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開戦間近

遅れて申し訳有りません。

風邪ひいたり、試験期間だったりで遅れました。

勇輝達が王城に滞在し始めてから一週間が経った。

それは即ち戦争開始まで後一週間という事でもある。

その為、王都在住の国民は元より、城勤めの者や兵達などに緊張によって強張った顔をした者達が多数となり、異様な雰囲気を漂わせ始めた。

その一方で、リリアーヌ姫王からの呼びかけに応じた各地の貴族や領主とその私設軍、そして民間の志願兵が続々と王都へと集まってきている。


「あ、また来たよ。」

「ゆーちゃん乗り出し過ぎだよ。」


葵が指さした先には豪奢な馬車とそれを守る騎士達が居た。

彼等は領地を持つ貴族とその護衛であり、私設の兵と共に馳せ参じた事を報告する為に王城へと足を運んでいるのだ。

因みにその貴族達の大半が王都内に屋敷を持っており王都にいる間ばそこに滞在し、そうで無い貴族は高級宿や王城側に建てられている宿泊私設で過ごし、志願兵や徴兵された者達もここに収容されている。


「こういうのを見ると本当に戦争があるんだって感じがして、なんかヤダな。」

「それはゆーちゃんも分かってたでしょ。それに僕達はその為に呼ばれたんだから。」

「分かってる。それは分かってるよ。でもやっぱりヤダよ。なんで戦争なんかしてるんだろう。」

「それは……僕にも分からないな。でも、僕達は一騎討ちに出るだけだからそれほど危険は無いはずだよ。」

「そうなんだけど。…………あ、また来た。」


葵の視線の先にはこれまた高そうな馬車が止まっており、どうやら丁度乗っていた人が出てくるところのようだ。

そして出てきたのは金色の髪を持つ三十代半ばと思われる男性、即ちアリスの父親であるドレアス・カトレイアだった。

といっても流石に城からでは城門前にいる人の人相までは見ることができず勇輝は気付かなかったのだが。


「ユウキ様、アオイ様。そろそろ勉強を再開しますよ。」

「「はーい。」」


最初の頃は魔法の基礎を教わっていたが、昨日くらいからは状態異常を誘発及び対処法についてを教わり始めている。

一騎打ちの際に使われれば一気に形勢が逆転する為にこの辺は念入りに教わっている。

そしてそのままお昼になるまで勉強の時間は続いた。



勇輝達は勉強を終えて昼食を食堂で摂っている。

初日では一緒に食べていたリリアだがここ数日は同席していない。

理由としてはいくら母が手伝っているとはいえまだまだ残る政務に軍事関連の陳述、援軍としてやってくる貴族との交流と、なかなかタイミングを合わせることができないからだ。

しかしこの日は仕事がキリのいいところで終わったのととある貴族が駆けつけてくれた事が関係して一緒に食事を摂ることができたのだ。


「久しぶりだな、ユウキ君。」

「お久しぶりです、ドレアスさん。」


そうアリスの父親であるドレアス・カトレイアだ。


「それで、そっちの子はユウキ君の使い魔……式神と言ったかな? その式神なのかね?」

「いえ、この子は……「私はゆー君の幼馴染で婚約者の結城葵です。所でおじ様はどういう人なんですか?」………幼馴染です。」


(なんでそんな紹介するのかなぁ!)


勇輝はそう思わずにはいられなかった。

幼馴染からの爆弾投下に悲壮感あふれる表情をする勇輝だったが、流石にこれ以上ややこしい事にはならないだろうと開き直ろうとした所で第二、第三の爆弾が投下された。


「お父様。その件なんですが、ユウキさんがリリアに婿入りし、私とアオイさんが第二、第三夫人になるというのはどうでしょう?」

「ちょっ! 何言ってんの!?」

「そ、そうです! なんの活躍もしてない勇者じゃまだ釣り合うわけないじゃないですか。」


まだ、という事は即ちいずれそうなるという事である。

馬鹿ではないドレアスはそれが意味する事を理解した結果、このカオスラブフィールドにドレアスが眩暈がするのを感じるのだった。


「あ、アリスだけではなく、姫様まで………。すみません、姫様。どうも気分がすぐれないので、きょ、今日はこれで失礼させてもらいます。」


フラフラとしながら立ち去っていくドレアスを勇輝は見送る事すら出来なかった。

自身に突然降ってわいた姫王との婚姻の可能性に茫然自失していたのだから。


その後、勇輝は昼食をぼーっとしたまま食べ、これまで通り訓練に臨むのだが、姫王リリアとの婚姻の事で頭が一杯となりろくな稽古とならなかった。

過去に一度そういう話になった事があったが、当時は勇者召喚に成功した事で浮かれているだけでいずれ正気になるだろうと勇輝は思っていた。

しかし、そうはならず今日の出来事である。

すでに勇輝の頭はパンク寸前にまで陥っていた。


リリアには元々婚約者いた。

しかし、帝国から宣戦布告を受けた事で事情が変わった。

本来ならば他国の王族を婿に迎えるはずだったが、敗戦濃厚で侵略される国に自国の王族を出すような馬鹿はおらず、婚約関係はあっさりと白紙となった。

正直な所リリアはすぐにでも逃げ出したかった。

けれど、自身はこの国の王位継承権第一位。

王である父亡き今、自分が国を守らなければと逃げ出したくなる心を奮いたたせ、国を護る為に奮闘する。

しかし、どれだけ手を打とうとも侵略によって国土を広げてきた帝国を相手に不安を拭う事ができない。

その為最後に打てる手として勇者召喚を行ったが、目の前には誰もいなかった。

絶望し、それでも藁にもすがる思いで再度勇者召喚を行った所で二人の勇者と出会った。

その時に少々驚きの出来事があったが、胸の内に希望が湧いた。

勇者が二人いればなんとかなるのでは、と。

希望が湧けば未来を夢見るようになる。

国を守った後、自身の隣に勇輝がいる未来を。

それ以降、勇輝をそういう対象として見ないように心掛けたが、それでも胸の中にその想いは消える事はなかった。

その想いが先ほどの言葉をリリアに言わせた。


といっても公式の場ではないとはいえ、戦争間近の一国の王のスキャンダルなど以ての外。

という事でこの件には箝口令が敷かれ、なかった事になった。


そんなこんなでギクシャクしつつも更に一週間の時が過ぎ、遂に戦争が、始まる。

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