テンプレイベント
勇輝は河童の名前におもうところはあるものの、よく分からない場所に寝間着のままいるのは不味いと思い、現状を打破せんと行動を開始する。
(さっきの脳内アナウンス的な声が言っていたスキルという単語。それにあいつ等が言っていた異世界。この二つから導き出される今取るべき最善の行動、それはこれだ。)
「ステータスオープン」
勇輝がそう呟くと眼前に半透明のウインドウが浮かび上がる。その様子はさながら、ゲームか彼が好んで読んでいた異世界モノの小説のようであった。
「よしっ!思ったとおり。さて、僕のステータスはどんな感じかな?」
ーステータスー
名前:ユウキ・ミカミ
種族:人族
LV:1
体力:32/32
魔力:1986/1986
攻撃:H
耐物:H
魔攻:D
耐魔:G
敏捷:H
スキル
森羅鑑定
超隠蔽
言語網羅
宝物庫
式神使いLV3
魔法適性
全属性
称号
異世界の勇者
妖怪に好かれし者
「魔力以外ステータス低っ!」
彼はまだ知らないがステータスはHから始まりG、F、E、D、C、B、A、AA、AAA、S、SS、SSSとなっており、A以降は+-で更に差分化されている。
そして彼のステータスは先程彼が叫んだ通り魔力以外は最低ランクである。
(いや、悲観するにはまだ早い。魔法適性が全属性ってあるし、魔力も高い…と思う。これなら魔法無双も夢じゃない。)
「そうだよ。折角動けるようになったんだ。もっと自由でいいんだ…ってあれ?そういえば身体の方は治ったんだっけ?ちょっと聞いてみよう。」
そう言って勇輝は手元にある式符から雪女を手に取る。
しかし、使い方が分からなかった。
その為勇輝はとりあえずそれっぽいことを叫ぶ。
『式神召喚、雪羅』
すると目の前の草原に五芒星が浮かび上がりそこからせり出すようにして雪女の雪羅が現れる。
「お呼びでしょうか?勇輝様。」
「ちょっとね。僕の身体の事について聞きたいんだけど…その前に、その畏まった喋り方辞めない?なんかこそばゆいんだけど。」
「そんな恐れ多い。ですが、勇輝様がそう言うなら…えっと、やっぱりムカつくからと言って処罰したりしないですよね?」
「しないしない。寧ろこっちからお願いしてるんだからさ。」
「分かりました。それで勇輝様、聞きたい事って何でしょう?」
「勇輝様は変わらないんだね。」
「私達の主ですし。」
「まあ、いいや。それで聞きたい事なんだけど、僕の身体は大丈夫なの?なんか蝕んだとか言ってたけど。」
「大丈夫ですよ。前の世界は全体的に魔力が少なかったけど、この世界は魔力が満ちてますから。それに勇輝様がこちらの世界に来てから急激に魔力量が増大してますし、式神全員召喚して戦うみたいな無茶をしなければ問題ないですよ。」
「そっか。それなら良かった。それじゃ…」
ーガサッ
「何奴!姿を現せ!」
何者かの気配を感じた雪羅は周囲を見回し警戒しつつ叫ぶ。
すると辺りから汚い格好をした、私は盗賊ですと主張しているような男達が現れる。
その男達は実際に盗賊であり、その数は15人。
そしてこれまたいかにも私が頭ですといった風貌の男が口を開きこう言った。
「おい小僧。随分といい女を連れてるじゃねぇか。金目の物は…無さそうだな。泣いて逃げ出すってんなら見逃してやるが…どうする?」
盗賊はテンプレな台詞を吐くがそれを聞いた勇輝は内心ワクワクしていた。
(テンプレイベント来たー!異世界といえばやっぱりこうでなくっちゃ。)
「勇輝様。丁度いいのでこれ等を使って戦闘訓練をしましょう。先ずは式符を…そうですね、レティアのを胸に付け式神憑依と言ってください。」
「分かった。これをこうして…『式神憑依』」
勇輝がそう言うと彼の身体を中心に光が溢れる。
そしてその光が収まり、勇輝の姿が現れる。
銀色の髪にネコ科動物のような縦長の瞳孔をした紅い瞳と黒髪黒目の日本人姿とは変わっており、服装も少しボロい黒のマントに白のシャツに黒いズボンというザ・ヴァンパイアという姿だ。
「うわっ!なにこれ!すっげ!」
「それでは勇輝様。戦闘訓練を始めますよ。」
「ああ。」