お披露目
今日は幼馴染の誕生日。八神はやてと一緒とか羨ましい。
「それで、いつからですか? 戦争。」
「えっ! あ、そうですよね。まずはそれからですよね。えっと、確か十四日後です。一番端の領地が王都から徒歩で十四日で、既に三日目ですから十四日後になります。」
「そうですか。それじゃあ、出来るだけ急いだ方がいいですね。」
「急ぐ……ですか?」
「はい。僕達はまだこっちに来たばかりだから修行とかした方がいいかなと思って。」
「ああ。そういえばそうでしたね。いろいろあって忘れてました。」
「確かに女神様が現われたのは衝撃的でしたよね。」
「ええ。ランドル。そのバカはほっといてすぐに人物鑑定の水晶を持ってきてください。それからジャクソンは自力で脱出しなさい。後、二ヶ月減給です。」
「分かりました。」
「そんな!?」
「勇者様の従者をナンパしたのですから当然の罰です。」
ジャクソンはランドルの献身の甲斐あって何とか腰より上までは解放されることができた。
そしてナンパが原因で減給される。
これまでにも同じようなことがあり、今月も王宮仕えのメイドからの苦情が来て既に減給されており、更に減給すると言われるがこればっかりは自業自得なので仕方ない。
「ランドルさん、行かなくて大丈夫ですよ。僕が鑑定スキル使えますから。」
「そうなんですか。流石は勇者様ですね。」
「何が流石なのか分からないけど、取り敢えず僕のステータスを教えますね。先ず……」
そう言って勇輝は自身のステータスについて説明する。
初めてステータスを見たときに感じた通り、勇輝のステータスはかなり弱く、最弱レベルと言っていいものだった。
その為、リリアーナ達は最初落胆するがスキル式神使いの説明をすると落胆の表情から半信半疑の表情に変化した。
更に追い打ちとばかりに勇輝は実践してみる。
「式神憑依!」
勇輝はレティアの式符を使いこれぞヴァンパイアといった感じの姿に変貌する。
その光景を見た人達は驚きの表情を浮かべる。………葵だけは頬を染めていたが。
そして憑依させた事によってステータスに変化が生じ現在はこのようになっている。
ーステータスー
名前:ユウキ・ミカミ
種族:人間(吸血鬼)
LV:3
体力:596/596
魔力:1912/2012
攻撃:A+
耐物:A
魔攻:A+
耐魔:A
敏捷:A
その変化後のステータスは人族の上位10パーセントの中に入るものだった。
更に勇輝はレティアの憑依を解除して別の式神を憑依させる。
「式神憑依!」
レティアの時と同じように勇輝の身体を光が包み込み、その姿を変化させる。
そして光が収まると服が和風の白い物へと変化しているが、それよりも目を引くのが、真っ白い長髪に白いネコミミ、揺れる白い二尾。その真っ白な様相の中で唯一色が付いているのが宝石のような蒼と金の瞳である。
この金色の瞳は魔眼になっていて魔力や霊体のような姿のない物を見ることが出来るという物。
これらも注目されるべきなのだがみんなはそれらを見ておらず、その視線はある一部に注がれている。
それは男であるはずの勇輝には存在しないはずだった物、胸である。
一同が唖然とするなかこの姿を見て葵は「ゆー君かわいい〜!」と興奮していた。
「ん? みんなどうしたの?」
そう尋ねた勇輝に対してそのみんなは一斉にある一部を指差す。
「何コレーーーー!!!」
指差された所をおもむろに触る勇輝の手に柔らかな感触が伝わり思わず叫んでしまう。
叫んだ声も少し高くなっていた。
『この方がかわいいの。』
「えっ! この声って白音?」
『そう。初めて呼ばれたのが勇輝様と一つになる憑依で嬉しいの。』
「というかこれどういうこと!?」
『その方が可愛いと思ったの。だめだった?』
「だめっていうか、恥ずかしいよ。それになんか落ち着かないし。」
胸を腕で隠しつつモジモジとする勇輝。
この姿を見てランドルが顔を赤らめるがそれには気付かずに元に戻すように催促すると白音が残念そうな声を出しつつ変化を解いた。
胸も無くなり髪も少しだけ短くなった所で、気を取り直して自身のステータスを確認する。
ーステータスー
名前:ユウキ・ミカミ
種族:人間(猫又)
LV:3
体力:478/478
魔力:1812/2012
攻撃:A-
耐物:C
魔攻:B
耐魔:B
敏捷:S+
やっぱり憑依させる式神によって能力に差が出るんだなと勇輝は思った。
と、ここで魔眼が妙な物を捉える。
薄っすらと青く光る糸のような物が見え、それを辿っていくとネズミのような生き物と繋がっていた。
勇輝はそれが気になって捕まえて、リリアーナの方に持っていくと、葵からこんな不本意な言葉を戴く。
「そんなの食べても美味しくないよ。」
失敬なと思わなくもないがそれよりもネズミの事が気になったので、リリアーナにこのネズミから妙な糸のような物が見えたと伝えると、叫ぶようにして言う。
「まさか、使い魔!? って事はここでの事が筒抜けに!?」
「なんだって!? 姫王様、今すぐ捜索隊を編成して城中を探してきます。」
「頼みます。」
「俺は他の護衛騎士に知らせて注意を促してきます。」
「お願いしますね。」
「えっと、どういうことか説明してくれませんか? よく意味がわからなかったのですけど。」
「あ、そうですね。それでユウキ様、この部屋で他にその糸が見える所はありますか?」
そう言われて辺りを見回すが見つけられなかったので素直にそう伝えるとリリアーナは安堵の表情を浮かべる。
「理由は分かりませんがユウキ様が見たという糸は恐らく使い魔と術者とのパスでしょう。そして使い魔というのは情報の収集と伝達を主目的とした契約獣の事です。契約する生物によっては情報のやり取りよりも戦闘を得意とする者もいますが今回のような小動物は情報収集用ですね。そして恐らくその術者はラベスタ帝国に与するものでしょう。」
『私の金色の眼は魔眼なの。だから勇輝様は魔力が見えたの。』
「へぇ〜。そうなんだ。」
「ゆー君。へぇ〜っていくらなんでもその返事はないんじゃない?」
「え? あ、そうじゃなくて、今のは憑依させた式神の声を聞いてたんだよ。それで、この金色の眼が魔眼で魔力が見えるっていうからそれで。」
「えっと、それでは続けますね。」
「あ、はい。」
「お願いします。」
「こほん。ユウキ様達には一騎討ちに出てもらうといいましたが、その為の武器である式神使いのスキルについて相手側に知られてしまったと思っていいでしょう。なので私達はその対策をしないといけなくなりました。確か今は三十分しか憑依できないんですよね。」
「はい。まだ、スキルLVがそんなに高くないので。」
「では、今日はこの辺にしておきましょう。今は他に使い魔がいないのか探している最中ですので、明日ユウキ様に最終確認してもらうとして、それまでは戦争の事は忘れて王城でゆっくりしていて下さい。」
リリアーナがそう言い、みんなを促して玉座の間へと向かうのだった。
猫はオッドアイを持つ個体がそれなりにいる+人には見えないものに反応する。という事から魔眼持ちにしました。
ちなみに性転換は気付いたらやってました。一応できるというだけで話に組み込むかは反応次第です。




