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爆弾投下

また遅くなり申し訳有りません。

でも、途中で止めずに納得のいく終わりに持って行こうという思いはあるので、今後も気楽に待っていていただければな。と、思います。

「隠刀・影太刀!」


勇輝が横薙ぎに霞月を振るうと、そこから一拍遅れて妖刀の黒いオーラが刃となり敵へと襲いかかる。

勇輝の横薙ぎを防いだ将軍だが、続けて迫るオーラの刃に将軍は気付き、慌てて避けるものの対応が僅かに遅れ胸元を斬り裂く。

しかし将軍が回避動作を行っていた為に傷は浅く、鎧によって完全に防がれてしまったが、無理な回避と影太刀の衝撃によって体勢を崩している。

そしてその隙を狙い勇輝は更に追撃する。


「闇刀・氣断ち!」


霞月が放つ黒いオーラが刀身に纏わりつき、勇輝は勢いよく振り下ろす。

当たりどころが悪ければ死に至る筈の一振りを勇輝は躊躇なく行う。

それは勇輝が残虐な人間というわけではなく氣の流れのみを絶ち、意識を刈り取るという技だからだ。


「さ、サンドロック!」


勇輝の攻撃に悪寒を感じた将軍は咄嗟に勇輝の動きを封じようと初級の拘束系の魔法を放つ。

砂が勇輝の足に纏わりつき動きを封じ、その隙に距離を取り体勢を立て直す。

将軍が離れている間に勇輝は砂を凍りつかせ砕いて拘束から抜ける。


距離を取り一息つく………なんて事を勇輝はしない。

狙いは短期決戦なのだから。


「凍りつけ! 氷結陣!」


勇輝が地面を踏みつけるとそこから氷が広がっていき瞬く間に氷のフィールドが生まれた。

雪女の雪羅を憑依させている勇輝は問題ないが、普通の人である将軍は凍りつき滑りやすい地面で戦わねばならなくなった。

これにより将軍の機動力が無くなり、踏ん張ることが出来なくなったことによる防御力の低下、更に踏み込みが出来ないことによる攻撃力の低下も発生する。

これだけ有利な状況を生み出しても勇輝は手を抜かず、トドメの魔法を放つ。


「凍てつき終わる銀世界!」


勇輝は自身を中心とした猛吹雪を発生させた。


雪女は雪を降らすことが出来る。

何を当たり前なと思うかもしれないが、これは凄いことである。

雪を降らすことが出来るということはつまり、天候を操ることが出来るということ。

それだけ規模の大きいこの能力をごく狭い範囲に使用するとどうなるか。

周囲何十キロ、何百キロ、という範囲で吹雪かせることが出来る力を狭い範囲で使えば、当然、その規模も圧縮される。

圧縮された吹雪は視界を白く染め、当たった者を即座に凍えさせる。


雪羅の奥義の一つでもあるこの技を受けた将軍は極度の凍傷に見舞われ、身体や鎧の至る所を凍りつかせていた。

死なないように手加減してなのにだ。

それがこの奥義の凄さを物語っている。


地面を凍らせて地形操作系の魔法を封じて吹雪を凌ぐ術を無くして直撃させたのだから敗北は必然である。

もしも将軍が火魔法の使い手であったのならば結果は変わっていたかもしれない。


即座に救護係が将軍に駆け寄り治療を行う。

それを横目に勇輝は憑依を解除させた。

あの氷結陣と吹雪凍てつく銀世界のコンボは魔力を大量に消費する。

その量、実に800。

勇輝の魔力総量は訓練によって2500まで上がったが、それでも約3分の1もする。

ちなみに転移魔法は1人につき100使う。

その事からも勇輝の魔力の多さと、奥義の凄さが分かる。


勇輝が将軍を破り一騎打ちの戦績は2勝2敗1分けとなり引き分け。

この場合どうするのか。

過去にも似たような事があり、その際に戦争規定に追加されたルールである代表戦を行う事になる。

一騎打ちの翌日にどちらも代表者を選出してサドンデスを行なうというものだ。

代表者が一騎打ちに出てた場合は疲弊していてまともに戦えなかったという事がないようにする為の配慮だ。

もっとも、「こっちは前に戦ってて疲れてる。それで負けるのは当たり前だ。だからこんな戦い無効だ!」などと言い訳されない為でもあるのだが。


そして勇輝達は休息のために王城へと戻った。



「あの、これなんとかならなかったんですか?」


王城へと戻った勇輝は以前使っていた部屋で休んでいた。

その部屋は他国の王族、貴族、それらからの使者などを泊めるとっても広いお部屋。

その部屋のベッドに寝転がりながら疲れた心と体を癒していると、お付きのメイドが夕食の準備ができたというのでそのメイドの案内に従い後をついていくと、とても大きな広間へと出た。

