしながら部屋へと入る。
そこには既にリリア、アリス、葵の3人がいてなにやらキャイキャイと騒いでいる。
女三人寄れば姦しいとはよく言ったもので、部屋に入った直後から何を話しているのか丸わかりになるほどだった。
「だから、私はゆー君と同じ勇者なんだから私が第2夫人でしょ。」
「私だって、伯爵令嬢で母は公爵家出身なんです。王家の血を引く私にだって第2夫人になる資格は十分にありますよ。」
「こんな事なら昨日リリアに譲らなければ良かった。そうすれば既成事実で1番になれたのに……。」
「アオイ様が譲ると言ってくれたんですよ! それに私が王なのですから第1夫人になるのは当然ですよ!」
話している内容は誰が第2夫人になるのかということ。
最初は第2夫人だけだったが、リリアに飛び火して誰が第1夫人かという話へと移行していった。
というか葵さんや。
日本に帰るとか考えないんですか?
「何話してるの……?」
「あ、ゆー君。今誰が第1夫人になるか話してるからもうちょっとだけ待っててね。」
「いや、それよりも前に元の世界に帰るかどうかの方が先じゃないかな……?」
「別にどうでもいいかな、そんなの。だって私のいるところはいつだってゆー君の隣だもん。」
「……えーと、それは……」
結城葵は美少女だ。
艶のある長い黒髪に、大きめの、それでいて下品ではない適度な大きさの胸、引き締まったくびれ、細くはあっても不健康ではない綺麗な脚をした正統派美少女である。
勇輝が体質を気にしてそういう対象として自身を見ていないことに気づいていたが、そんなの関係ないと好意を抱いてくれるような………どれだけ生きられるかわからないけど、こんな子が側にいてくれて幸せだと思ってもらえるような………そんな女の子になろうと努力したが故の美少女だ。
勇輝が体質を改善し健康になった為に少々はっちゃけ、依存度がグレードアップしてはいるが……。
そんな女の子にそう言われて嬉しいと感じる勇輝。
しかし、それとは別に葵の危うさも感じ取った。
好きだから一緒に居たいと言えば聞こえはいいが、実際はただの思考放棄の上での依存だ。
その危うさと嬉しさがないまぜになり、勇輝は返答に困ったのだ。
と、ここで1人、申し訳なさそうに手を挙げて発言の許可を求めた。
「あの、ちょっと、よろしいでしょうか?」
「どうしたのリリア?」
「えと、それなんですけど…………ユウキ様、実は、召喚した勇者は1年間の間、元いた世界に帰すことはできないんです……。今まで黙ってて申し訳ありません!!」
「あ、そうなんだ。」
「あ、あれ? これ結構大事なことだと思うんですけど……、というか、軽くないですか? 私、結構覚悟して言ったんですけど……なんで黙ってたとか言われるかと……」
「え、なんでって言われても……なんでだろう? ……う〜ん。…………あ、そうか。元々帰るかどうか決めかねてたから衝撃を受ける程じゃなかったのかな。それに、帰るのはちょっと……………怖いしね。」
帰るのが怖い。
それが意味するのは、帰ったらまた元の生活に戻るのではという恐怖。
召喚される以前は病院で暮らし、病気にならないように、なっても深刻にならないようにという考えから常に監視され自由な時間というものはなかった。
だが、それに不満があったわけではない。
そうしなければいけないことも分かっていたし、それが当たり前だったので不自由だと思うことはなかった。
しかし、召喚されてからは違う。
走り回る爽快感を、全力で体を動かす快感を知った。
それだけではない。
こっちにいれば、熱にうなされる事も、頭痛に悩まされる事も、抑えの効かない震えも、腹痛も、下痢も、吐き気も、ありとあらゆる病による苦しみを味わう事もない。
もちろん、絶対に病気にならないわけではないし、死ぬような怪我をする事もあるだろう。
しかし、それでも日本にいるよりかは死ぬ可能性は低いだろう。
それが勇輝が怖いと言った恐怖を生み出している。
皮肉な話だ。
化学、医学、薬学が発達している日本にいた頃よりも、魔法という超常的な力があるが為に医学があまり発達しておらず、風邪を引く原因が細菌だと知らないものが多い異世界の方が死ぬ確率が低いというのだから。
ーパンッ!
突如として響いた破裂音。
それを聞いた勇輝達は音の発生源を見る。
そこには手を打った姿勢をしているアリスがいた。
「この話はここまでにしましょう。1年の間帰す事が出来ないのは別にリリアのせいじゃないんでしょう?」
「もちろんです。」
「なら、そのことを気にしても仕方ないですし、それにユウキさんも悩んでいるのですからその1年の間に考えればいいのです。そんなことよりも、今を楽しみましょう。」
「そんなことって…。」
「まだ1年あるのですからそんなことです。だって、今決めても1年後には考えが変わるかもしれないじゃないですか。だったら今考えてもあまり意味がないですし、そのせいでこの後のことを楽しめないのはつまらないですから。」
「この後?」
「はい。祝勝会です。」
勇輝………というよりも琥珀だが、勇輝が一騎打ちに勝ったことにより国の勝利が、ひいては国の存続が決まったのだ。
これまでに様々な国を降してきたラベスタ帝国に勝って、だ。
それによって賠償金や領土割譲など得られるものはたくさんある事は想像に難くない。
そんなめでたい時なのだから祝うのは当然というもの。
早馬によって勝利の報告がもたらされた時点で城内の者達が勝手に祝勝会の準備を進めたのだ。
もっとも、祝いたいと考えていたのはみんな同じだったのでなんの問題もない。
勇輝は風呂に放り込まれていたので知らなかったが。
「そういうわけなので私達もお風呂に入ってきますね。目一杯おめかしするので期待してくださいね。」
「え、あ……うん。」
返事はしたものの、勇輝はあまりよくわかっていなかった。
なにせ、勇輝はお風呂はいってましたから。
どういう経緯で祝勝会になったのか聞いてませんでしたから。
なので、あ、祝勝会するんだ〜とぼんやりと考える程度だった。
しかし、勇輝がぼんやりと考える程度の規模になるわけがない。
はてさて、祝勝会に参加する勇輝がどんなリアクションを取るのやら。
そして、祝勝会が始まる。




