魔法
「あれ? どうしたんですか、ユウキ様、アオイ様、アリス?」
「とりあえず城の中を見て回ってその後、魔法の練習でもしようかなと思ってたんだけど、ここに案内されたらたまたまリリアさん達が居たんだよ。」
「そうですか。………随分と吹っ切れた顔をしていますが、何かありましたか?」
「ユウキさんが優しいリリアの事を助けたいって。」
「ちょっ、アリスさん! なんで言うんですか!?」
「いえ、これから家族になるかもしれないのですから、隠し事はないほうがいいと思って。」
「むー。ゆー君は私のなんだから!」
「……だから僕は誰のものでもないってば。」
「ふふっ。そうですか。私達はこの後使用人達の私室を視ていかないといけませんので手伝う事は出来ませんが、魔法の練習、頑張ってくださいね。応援してますから。」
「うぅ、はい。がんばります。」
「二匹見つけたの。」
「ありがとうございます、白音さん。それではユウキ様、アオイ様、アリス。私達はこれで失礼します。」
「良き修練を。」
「頑張るの。」
リリア達は勇輝達に声をかけるとそのまま次の目的地へと向かった。
「それではユウキさん、アオイさん。次に行きましょうか。」
「「はい。」」
城の案内が再開され、小浴場、貴賓室、王族専用の浴場、武器庫、近衛兵の詰所を案内された後、再び訓練場へとやってきた。
「魔法の練習をすると言ってましたけど、ユウキさんは魔法のことをどの程度まで知ってますか?」
「色んな属性がある。いろいろできる。」
「…………………それだけですか?」
「それだけです。」
「………………………。」
魔法の練習をしようと言った張本人の知識量の乏しさにアリスは思わず絶句する。
「それで、よく練習しようと思いましたね。」
アリスが若干呆れながら言うが、知らないから、ちゃんと使えないからこそ練習するのだと勇輝は言い、更に今迄に使ったことのある魔法を告げる。
「そうですか。ユウキさんはもちろん、アオイさんも魔法のことは何も知りませんよね。」
「うん。なんか魔力をみゅーってやってグワァーってやるとなんか出る奴だよね。」
「ゆーちゃん……何そのアバウトな表現。」
「漫画とかだとそうじゃない?」
「そうだけど。」
「えーっと、まあ、かなり大雑把に言えば大体そんな感じ……ですね。」
「通じた!?」
「ゆー君ひどい。」
「あ、ごめん。」
「こほん。それでもう少し詳しく説明するとですね。魔法発動に必要なのが魔力。魔法の威力に影響するのが魔攻です。そして魔法には様々な属性があり、人の適正属性は一生変わらないと言われている一方で頑張ったら覚えた、レベルが上がったら増えてたという話を聞いたことがあります。まあ、要するに増えるかどうかは分からないってことですね。」
「いや、分からないならなんで言うの?」
「こういう事はちゃんと言っておいたほうがいいかと思って。それでですね、魔法を使うにはイメージが重要なんです。魔力を元にイメージで魔法を構成して放つって感じです。そして魔力の扱い方なんですが、これもまた様々な意見がありまして、魔力は勝手に使われる、胸の奥から湧き上がる、全身を巡っているのを使う、全身に粒子として存在しそれを集めて使うといった風にまちまちですし、研究も難航しているそうです。ちなみに私は胸の奥から湧き上がるですね。」
「それってつまり……」
「ええ。人それぞれってことですね。あ、でも一度でも成功すれば後は自然とできるようになりますから。」
「わかりました。とりあえずやってみます。」
「私も。」
一度でも成功すればと言われたので、まずは一回自力で成功させようと勇輝と葵は練習を始める。
〜勇輝の場合〜
そうえいばスキルも魔力を使ってるのに意識しなくても出来るよね。
て事は僕は自然に使われるってことかな?
いや、でもまだそうと決まったわけじゃないし、魔法はレティアに任せてたからなんらかの形で魔力を制御する必要があるってことだよね。
こういう時は瞑想だ。
座禅をして、心を落ち着けて、目を閉じて、呼吸を整えて。
…………………………………!!
胸の奥に何かを感じる。
これが魔力か?
なら、これを使って。
「ダークショット!」
バシュッ!
「出た!」
〜葵の場合〜
とりあえずそれっぽくやってみようかな。
「はぁ!」
全身に力を入れてこう、身体からオーラのような物が出てるイメージで気合いの声を出してみた。
すると身体の中を巡る血のようなものの流れを感じた。
きっとこれだ。
今なら出来るはず。
あの、超有名RPGの魔法が。
「○ラゾーマ!」
ゴオオォォ!
「出来たー!」
〜アリス視点〜
「出た!」
「出来たー!」
嘘。
最初に魔法を発動させるまでには普通は一ヶ月。
早くても七日ははかかるはずなのに。
それをこんな簡単に出来るなんて。
これが、勇者。
※注 アリスは三日で出来ました。
〜本編へ〜
「お二人とも凄いです!! まさかこんなに早く出来るようになるなんて!」
「そんなに凄いの?」
「凄いなんてもんじゃないですよ。普通なら一ヶ月はかかるはずなのにそれをたった一分で出来るようになるなんて!」
「勇者ってのが影響してるのかもね。」
「そうかも。」
「それでこれからどうしましょうか? お二人の魔法適性は素晴らしいのですが、その全てをとなると流石に時間が足りませんから。スキルや近接戦闘のことも考えると尚のことですし。」
「そうだなぁ〜、じゃあ僕は水と〜風で。」
「闇じゃないの?」
「うん。闇はレティアがいるから。」
「そっか。じゃあ、私は火と光で。」
「ところで、さっきのあれ。メ○ゾーマって言った?」
「あ、うん。パッと思いついたから。」
「次からは止めよう。なんか、ス○エニさんに悪いから。」
「じゃあ、ラ○ティーネイルは? か○はめ波は?」
「鳥山明! だからそういうのは止めたほうがいいって。」
「なんで? ここ異世界だよ。著作権無いよ。」
「そうだけど、やっぱりそういうのは良くないよ。」
「わかった。」
ほっ!
どうやら怒られなくてすみそう……じゃなかった。
自身が練習する属性を決めた勇輝と葵は早速練習を始めるのだった。