そしてその広間では……………何故か宴会が行われていた。

しかも騒いでいる内容は今日の一騎打ちで引き分けに持ち込めた事。

まだ勝ったわけではないのにこの騒ぎよう。

先の言葉はそんな光景に対する勇輝の心の声だった。


「ユウキ様とアオイ様の実力を見て負けるわけがないと思った貴族の方々の指示なので、それを止めるなんて私どもではとてもてとも。それにもしも明日負ければこのように騒げないという思いもあるようでして………その、それならばいっそと料理長含め多くの使用人が張り切った結果なので、今日のところは我慢していただくことはできませんか? もしも無理というのならばお部屋にお食事をお持ちしますので。」


騒いでる連中は貴族とその私兵、そして国に仕える兵達だ。

もしも明日負ければ、グレイフィア王国はラベスタ帝国の領地として吸収される。

その後は統治のための人員が派遣され王族貴族はお払い箱となり、邪魔な王族や国家運営に携わっていた貴族達、つまりはここにいる者達は殺されるだろう。

リリアは容姿が優れているので皇帝の妾かあるいは奴隷として高値で売られるかもしれないが、どのみち碌な結果ではない。

そう考えると文句が出てこようはずもない。


「そう、ですか。だったら僕はここでいいですよ。それに気持ちよく勝てましたからここに参加しないと暴動が起きるかもしれませんしね。」

「ありがとうございます。」


勇輝は負けたらの部分には触れずここで食べる旨を伝える。

勇輝自身も負けた場合どうなるか分からないのだから。



夕食が宴会となっている事に驚いた勇輝だが、今現在は食事を満喫している。

そもそも勇輝は入院患者という事でこんなパーティーのような立食形式の食事なんてした事無かったし、そもそも入院食は味が薄い…………という事はなくむしろ子供の鋭敏な味覚にとっては濃い物として感じており、ご飯と味噌汁くらいしか食べられないなんて事もあったり、体調を崩してお粥のようなとても味気ないものだったりと食事を楽しんだ事なんてほとんどなかった。

だから、異世界に来て健康になった勇輝はそんな食事ともおさらばしてこの初めての立食パーティーを楽しんでいるのだ。


「お疲れ様です、勇者様。」


「勇者様が凄く強くて、俺、感動しました。」


「勇者様はお強いんですね。出来ればでいいので今度自分とも手合わせしてください。」


「あ、あの、勇者様、その、あ、握手してください。」


いろんな人が声をかけてくれて、女性兵だろう人から握手を求められたりと、本当に楽しんでいるのだ。

そんな中でも、欲望を隠さない人達も当然居る。

勇輝と葵の強さを目の当たりにし、勝利を確信した一部の貴族が今後の為にと繋がりを持とうとしてくる。

うちの妹は要らないかとか、孫を嫁にしないかとか、妾でもいいので是非うちの娘をとかそんな面倒くさくて本人の意思も無視した事を平然と言ってくる。

もちろん、貴族としては別におかしくない行いなのだが、食事を楽しんでいた勇輝にとっては迷惑以外の何物でもない。

その為フラストレーションが少しずつ溜まっていたりした時にこんな言葉が耳に入る。


「アオイ様、是非私と結婚してください。私はこう見えても辺境伯家の跡取り。いつまでも王城住まいというわけにもいかないでしょうし、どうでしょう? なにぶん急な事ですし、すぐにとは言いませんのでまずは一度我が家に来てみてはいかがでしょう?」


その言葉の出処の方を向くと、葵が30前半の茶髪の煌びやかな格好の男性に迫られており、他にも似たような格好をした者が多数おり、葵の周りに集まっていた。


いつもは明るく優しい性格の勇輝だが、フラストレーションが溜まりイライラしていた事もあり、普段ならしないだろうが怒りのままに渦中に飛び込み文句を言おうと口を開く。

しかし、その言葉が出る前に横槍が入る。

否、爆弾が投下される。


「ふざけないでください! 本人の意思も確認しないで何を言っているんですか! アオイ様は、私とリリアと一緒にユウキ様と結婚するんです!」


アリスが割って入り文句を言った。


その言葉にふざけるな! と言おうとした勇輝は開いた口が塞がらなくなり、会場全体に静寂が訪れた。

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